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*完結* MECHANICAL CITY  作者: terra.
#08. Reboot 脱出
110/189

[20]




 ルークは遠くを見て何かを考えながら、続けた。




「冷静か。

そうなる為の手段も余裕も、見つけられなかった、か。



 君が言うその選択をする為に必要なのは、情報。

それを得る為に更に必要なのは、体力。

それを維持する為には、体調管理が必要。



精神を安定させる事が出来ないと、意欲的、つまり前向きになれない。

思考を巡らせる事ができない。

君の言う様な事を決定する判断力も、鈍る。



 君も取り乱していただろう?今でもそう。

心拍も体温も上がってる。

焦って、感情的になってるな。

薬による症状もあるけど、それよりも、俺の言葉や自分の言葉が思う様に整理されなくて、気が立ってるな。



よって、自分の考える枠から一度出てみようとは思えない、か」




ターシャは、助手席で身を縮め、苛立ちながら黙りを貫いている。

それを横目に、ルークは尚も続けた。




「存在を大事にする。

どんな時も傍に居て、話を聞いてくれる。

我が儘も時には受け入れてくれて、支えてくれる。

認めてくれて、背中を押してくれる。

愛するという表現がそれならば、トップは部下に十分それをしてる。

何故なら、拠点内が上手く回ってるから。



 だが、拠点外では成立しなかった。

その理由は俺にも分からない。

ただ、予測するに、そのファクターは、彼等にだけ存在する事は無いだろう。



なぜならさっきも言った様に、彼等も君が居る世界で、そこのルールに従って生きていた事がある。

それに背いてあの施設に居る。



壁やチームを作り、線引きをする事。

その中で繋がる事。

人はそうやって生きていくんだろう?



尖ったり丸くなったり。

気が長かったり短かったり。

沢山の特性がある中で、互いに上手く打ち解け合うには、まだまだ理解が足りないのか」






膝に顔を埋め、ターシャはじっと考えていた。

彼は偏った感情や、イルカなどと呑気な事を言うが、その最中に混ざり始める思考を、他所へは置けなかった。

それらはどういう訳か、発言を止めて来る。






ターシャはこれまで、己の思うまま、感じるままに生きてきた。

そうさせて貰っていた事もあり、それが幸福だと思っている。

彼に、何も分かっていないと口にした一方で、自分はどうなのか。

何の整理もつけられていない今、不安が増幅し始めた。




 そこへ、ルークを起動させたというあの黒い男が脳裏を過る。




(…………クラッ…セン…?)




どこか引っ掛かる名前に思えたが、分からなかった。

非情な男だが、そんな奴が本当に、こんな落ち着き払った彼を生み出したというのか。

常に冷静で、傾聴し、口調が優しい性格は、先程までの焦燥を少しずつ緩和させていった。






 「おーーーーい!

減速しろーーー!

そのまま突っ込むんじゃねぇぞーーー!」




一体何事かと振り向くと、ジェットスキーを飛ばす男が現れ、並走してきた。

見た目から、ライフガードを務める者か。





挿絵(By みてみん)




 2人はコックピットのモニターに目を向ける。

そこには広く、陸地が表示されていた。




「島だ。あーあ、戻ろうと思ったのに」



「何それ…」



「知らないの?

海に浮かぶ大陸よりも小さな陸地の事さ。

家族が居るのか?」




居る訳が無い。

しかし、人に会える。

ターシャは大きく息を吐き、背凭れに体を預けた。










MECHANICAL CITY


本作連載終了(11/29完結予定)後、本コーナーにて作者後書きをします。

また、SNSにて次回連載作品の発表を致します。




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― 新着の感想 ―
[良い点] 何か見えたねー。 [一言] んー、感情論だな。 ルークには新しい感情を上書き出来るなにかがある。 かなり人間的だし、だが焼かれるのを嫌だとも前頁で言った。 意志は確立されてはいるが、法的に…
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