表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
*完結* MECHANICAL CITY  作者: terra.
#09. Saving 架け橋の島
114/189

[4]


#05. Error 誤搬送

大好きで最高の友達の声は、何だか忙しない。

刻一刻と迫っては嵩張り、ハウリングする様に闇を

響かせる。


―危ないターシャ!―


彼女は何故、そんな事を言うのだろうか。

何処か分からない、足もつかない暗闇で、ただ、

必死になる同じ声が波打ち続けた。



#09. Saving 架け橋の島 [1]

「助…けて…」

ターシャは汗を滲ませ声を絞り出すと、そのまま

力尽きてしまった。

「おい!救護室に運んでくれ!」







………


……




……


………




 冷たい何かが、体を這う。

暗く、深い深い空間。

水の中に沈んでいる様に、ただただ体はどこかで揺らいでいる。




 途切れた音がした。

それは、聞き覚えのある声に変わると、泡の様に弾けて消える。




 また、小さな声がそこかしこで木霊する。

目には見えないが、それを探ろうと手を伸ばした。




 何かが、指の間を擦り抜ける。

聞こえてくる声は、糸の様な感触を持ち、纏わりついた。




 ぼやけ、流れ、過ぎ去るそれは、次第に鮮明になる。




 知っている。

必死になるあの子の声を、確かに知っている。



―ターシャ危ない!―




………


……




……


………




 視界に走る、一筋の明るい線。

僅かに開いた目の隙間からは、木造のテーブルに腰かけ、誰かが会話している。

まだ夢の中の様で、その声は遠く、ぼんやりと小さかった。






「それじゃあその若さで、研究所の期待の星って訳か?」



「俺は星じゃないよ。被験者だ」



「はん!?」



裏返った声で驚きを放つのは、恰幅のいい顎髭を生やした男。

やや筋肉質で、浅黒い。

服装は少し汚れた作業ズボンに、腰には上着が結ばれている。

色褪せた黒いタンクトップを着ており、まだ春でありながら真夏を感じさせた。

腰の上着の隙間からは、色々な工具が見える。



「それでお前さん、一滴も飲まないな。

喉乾かないのか?」



ルークはマグカップに目を落とし、その取っ手を慎重に掴んで少々揺らす。



「渇いてないよ」



「はっはっ!

こんな暑い中、長旅してきたってのにか?

まぁお好きな様に」



急に大きな笑い声を上げた彼に、ルークは釘付けになる。

その後、周りを見渡してから首を傾げた。






「ここは何だ?

サービスエリアって言ってたけど、それが正式名称か?」



ルークの素朴な疑問に、如何にも熱そうな彼は、よくぞ聞いてくれたと得意げな顔をする。



「ここはな、坊主。架け橋の島だ」



ルークは瞬きし、そっと首を傾げる。



「………橋は何処にも無い。

在るのは桟橋だけだ」



「違う!

色んな意味や気持ちを込めて、架け橋、だ」



「は!?何だ!?それ!?」



ルークは大層困った表情をし、声は裏返った。



「あんた、あんま困らせんじゃないよ」



不意に横を通過した中年女性は、それだけ言い放って部屋から消える。



「研究をする者はどうも頭が硬い。

もっと気楽になれ」



そう言って彼はグラスを置き、ルークを見て、続ける。



「ここは言う様に、海のサービスエリア。

色んな旅人や労働者の休憩所。

だから寝泊まりもできるようになってる。

長旅の疲れを癒して、また次の出先に安全に向かう。

その手助けをするのがこの場所であり、俺達だ。

だから船の修理なんかも受け持つ」




言い終えると、彼は右口角を釣り上げ笑みを浮かべる。

誇らしげといった所か。

ルークは腕組みし、その顔を凝視しながら首を傾げる。




「何でそんな事するんだ?」









MECHANICAL CITY


本作連載終了(11/29完結予定)後、本コーナーにて作者後書きをします。

また、SNSにて次回連載作品の発表を致します。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] おっと…案外、良いところ…なのか?←君の書き方はなぁ。油断をさせるから、油断出来んなw
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