表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/6

魔王降臨

 画面に映るのは今のオレと同い年くらいの金髪の子供。どうやら海外の有名な資産家の孫らしい。



 だがオレには直感で『魔王』だとわかり、そしてステータスでそれが確認できた。



> ルーク・アースランナー 男 3歳

> 魔王 Lv 1



 一体どういうことなんだ? と疑問に持ちながら、適当に他の視点でステータスを見ようとする。


 たまたま開いた『ノベルゲーム・人物設定』風ステータスを見てドン引きした。


 

> 名前: ルーク・アースランナー

> 二つ名: 人類絶滅を企む転生者


> 紹介: 世界的環境テロリストだった男は、再び地球に転生した! 地球環境のために人類を根絶やしにする彼の夢は、今度こそ叶うのか? 今、祖父より引き継いだ大きな資産を元に彼のチャレンジが幕を開ける……


> 前世: 最狂と呼ばれた孤高の環境テロリスト。国連総会爆破事件やフラマンビル原発臨界テロ事件、イエローストーン人工噴火未遂事件などが有名



 やっば……マジもんじゃん……


 前世に刻まれた物騒すぎる文字がオレの心を震わせる。


 国連総会って爆破するものだったのか? そもそも原発を爆破したり、火山を噴火させたりした方が環境に悪いのでは……


 

 とはいえ確かにコイツは確かに人類を滅亡させかねない。3年も前なのでうろ覚えだが、たしか、オレがやらないと人類は滅亡するんだったか? ろくでもねぇ。



 画面が切り替わり次のニュースが流れ始めた。


 どうやらオレの "鑑定" スキルは本人か、本人の写っている映像を見ていなければ発動しないらしい。写真じゃダメなのが厄介だ。


 3年の間に色々と試してみたんだが、いくつか制限もあるみたいだ。


 やはり、チートスキルでも欠点はある。

 


 一番わかりやすいのは回数だ。


 MP的なもんがあるのか、それとも脳が疲れるのかは分からないが、ステータスを見る回数と深さ?


 深さって表現が合ってるかはわからないが、まぁその辺りも制限があった。

 


 

 例えば、野球風ステータスを表示した時、「右投げ右打ち」くらいまでの情報であればそこまで疲れない。


 これを、例えば持ってる変化球の球種と成長可能性とか、昨年度の防御率とかみたいに詳しいステータスを見ようとすると一気に疲れが出る。



 これは人間相手でも、視界に映る、人間以外の適当なもの相手でも同じだ。


 例えばウチにある冷蔵庫の、直近10年間における本塁打数を見ようとする。そうするとプロ野球選手相手に同じステータス確認をした時と同等に疲れる。


 結果? もちろん0に決まってる。冷蔵庫はバットを振れんよ。



 ステータス確認をやりすぎると最終的には昏倒する様で、去年の秋に両親をずいぶん慌てさせた。


 ただ、どうやら使えば使うほど鍛えられるみたいで段々と使用回数も見られるステータスの深さもじわじわ増えていっている……ような気がする。



 

 また、どうも同じジャンルかゲームか……その辺りで経験値的なのが区切られているらしく、よく使う「野球ゲームのステータス画面」と、あまり使てきていない「恋愛シムのステータス画面」とで、疲れ方がかなり違ってきてしまっているのが現状だ。


 いや、ほら。気になるじゃん? 街で見かけるヤツらがどれくらい野球できるかって。




 ひとまず倒すべき「魔王」とやらの存在が実在するのはよくわかった。


 とはいえ、相手はニュースになるレベルの御曹司、こっちは平凡なサラリーマンの息子。


 

 今すぐどうにかできるわけではあるまい。



 今、オレにできること、それは……


「おかわり!」

「おー。ゆうやは元気だなぁ」

「ひろきくんも、お兄ちゃんみたいに元気になるんだよー」

「おぎゃー」


 よく食べてよく遊び、よく寝る。今日も健康的に過ごす。すべては魔王を倒すためだ。決してつらかったサラリーマン時代との対比に溺れていたわけじゃない。


 

――



 5歳になった。幼稚園の年中さんになった。


 「ゆうやくん。あーん」


 今、オレの口元に泥団子を運んでくれたのは宮坂優花ちゃん5歳。そう、オレのクラスメイトだ。

 

