転生1回目その8
居城してから次の日。スタンピードは昨日で終わって、今日は殺した魔物の死体掃除をやる。本来は掃除屋がやる仕事で俺みたいな騎士はやらなくても良いが、俺は経験の為に自ら志願して魔物の死体を掃除する。周りからかなり止められたが、数が数だから多い方が良いだろうと言ったら、渋々と納得してくれた。
まぁ掃除って言っても浄化隊も来て疫病が発生をしないように浄化して、残っている死体を一箇所にまとめて燃やすだけだけどな。本当なら個別に別けて燃やした方が良いと思うんだが、数が数だから時間がかかるし冒険者から苦情が来そうだから、早くやっているんだよな。死体に関しては解体して使える所を使いたいが、1日経った死体を使う訳にはいかないし、何かしらの病原菌を王都内に持ち込むわけにはいかないからな。
けど魔石は例外だ。魔石は使い道があるお陰で絶対に手に入れたい物だ。魔道具は勿論魔法を使用する際に触媒として使う時も、砕いて魔力を補給する時にも使える。砕いて使うくらいなら魔道具や触媒にした方がいいがな。勿論浄化してから持って帰るけど。
死体を一箇所にまとめたら火魔法で一気に燃やして行く。周りの人は火が青いって言って騒いでいるが、俺は無視して燃えている光景を見る。
勿体ないけど病原菌を持ち込むわけにはいかないからなぁ。経った1日で病原菌が出るとは思わないけど、念のためだしな。
燃え終わったら残っている場所にも行って、同じような作業をして今日は終わえる。
それから2日後。王城の何処かの廊下で移動していると、前から三大剣聖が来る。
「おっやぁ三大剣聖様たちじゃないですか、ごきげんよう。こんな所でのんびりと歩いてますが羨ましいですねぇ、さぞ良い休暇でも過ごして来たんでしょうか。三大剣聖が聞いて呆れるなぁ」
「貴様我々を侮辱する気か?」
「そりゃするだろ。何でお前らは3日前にすぐに動かなかった。お前ら三大剣聖や四天王と言ったやつらは、緊急時に各自の判断で行動出来る権限あるだろ。3日前のお前らは確かに王城にいただろ。ならすぐに行動出来ただろ」
「それを言えば四天王だって何もして無いでしょ」
「四天王たちはすぐに住民の避難活動をしていたぞ。お陰で住人たちの被害は無しだから文句は無いし、普通の騎士たちより人気ある四天王が誘導してくれたから、いざこざが起きずに円滑に進むことが出来た。対してお前らは何をしていた? 俺が調べた限りじゃ何もしてないだろ。何してたんだよ」
「調べていたなら解っているだろ。俺達は王族の護衛をしていたんだ。近衛騎士団だけでは心持たないからな」
「えぇ近衛騎士団にいる人たちは、四天王や剣聖に近いって言われている人たちですよ。いくら貴方たちが強いからと言って数には負けると思いますよ。それに王族の護衛は既に近衛騎士団で間に合っていると聞きますが、そこに三大剣聖も護衛に加わるって事はかなり危険な状態だと思いますが。まぁ嘘ですよね。近衛騎士たちからは特に王族の人たちは焦らず冷静でいて、指揮を取るために行こうとしてたから、既に前線で騎士たちで止めていたと聞いてますが。これを聞く限り三大剣聖は真っ先に戦いに加わった方が良いですよねぇ。本当に何をしていたんですかぁ?」
「王族の護衛だと言ったはずだ。それ以上でもそれ以下でもない」
「・・・あぁ怖いから逃げたんですね」
俺がそう言うと2人は剣を抜き攻撃をして来て、俺は攻撃を避けて両手で2人の首を掴む。
「何ですかいきなり攻撃をして来るなんて。いくら剣聖だからと言ってちょっと野蛮すぎやしません? 聖剣の名が泣きますよ」
俺は少し力を入れて2人の首を絞める。
「―――そこまでにしてくれ神剣の騎士殿。2人の非礼詫びよう。すまなかった」
「こちらこそすみませんでした。煽り過ぎました」
俺は2人の首から手を離すとその場で咳き込む。
