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*完結* MECHANICAL CITY  作者: terra.
#08. Reboot 脱出
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#08. Reboot 脱出

「両親ってのに俺は…

あい?何?あいされた様にって言ったな。

何だ?それ」







難しく考えず、ターシャは少々間を置いてから伝え始める。




「大事にする事…かな……

どんな時も傍に居て…

話も聞いてくれて…

我が儘も時には受け入れてくれて…

支えてくれる…

認めてくれて、背中を押してくれる……

互いにそうするんだと思う…」




ルークはハンドルを両手の指先で小さく叩きながら、間を置いた。




「へぇ。

じゃあ俺で言い換えるなら、Realとして起こしたのはトップで、それが両親にあたる。

両親の他にも居るって言うなら補佐官や他のR、部下達になる。

知識もくれるしメンテもしてくれる。

彼等はいつも傍にいるよ」




ターシャは顔を歪め、暫し口を噤んだ。

頭痛がする中、彼の理解を覆す言葉を探す。




「だからあんな焦って不安な顔をして、銃を撃ってきたのか。

彼等は今、俺を失って困っていて、悲しんでる…」




疑問を投げかける時よりも、声のトーンが落ちている。

それを聞き、ターシャはまた気付いた。

彼には、理解できる感情にも偏りがある。






 また、他にも不思議に思えた。

アマンダは生前の事を知っていたが、ルークは両親を奴等だと解釈している。



「ねぇ。

貴方って…何でそんな姿になったの…?」



実に妙な質問だが、彼は何とも無さそうに答える。



「バイクの事故で、崖から落ちた。

複雑骨折を起こしたんだよ」



「……その時、あたしと衝突したって事?」



あの黒い男は、自分を植物人間にしたのがルークだと言った。



「君に?

俺が衝突したのはガードレールだよ。

何でだ?」



「あたしは事故で植物人間になって、連れてこられた。

その原因が、その……貴方だって…」



ルークは首を傾げ、視線を泳がせ何かを探り始める。

しかし、事故当時のターシャの事も、自分の家族を気にする様な事も、結局何も言わなかった。

ターシャは、あの男に酷く揶揄われただけにも思えてきた。

考えれば考える程、腸が煮えくり返ってならない。

その焦燥が再び胃の不快感を催すと、ターシャは突っ伏して思考をリセットしようとした。






 そこへ、無線が入る。

雑音の中には、騒ぎ立てる複数の声も混ざった。

向こうでの混乱が、そのまま怒号に変わる。



“おい何やってる!

ルーク!引き返せ!それ以上行くな!”



ターシャはゾッとし、身を引いた。

こんな機能があるとは知らず、青褪める。



「分からないな。

戻って話そう、ターシャ。

トップが何か知ってるよ」



「バカ!何言うの!?ダメ!絶対ダメ!」



操縦する彼の手に飛び付き、止めた。

そのまま慌てて、コックピット周辺の機材を見て回る。






 燃料や電圧を示すであろうメーター。

方位磁針。液晶にはレーダーが映っている。

その脇に並ぶ矢印のボタンに触れると地図になった。

ターシャはその画にゾッとする。

この近辺を反映しているのだろうが、陸が確認できず真っ青だ。

激しい無線音はまだ鳴るが、受信が悪いのか、明確な言葉はもう聞き取れなくなった。




「ねぇこの無線とか、何か受信機があるなら、壊せない?」



「任務で使ってる様だし、ダメだよ」




ターシャは背筋が凍った。

あの男が放った、遺体の替えという言葉が過ぎり、目が震える。

故人を運搬しているのかと想像すると、ターシャは首を振りながらルークの肩を掴んだ。




「極めて悪行だわ!ルーク、これは重罪よ!

亡くなった人は、遺族に安らかに眠れる様に祈られながら、火葬や埋葬されるもの。

あいつらは、してはいけない事の分別がついていない。

酷く我が儘で、間違いだらけよ!

言う事なんか聞いちゃダメ。すぐに止めて。

こんな事を続けても、痛くて苦しくて、誰の為にもならない。

さっき言った涙が止まらなくなって、笑えなくなって…」




段々と精神が混乱していった。

親友を失うどころか、その亡骸を実験に使われ、どうしようもない苦しみの渦に陥っている。

表現に苦しむ辛さは、再び涙を滲ませた。

口は止まり、彼を掴む手は震えている。






 ルークは肩を掴むターシャの手に慎重に触れると、立ち上がっていた彼女を座らせた。

そしてまた、床に転がっていた水を渡すと、再び前を向く。

ハンドルを切り返す事をせず、またどこかを見て考え始めた。










MECHANICAL CITY


本作連載終了(11/29完結予定)後、本コーナーにて作者後書きをします。

また、SNSにて次回連載作品の発表を致します。




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― 新着の感想 ―
[良い点] 君が最上の癒しでいてくれる点 [気になる点] ルークに何か伝わったのだろうか。 [一言] 事件の真相が気になってきましたね。
[一言] ターシャはアンドロイドのルークと共についに施設から脱出して海へ……でも陸地は遠く、彼女の命運は目覚めたてのアンドロイドの掌中に…… これからどうなるか楽しみです!
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