 あさがお幼稚園に入園してから早1年。オレは人生2回目の実力を十分に発揮してクラスの人気者に……なっている筈だった。


 だが、所詮は幼児。相手は幼児。そして身体に思考が引っ張られがちなオレもやはり幼児。かくして量産型幼稚園児コミュニティの一員にオレは所属することになった。



 意味がよくわからない? まぁ、それもそうか。


 わかりやすく言うと、みんなと程々に仲良く遊んでいる。いいよね。幼児の世界。陰湿ないじめもくだらねえ陰口も無いんだもん。


 なお、おもちゃの取り合いによる直接暴力は良くある。



 とはいえ基本的に優しくて大人しいオレはクラスの女子からモテモテだ。


 女子がオレに仲良くしてくれる。


 ……もちろん男子もだ。

 …………まぁ、みんな、仲良しだ。


 この年代に恋愛感情はまだ無い。




 そんな中でも特に仲良しなのが、そう。優花だ。


 同じマンションに住んでて親同士も仲が良く、送り迎えの時間も大体同じ。コレはもう、親密度あがっちゃうね!


 それだけではなく、なんとこの優花、オレにとって「ヒロイン」らしい。



 

 それこそ去年の秋のことだった。いつも通り、『野球ゲーム風ステータス』を鑑定していた時、ふと予感がして『人物設定』も鑑定して気づいたんだ。



 あ。念のため言っておくと、この『人物設定』大抵の場合は碌な情報が載ってない。その証拠に担任の平坂先生に使うと、結果はこんな感じだ。


 

> 名前: 杉浦 若菜

> 紹介: 幼稚園教諭(本ストーリーに関係ありません)


 

 ストーリー関係なしと明示してくる鑑定結果が失礼すぎるとはオレも思う。


 もちろん "深く" 鑑定をするといくらでも平坂先生のバックストーリー、例えば趣味でやっている覆面ロックバンドが最近、人気急上昇中だが職場にも正体を明かせずに困っている、とかがわかる。

 

 オレのストーリーには関係ないらしいが……気にはなる。とはいえ、深い鑑定はかなり疲れるので深入りしない。



 そんな訳で、その日。いつも通り、朝の挨拶を終えたあたり。鑑定スキルのトレーニングも兼ねて、隣に座っていた優花の『野球ゲーム風ステータス』を眺めていた。この鑑定は、ほぼ習慣化している。

 

   

> 宮坂優花 5歳 両投両打

> パワー:1, 走力: 1, 守備: 1, 肩: 1, スタミナ: 2, ミート: Lv.1


 

 5歳児のステータスに特筆する点なんてほとんど無く、まぁ、今日もステータス変わんねぇなぁ、小数点単位で見るか? そういえば、両ききなんだよなぁ、くらいしか思っていなかった。


 

 ただ、その日はなんと無く気になって『ノベルゲーム・人物設定風ステータス』を使って、それで、目を見張ったよね。




> 名前: 宮坂 優花

> 二つ名: 悲劇のヒロイン

> 紹介: 本作品のヒロイン。主人公と幼馴染の賢者の卵。しかし行く手には数々の困難が立ちはだかる。果たして彼女は生き残れるのか? それは主人公次第と言えるだろう。


 

 ヒロイン? 誰の? オレの?


 ヒロインってのは、アレかい? 最後にオレとくっつくって事かい? ぼかぁしばらく彼女はいなかったよ?


 あまりに胸がキュンとくるプロフィールだったのだが、視界の端に不穏なワードがあった気がしたのでもう一度確認をする。


 

> 名前: 宮坂 優花

> 二つ名: 悲劇のヒロイン

> 紹介: 本作品のヒロイン。主人公と幼馴染の賢者の卵。しかし行く手には数々の困難が立ちはだかる。果たして彼女は生き残れるのか? それは主人公次第と言えるだろう。



 OK。『悲劇』『困難』『生き残る』ね。



 ……一体、このあと何がおこるんです??


 

 そんな訳で、当時2歳だったオレは、深い “鑑定” のやりすぎで、そのまま昏倒して、周りをたいそう驚かしたのだった。

ここまで読んでくださりありがとうございました。


もし楽しんでいただけたら、ブックマークや評価、リアクションなどをしていただけると励みになります。

感想もいただけると幸いです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