「ワシらは本当に王族の護衛をしていただけじゃ。神剣の騎士殿が何か疑う事は何1つ無い」
「そうですか。ではこれで私は失礼します」
俺は一度お辞儀をしてから離れて総団長の執務室に向かう。その途中で人気の少ない所に入る。
「時間を割いて頂き誠に感謝します」
「別に良いよ。俺は気になっていたからな。あの三大剣聖の情報をくれるんだろ」
「はい」
王国の諜報部の人から三大剣聖が何故戦いに参加をしないで、王族の護衛をしていたのかを聞く。
「―――つまりアイツらは俺たちが戦っている場所とは全く別の所にいて、魔物を出来る限りテイムしていたって事か? しかも所属が違う騎士たちも一緒になってテイムしていたと」
「はい。顔は全員把握出来ませんでしたが、鎧に描かれているエンブレムは全員バラバラでした。これはある種の反乱を起こそうと考えているのではないかと」
「だけど情報が少なすぎる。一番怪しい三大聖剣たちの部屋は調べたりはしたのか?」
「それが警戒心が強く部屋に入るには難しいのです。何度か試みましたがどうも少しでも不審者が入ると、すぐに警告音が鳴るように結界が張られていまして、それを解除するにも時間がかかり過ぎて時間切れになるのです」
「おいおい逆に怪しすぎるなぁ。それほど他人には見られたくない事が隠されているのか? それともただの用心深い人なのか。三大聖剣の1人のニーコラスだけじゃなく、2人も同じなのか?」
「はい。残りの2人ヴァン様とシリア様も同様でございます」
「普段からそう言う事をしているならいいが、そうじゃないなら益々怪しいな。普段からそう言う人たちなのか?」
「いえ全く」
「最悪王命で強硬手段を取る事も視野に入れても良いかもな。とにかく情報が足りない以上何も出来ないな。この情報は総団長にや国王様には?」
「既に伝えております。それから神剣の騎士様もご用心を。これらは三大聖剣や騎士の他にも、大臣や貴族も関わっている可能性もあります。中には事情を隠して婚約の話を持ち込んでくると思います」
「あぁお見合いとかの話しなら全て断っているし、肖像画も中身を見ないで全て燃やしているぜ!」
「それはそれでどうかと思いますよ・・・。では私はこれで」
「あぁ情報ありがと。気を付けろよ」
そう言って俺は元の道に戻って本来行くはずだった所から、寮に向かい自室に戻る。
それから1週間経って、俺は会議室に集合して団長から話を聞く。
「揃ったな。突然だが我々『中央突撃機動騎士団』から『北部遠征騎士団』になった」
「「「「中央突撃機動騎士団から」」」」
「「「「北部遠征騎士団に」」」」
「「「なった? 何で?」」」
「総団長の命令だ。この騎士団には神剣の騎士ことリシャールがいるだろ。そのリシャールを遊ばせいるのはマズいから、いっそ変えて違う騎士団にすればいいだろうって。総団長がそうおっしゃっていた」
「はぁ? オレらが遠征出来ると思っているのかよ。んなもん出来るに決まってるだろ」
「出来るなら言わないでくださいよ。ですが何故北部遠征騎士団に?」
「実は北部で魔物の活動が活発化になっていてな、活発を押さえるために予定が少ない騎士団に行かせていたが、今の騎士団には多忙過ぎて暇無い。そこで我々の騎士団に白羽の矢が立った」
「普段から暇騎士団だからそれが理由でしょ。リーシャ関係無くね?」
リーシャって言うんじゃ無い。何か女性っぽい名前で嫌になるぞ。デレク先輩はそろそろまともな名前を言ってほしいものだな。
「さっきも言ったが、リシャールを遊ばせるくらいなら遠征に行かせて暴れさせた方がいいんだ」
「ふーん。ドンマイリーシャっち!」
ドンマイはどちらかと言うと俺が言う台詞じゃないか? つかリーシャっちって言うな、かなり無理があるだろ。
「そう言うわけだから明日から訓練を開始する。今日は荷物の点検をやる」
実質今日から訓練って訳だな。