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*完結* MECHANICAL CITY  作者: terra.
#08. Reboot 脱出
104/189

[14]




 乗船し、船体が大きく左右に揺れる中、バランスを崩しながら狭い通路を進む。




「運転して早く!

そしたら知らない事全部教えてあげるから!」



言い終わりに鍵を手渡された彼は、ターシャを横目に一瞬、怪訝そうに睨むと、コックピットに座る。



「ちゃんと教えてくれよ?それに遠くは行かない。

折角だし運転を試すよ。

そしたら後の実験が省けて効率がいい」






 エンジンが入ると、ターシャの鼓動は高鳴った。

脱出できる。

つい彼の肩を掴み、また感謝を伝えた。

だが、彼は僅かに首を傾げ、彼女の顔をじっと見る。

先程と表情が違う事を、不思議に思っているのか。






 ボートは後退する。

ターシャは後方に広がる景色に目を輝かせ、真上に上がりきったゲート、そのまま再び、ボート前方を見る。






 刹那、発砲音と共にコックピット付近で火花が散った。

ターシャの悲鳴が重なり、操縦席の彼はその出所に向いて目を瞬かせる。



「おい新型!戻れ!何やってる!」



やっと発見したと言わんばかりに、血相を変えた部下2人が拳銃を向けていた。

ターシャは声を上げ、床に伏せる。

ボートの後退速度はみるみる上がり、部下が慌ててゲートを締めようとするが、間に合う筈もなかった。




 怒号と共に銃弾は更に放たれ、ボートのフロントに穴が開く。



「飛ばして!飛ばして早く!」



旋回し、真横になるボディーに数弾入る。



「やっぱり出るべきじゃないよターシャ。

危ないだろう?」



「出なきゃ死ぬわよ!」



「だから、死にやしないよ。

足止めしようとボートを狙ってる」



「銃よ!?銃!殺すに決まってる!

さっさと飛ばして!」



ボートの向きは完全に変わり、大海原が正面に広がる。

プラットフォームでは、更に弾が連続で火花を上げた。

それを確認した彼は、ふと正面を向き直り、ある事を思い出す。






「解除……次は…これか…解除…まだあるの?

…こうか…解除……あああった…数値最低…

こっちも……これでいいか」



彼はどこか一点を見ながら呟くと、一時自動運転に切り替え、席を立った。

俯せのターシャを軽々と跳び越え、足早にプラットフォーム手前まで向かう。



「何してんのよ!」






 プラットフォームまで出て棒立ちした彼の両側に、弾が2発弾かれた。

射程圏が遠ざかり、銃弾が届きにくい所まで来ている。

彼は、上がり切ったゲートに目を細めた。

屋内に立つ部下達に赤枠が付くと、ほんの僅かに左へ傾き、右目に意識を集中する。

その動きと共に、瞳は音を立て引きあがり、黒い小さな立方体パーツが機械音を立てて出現。

それは前に少々剥き出すと、まるでペンの替え芯程の細さをした青白い閃光が、短く放たれた。




 それは瞬間的で、部下達はゲートを見上げたままフリーズ。

真上のゲートから、白煙が細く立っていた。



「最悪…」



部下は完全に小さくなるボートを目に重く呟くと、横で報告を上げる声が飛び込んだ。



「Rayがあの餓鬼とサウスから逃げた!

指令送って戻らせてくれ!」






 ターシャは何が起きたか分からなかった。

攻撃が止んだ事に安堵するも、こちらに戻って来る彼を恐る恐る見上げる。



「何したの…」



彼はまた彼女を軽々跳び越え、コックピットに戻りながら言った。



「ちょっとビックリさせてみただけ。

怪我はしてないよ」



定位置に腰掛けると、再びハンドルを握る。



「早く教えてくれよ。

戻らないと。

皆怒ってる。

あーでもイルカ見つけたいな。

居たって報告しないと」



先程の事など他所に、外に出たら出たで呑気に楽しもうとするのか。

縁から顔を出し、海をキョロキョロ見渡している。

ターシャは口が塞がらないまま、不思議な彼を眺めた。

そして、未だ胃の辺りが気持ち悪い中、助手席にフラフラと移る。










MECHANICAL CITY


本作連載終了(11/29完結予定)後、本コーナーにて作者後書きをします。

また、SNSにて次回連載作品の発表を致します。




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― 新着の感想 ―
[良い点] 運転するだけで全部教えてくれるのか…。 [気になる点] 君が可愛く見えるのは何故か。 [一言] Ray良いキャラしてるねぇ。何処か抜けているのにワイルドな感じが。
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