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決起

告白は僕に重くのしかかってきた。どうしても勇気が出ない。しかし、好機は今しかなかった。僕は震える両足を突き動かすしかなかった。ただ想いを伝えるだけだと自分に言い聞かせた。どんな言葉で伝えようか、迷いに迷った。僕から出る言葉はどれも弱気ではっきりしていなくて、情けないものばかりだった。だが、想いは溢れていた。そのことこそが大切なのではないかと思い始めていた。僕に出来る限りの事をすれば良いのだと、それこそが僕が彼女に見せるべき姿なのだと思った。次に二人になる機会があれば、そこで想いを伝えようと心に決めた。


二人で三鷹の予約の必要な美術館に行くことは、前々から決まっていたので、僕はそこしかないと決意を固めた。美術館に行き、近くの井の頭公園で想いを伝えよう。そう心に決めた。

しかし、僕は弱かった。二週間も前から告白の言葉まで考えて一言一句間違えずに発音をするだけなのに、僕はできなかった。井の頭公園の池のボートの上。そんな絶好の機会も僕には活かすことができなかった。僕はそんな弱い自分が恨めしかった。


このままで終わってはいけない。先延ばしにしてもだめだ。そう内省した僕は、次のデートで形はもうこの際どうでもいいから想いを伝えようと再度決心した。

いつも通りのデートだった。映画のチケットを予約し、その前にお昼ごはんにラーメンを食べ、映画までの小休憩。ここしかなかった。僕は自身を鼓舞した。

「西さん、僕が君のことが好きだっていう話を今からしても良いかい?」

なんて遠回しで格好の悪い告白なんだろう。会話の流れも読まず、さらには無視して話を切り替えてこれだった。何も考えずに勢いだけで紡がれた言葉がこれだった。しかし、西さんは笑顔で、

「はい。しましょうか。私その話好きです。」

と応えてくれた。そんな曖昧な言葉たちによって、僕たちは結ばれた。なんてうまくはいかず、結局そのあとはっきりと言って欲しいと西さんに言われ、僕はきっちりお付き合いを申し込み、晴れて僕たちは先輩と後輩という関係を超えた。あの時のことを僕は今でも鮮明に覚えている。暖かな公園だった。僕たちの周りには人々の変わらぬ日常が漂っていた。僕たちだけが非日常へと潜り込んでいた。輝いていた。


こうして、僕たちは恋人になった。その後は言うまでもなく幸せだった。デートでは今まで通り映画を観に行くことが多かった。季節も大切にしていた。秋には紅葉を見に行き、クリスマスにはこっそりケーキを作り、正月には初詣とおみくじ、春にはお花見。夏には熱海に小旅行をし、花火を見た。同じような日々が続くものだと思い、お互いに来年も相手と一緒にいるものだと信じていた。


しかし、そんな幸せな日々を壊したのは僕だった。

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