[19]
「放っておけないだけよ!
あいつらに使われてしまうから!
あそこは、貴方達の居場所じゃないもの…
それに、居てもらえば警察に話すのだって早いっ」
つい声を荒げた事で、また咽せ込んだ。
いつまでも薬の症状は治まらず、それにもずっと苛立っていた。
「仮に俺を突き出したとして、その後は、君が言った当然に沿って、俺を焼く?
ここにもし、アマンダが居たならば、彼女を君は焼く?」
「嫌な気持ちは拭えない…
2度目の別れになるもの…
そんな姿であれ…機械………
すぐに割り切れる訳ない…だけど...
そうするものなのは事実よ……
時間をかけて、警察や家族が決める事になるんだわ…」
あの家屋で見たアマンダの姿や素振りは、忘れられない。
鮮明に蘇る複雑な記憶に、ターシャは黙り込む。
「どんな判断が下るかは分からないが、時間がかかるならば、よくないな。
君の住む世界では未だ、俺やアマンダは維持できない。
組織の誰かが居ないと。
君達にできる事は無いよ。
技術を否定されるならば、また、せっかく起きたのに焼かれるならば、俺は嫌だよ。
まだ知らない事があるし、戻って彼等に話したい事もある。
君からは、涙も他の事も教わって、感謝するよ。
まだあるんなら、帰りながらでも聞けるしね」
「待って!貴方は何も分かってない!」
ハンドルを切ろうとする彼の手に、またもターシャは飛びつく。
彼は相変わらず、それに対して強引はしなかった。
「遠くは行かないって言ったろ?
開発を続ける為にも、逮捕される訳にはいかない。
まぁ、君は生きてるから実験対象にはならないよ。
予測するなら治験対象。
でも、彼等はそれすらしてない。
前代未聞のエラーだから、混乱してるんだ。
そんな中、拠点で設けられたルールの元、策を考えてるよ」
手がジワジワと痺れてくる。
策とは何なのか。
ターシャは怖くなった。
「にしても、存在してはならない人が、存在している。
その誕生を回避する為の策を、編み出す方がいいだろう。
誕生してからではなく、もっと前から手を打つ必要があった可能性が高い。
彼等のデータから、そう取れるな」
「データ…って…?」
「共通して言えるのは、体内も含め、身体に傷がある。
治療した跡なんかもある。
元々身を置いていた、君が住む世界で得た様だな。
生まれつきのものもある様だけど、解決されなかったみたいだな」
「だからって、こんな罪を犯すのは違うでしょ。
冷静じゃないわ。
そんな決断をする前に、話しだってできた筈。
周囲に家族や友達が居るんだし。
そこで解決が難しければ、相談ができる事業だってちゃんとある。
何でああなるのよ」
ターシャは分からなかった。
家族や仲間が周りに必ず居り、コミュニケーションを多く取って生きてきた。
すれ違いがあっても、乗り越えられた。
それは考えたり、誰かとじっくり話したり、落ち着く為の時間があったからであり、それは彼女にとって当たり前だった。
また、家族や周囲環境に問題があっても、あらゆる社会的資源が揃う世の中である。
職場でも、社内カウンセラーが設けられている事は多くなっている。
その様に、打ち明ける場所は幾らでもあった筈だと彼女は考えていた。
数ある選択肢がありながら、それをしなかった拠点の者達を、どうしても理解できなかった。
MECHANICAL CITY
本作連載終了(11/29完結予定)後、本コーナーにて作者後書きをします。
また、SNSにて次回連載作品の発表を致します。