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一章 1話EX

数日空いちゃいました。

「そんな……、深山くん……」


私はしゃがんでいた腰を更に落としペタリと尻餅をついた。

どうして、なんで、深山くんが……。

私の目の前で深山くんは底のわからない深い暗闇の中へ落ちていった。助かっていて欲しい……! そう、思うけど、そんな可能性がある訳がないと思ってしまう自分もいた。


そんな事を考え茫然とする私の肩を誰かが揺すっている。虚ろになった私の視界には私の親友がいた。


「ショックなのは分かるわ。でも今はこの状況をどう打開するか考えましょう」

「……打開って、どうやって?」

「それは……」


沙耶が言葉を詰まらせる。その様子に少しだけ罪悪感が湧いた。


「ごめん、意地悪なこと言っちゃったね……」

「…いいの、気にしないで。……私も朱音と同じ気持ちだから」

「……ごめん」


それもそうだよね、私にとっては特別な人だけど、ここにいる誰にとっても深山くんは私たちのクラスメイトでありお友達だもの。


「梵さん……すまねぇ」

「え、どうして志摩くんが謝るの?」

「俺なら、助けられたかもしれないのに……。結局目の前で見殺しにしちまった……! くそっ!」


志摩くんはそう言って硬く握り締めた拳を床に叩きつけた。


「ううん、そんなことないよ…! それにまだ死んじゃったって決まった訳じゃ、ないよ……」

「ッ…! あ、ああ、そうだ、その通りだよな!」


沈んでいた志摩くんの表情に僅かに希望が灯る。 だけど状況が変わった訳じゃない。未だに周囲は不気味な色をした空間が広がり、この床は浮いているのだか定かではない不思議な状態だ。


「今一体どういう状況なんだろうな」

「分からないわ」

「…っと、来栖さんか」

「なに?」

「あ、いや別に」

「そう」


志摩くんと沙耶は短い会話はするもののいつもいつもこんな感じで、最終的に無言になる。だから私が一言二言フォローして会話を繋げるのだ。


「もしかして異世界転移とかしてたりしてね!」

「いや、そんなこと……あるかもなぁ」

「そうね、普段なら荒唐無稽な話だと思うけれど、今の状況ならそう言われれば納得してしまえるだけの根拠もあるものね」

「そうだよね! もし本当にそうなら深山くんだってきっと異世界転移してるんだよ!」

「確かにそれなら、十分あり得るな! ならもし本当に異世界転移だとしたら一緒に燐を探しに行こうぜ!」

「うん!」

「私も忘れないようにね」

「沙耶も来てくれるの!? ありがとぉ!」


憶測だけど十分に可能性のある希望に胸が高鳴る。いつも日頃から深山くんが言ってた妄想の中の話だけど、望みをかけるには十分だった。


「おい、なんか出口みたいな光が見えてきたぞ!」

「え、どこどこ!?」

「うわ、まぶしっ!」

「ってちょっと押さないでよ!」

「ホントだ出口っぽいな」


はじめの生徒の声に呼応してそれぞれのグループが騒がしく示された方角を見る。もちろん私達も見ていた。


「お、確かに出口っぽいな」

「ホントだね、ちょっとキレイ」

「そんなことより貴方達、しっかりくっついておいたほうが良いわよ」


少しだけ浮かれる私達に沙耶が注意を飛ばす。


「可能性としては低いだろうけど離れ離れになる可能性もあるわ。だからそうならないためにお互いに手を握ったりなんなりして離れないようにするのよ」

「お、なるほどな。じゃあ梵さん手ぇ、繋いでくれるか?」

「え? うん、いいよ」


そう言って志摩くんに手を差し出すが——。


『え?』

「志摩くん、私と手を繋ぐと何か問題でもあるの?」

「えっ、えっと、いや、特に何も問題は、無い、ですっ」


横からスッと掠めとるようにして沙耶の手が大きな志摩くんの手を掴む。


「ほら、朱音はこっちよ」


空いているもう片方の手をニギニギして沙耶がアピールをする。


「あ、うん」


と、沙耶の手を握った瞬間——。


ゴゴゴゴゴォッ……!


「えっ」

「うわっ」

「きゃあっ!」


出口のような光が近づくにつれて床が震え始め、更に魔法陣が瞬き始めた。


「二人とも絶対手を離すなよ!」

「え、ええっ!」

「う、うんっ!」


ギュッと志摩くんが沙耶の手を離すまいとしっかりと力を込めて握る。あれ、沙耶、顔赤い?

もう少し確認して見たかったが状況がそれを許してくれない。

床が崩壊するんじゃ無いかと思うほどに床の揺れは増していき、光がだんだん強くなる。

そして光が完全に私達の視界を満たした時、強烈な眩しさに目を閉じた。



揺れも収まり、瞼を明るくしていた光が消えたかという頃目を開けた時、思わずにやけてしまった。


私が今立っているのはフカフカな赤い絨毯の上で、目の前には何十人もの豪華な装飾の施された帯剣した騎士の格好をした集団がいた。そして更にその先にはかなり凝ったデザインのなんとも豪華絢爛な見た目の玉座、そしてそれに腰掛ける人物。


ゾクッ


「!?」


思わずあたりを見渡す。いや、視線を外すそぶりを自然に見せようとしただけだ。

ザワザワと周囲を賑わせるクラスメイトは気づいたのだろうか、あの王様の雰囲気に。


「朱音、どうしたの?」

「あの王様みたいな格好をした人、かなり危険だと思うの」

「……?別にそんなことはないと思うけど」

「いや、あの人は絶対に近づいちゃいけない人だよ」

「……朱音は根拠もないのに人の悪口言わないものね、分かったわ、気をつける。志摩くんも気をつけて」

「お、おう!」


果たして私の言ったことは合っているのか。残念なことに答えを知る機会は直ぐに訪れた。


「勇者諸君、私の国へようこそ! 早速ですまないが君達には今すぐ決めてもらわねばならぬことがある!」


如何にもな顔をした王様は大声でそう告げるが、その音量とは裏腹に声に温かみがなかった。

まるで聞こえる威圧のような言葉だ。そんな言葉を聞いてクラスメイトから次々と怒りの声が飛ぶ。


「ふざけんな! 今すぐ元の場所へ返せ!」

「そうだ! ふざけんじゃねぇ!」

「いきなり理不尽なこと言ってんじゃねぇよ!」


などの怒声が王様らしき人に飛んでいく。


「黙れぃ!!!」


『ッ!』


王様の鋭い、しかし重みのある一声で簡単にその場の音を消してしまった。

そして王様は私達に残酷な言葉を告げた。


「選んでもらうものは実に簡単な二択だ。我に従い生きるか、死ぬか。()()()()()選ぶがよい、勇者達よ。」

もう期間は書きませんが、なるべく早くあげます!

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