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#05. Error 誤搬送
祖父の代から存在する拠点。
すっかり中身も外観も豹変した。
ここの本性は知られていない。
未だ生き生きと脈打つ当時からの信頼を、国境を越えてまで利用できている。
#06. Please wait 決定
「“クローズされた時はどうなるかと思ったけど、再開してもらえて安心したよ”」
「“そう言って頂けて何より。
歴史が長いから、失くすのは惜しいし”」
本当に分からなさそうなルークに、顎髭の彼は呆れて溜め息をつく。
だがその後、少々面白がって小さく笑った。
「変な奴だな全く。助ける為に決まってる。
だからレスキューもする。
何処へでもって訳にはいかないが…。
大海原の真ん中だ。
何が起きてもおかしくない。
そんな時、救援にすぐ向かえる環境をここで整えておけば、早く命が助かるかもしれないだろう。
助け合いは絆を生むし、笑顔も生む。
それも1つや2つじゃない。
連なり、輪になる。
どうだ最高に幸せだろう!」
話しを聞く最中、彼は口角を上げていき、目が無くなる程細まった。
頬も高く上がると声もより高くなり、話しながら腕もよく動かしている。
みるみる現れる変化に、ルークは無言のまま注目していた。
「ここは、皆が最後まで進める様に、行くべき所へ辿り着ける様にと願って開拓した。
熱いだろ?この場所は好きだ!
例え津波や震災が起きても残させてみせる!」
そして盛大に笑い声を上げた。
その声にターシャが完全に目を開くと、ゆっくり起き上がる。
その時、ルークの格好が目に飛び込んだ。
無地の白いフーディー。
パンツは、黒のデニム生地のオーバーサイズ感が出ている。
足元は、よくあるスポーツメーカのロゴが入った、白のスニーカーだ。
「そんなの起きたら、島は残らない可能性が高い」
ルークの言葉に、またも彼は溜め息を吐く。
「坊主…俺の女将さんみたいな事言うな?
男ならもう少し夢を持て!
研究や数字もいいがな、もっと、本当に目に見えない物について考えてみろ」
そして彼は、上体を起こしてこちらを見るターシャに気付き、奥の部屋に向けて声を放った。
「もう起きたのか?早いな!休めたのか?
おい!嬢ちゃん起きたぞ!」
奥からは先程通過した中年女性が現れる。
奥さんであろうその人は、グラスの水を差し出した。
「何だか大変だったんだって?
一先ず飲みな」
「あの…」
声を出すと、幾分か喉の痛みはマシになっていたが、まだどこか怠い感じがしている。
頭痛は治まった様で、あの地に居た時よりも気分は回復していた。
そこへ、自分のパンツが変わっている事に気付き、目を丸くさせる。
「ああ、悪いね勝手に!
大丈夫、私が着替えさせたから安心しな!」
新品であろうジーンズに変わっており、目は勝手に輝く。
寝床の外を覗けば、黒のスニーカーが置かれている。
それについ、大きく肩を下ろした。
そうしている内に、大きな声の彼がやって来た。
「ロンだ。
ここのオーナーをしてる。何があった?
あの坊主は研究の話で持ちきりで、さっぱりだ!」
笑いながら差し伸べる手を弱々しく取りながら、ターシャは名乗る。
その横の女性はエバと言った。
「助けて欲しいのっ!
その研究は、皆が思ってる様なものじゃない!
すぐ警察に連絡して!」
気持ちが高ぶり始めるターシャの背を、エバが擦った。
「落ち着きな。ゆっくり話してごらん」
言うべき事が山程あり、纏めようとする所、エバはロンに言う。
「あんた、その坊やが言う研究所、あの格好良くなった孤島の事だよ。
この前もそこのお客が来てた。
また新しい医薬品開発が進んでるって話してた」
MECHANICAL CITY
本作連載終了(11/29完結予定)後、本コーナーにて作者後書きをします。
また、SNSにて次回連載作品の発表を致します。