[18]
「悪党よ!
痛みや苦しみを生み出す最低最悪のね!
存在していちゃ危険だわ!
アマンダや貴方を…他にもまだ……酷いよ……」
「そう言えば、アマンダと会ったのか?」
「あの子を知ってるの?
連れて来たかったわ!でも戻ってられなくて…」
「拠点の情報は全部分かるよ。
彼女はウィリアムズ補佐官の起動だから、保安官になる予定で、アップデートがまだ必要」
「は!?」
保安官という言葉に耳を疑い、首を振る。
頭ではみるみる、レザー服を着ていた彼等が過った。
「冗談じゃないわ!」
堪らず叫ぶと、咳と頭痛が酷く襲う。
彼女が水を飲む光景を横に、ルークは続けた。
「彼女の試験起動は長い事続いてる。
元々部下である彼が起こす保安官だし、色々と考えてる様だな」
ターシャは、助手席の肘掛けに大きく項垂れた。
体が一気に熱くなると倦怠感が増し、眩む目を覆って黙る。
一方、ルークは首を傾げた。
「ところで。
悪魔ってのが悪党で、トップ達がそうだって事か?」
その言葉にターシャは激しく顔を上げ、彼に目を見開いた。
その言い方はまるで、奴等を何とも思っていない様だ。
「あいつらは、人を何とも思ってない!
考えがイかれてる!」
再び怒りの声を上げる彼女だが、ルークはその様子をじっと見つめ、数秒遠くを見てから切り出した。
「どうかな。
拠点内での関係が成立しているし、人を何とも思ってない事は無いだろう。
ああそうか、区別を付けたのか。
君の世界でもそうする様に、彼等もまた、自分達の居場所で君の世界に対し、そうしたんだ」
ターシャは眉を顰め、発言に引いていく。
ルークは片手運転に切り替え、左肘を縁に置き、側頭部に凭れかかった。
「痛みや苦しみを生み出す事が最低最悪の悪党ならば、それも彼等に限っての事じゃないだろう。
考えがイかれてる?という事が、分別を付けられなくて、酷く我が儘で、間違いだらけであると言う事ならば、同じ様な人間は、何も拠点に限らず存在しているだろう。
何らかの条件が揃う事で、そんな人間はこの先も生まれる可能性があると解析する」
発言の最中、ターシャの顔はみるみる歪んでいった。
彼は目の前に広がる景色に目を泳がせ、何かを読み取りながら流暢に話す。
その間、付いていた腕を外に出し、ボートのボディを指先で叩いていた。
そんな1つ1つの細かい動作が、益々人を思わせてならなかった。
「治験や人体実験をするみたいに、人は人を使って幾らでも実験をしてきた。
拠点でも昔、治験モニターをしていたみたいだな。
この辺りで観測できるコンピューターの周波数、その質を読み取る限りだと、ロボットを使う事も、AIに頼る事も増えたんだな。
そうするのは、便利だからという思考だけではない、か。
高スペックを持った世界や姿に進化したり、製品開発をする事で、長く生き続ける為の術を考えている、か。
君は科学者じゃないし、その辺の考えについては訳が分からなくて、苛立つのも無理ないか」
調子が狂ってならないターシャを横に、彼はまた切り出す。
「で、ターシャ。
君は、アマンダや俺を、存在してると危険な悪党が作ったと思っていながら、自分の世界へ連れて来ようとしている。
それは結局、彼等の技術を受け入れてるのか?」
「違う!」
彼女は堪らず、反射的に肘掛けから体を跳ね上げた。
MECHANICAL CITY
本作連載終了(11/29完結予定)後、本コーナーにて作者後書きをします。
また、SNSにて次回連載作品の発表を致します。