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一章 9話-α

一応3人称です。違和感とかあればどんどん言ってください。

リンがギルドを後にすると、辺りはやがてガヤガヤと騒がしくなっていく。

理由はもちろん——


「一体なんだったんだ、ありゃあ…」

「『ゼリー』を素手で掴んでいたぞ……」

「いや、『ゼリー』じゃなくてスライムの『破片』とか言っていたぞ…?」


リンの行動はその場にいた冒険者、受付嬢、他のギルド職員の常識を揺るがす行動だった。


リン本人は自分がそんな大層なことをしでかしていたなどとは夢にも思っていなかった。


「アーリィ、ちょぉっと聞いてもいい?」


ふと呼ばれたアーリィは大変困った表情でラファを見る。


「……言いたいことはわかるけど、残念ながら私もわからないわ」

「え? そうなの?」

「ええ。むしろ私がリンに問いただしたいくらいだわ」


そう、アーリィは何も知らなかった。知っているのはリンが()()()()()()レアな技能(スキル)を持っているということだけだ。


大抵多くのスキルは戦闘系で、武器を使った戦技や己の肉体に施す闘技などがある。

そして戦闘系よりは数が少ないが生産系と恒常系がある。生産系は主に物つくりに役立つスキルで、恒常系は普段から発動している長所といったところだろうか。例えるならば、〈耳がいい〉や、〈目がいい〉、〈足が速い〉などだ。

これらが組み合わさったスキルが主に希少なスキルだといわれる。


先程のリンの行動で見せたスキルは戦闘系にあたる『空間魔法』によく似ていた。更に言えばリンの功績であるスライム大量討伐はどんな初心者でも、まずほぼ不可能であり、ベテランでもそれだけの数をこなすのは難しいと言われている。


それを踏まえてリンの持つスキルを推測すると、何らかの戦闘系スキルの戦技と、闘技もしくは恒常系スキルの腕力上昇辺りだろうか。

それらを踏まえて考え、更にステ玉の輝き具合も合わせると、かなり特殊で強力なスキルを持っていると推察できる。


そこまで考えて、アーリィは自然とため息を漏らした。


「まぁ考えてもしょうがないし、リンの口から聞けるのを待つわ」

「え、でもアーリィ気にならないの?」

「それは気になるけどね…」

「だったら…」

「こ〜ら、受付嬢が余計な詮索しちゃダメよ?」


ラファの言葉を遮ってアーリィは言った。


「『冒険者の秘密を詮索するのは禁止』。それがギルドのルールでしょ?」

「あ……」


アーリィが周りにも響くような態とらしい大きな声でラファに注意する。

ラファもそれを思い出したのか小さくなって顔を赤くしている。

周囲の冒険者もどことなく気まずそうにしていた。


「そうだったわね、ごめんねアーリィ。私ったらつい気になっちゃって…」

「しょうがないわよ、実際私だって気になってるんだし。でもルールを守らなければ余計な諍いが起こるわけだしね」

「そうよね、流石《白銀の風》のリーダーね、私よりもしっかりしちゃって」

「ふふっ、まぁ私がしっかりしないとメンバーにも示しがつかないからね」


そう言ってラファとアーリィはお互いに笑いあった。



「さて、じゃあそろそろいくわね」

「うん、分かったわ。明日はどうするの?」

「うーん、今のところはまたリンを連れて狩りに行こうかと思ってるけど…」

「けど?」

「リンがスライムくらいなら難なく倒せるみたいだから、リンを連れて王都に行ってみようかと思っているの」

「分かったわ、じゃあ気をつけて」

「ええ、ラファも男共に気をつけなさいよ」


そう言って意味ありげに辺りを見渡す。

サッと男どもの視線が何事もなかったかのようにそらされる。


「? 男共ってどういう意味?」


やはり当の本人は分かっていないようだ。それだけ容姿が整っていて男共の興味をひかないわけないだろうに。


「ま、その調子なら大丈夫かしらね」

「え、え? アーリィどういうこと?」


アーリィの言ってる言葉が理解できないラファはアーリィに説明を求めるが、アーリィは華麗にスルーした。


「じゃあね、ラファ。また明日」

「あ、ちょっと待ってよアーリィ!」


アーリィはラファの言葉を背中に受けながらギルドを後にしたのだった。




女同士の会話に花を咲かせたことも相まって、辺りはすでに夜の帳が落ちていた。

暗い夜道を一人歩く。ラファにはああ言ったがやはりリンのスキルはかなり気になる。


「やっぱり聞いてみようかしら…。………いえ、やめておきましょう」


軽い葛藤が心に生まれていたが、何とか意識して強引に揉み消した。

そんな頃いつのまにか見知った建物が視界に入る。遅くなったことをなんて詫びようか考えながら扉を開けようとして気付く。


「なんだか騒がしいわね…?」


怪訝に思いながらもドアノブを回す。


「わっ、お兄ちゃんそっちに行ったよ!」

「よしっ、ここだっ! …くそ、逃した!」

「きゃっ!」

「おわっ、なんつうところに入り込んでんだ、テメェ!

「あっ、やっ、お兄ちゃんとってぇ!」

「えぇ、いやそんなこと言われても……、て、おっ、わぁぁ!?」


ドシーン


ガチャッ


「ただい——」


「いつつ……。…おぁっ!? 大丈夫かリラ!?」

「きゅ〜…」

「ちょ、リラ起きて!」

「リン、なぁにやってるのかしら…?」


ゆらりと開けた扉から身体を滑り込ませながら静かに問う。


「いや何って……ッ!? ちょ、アーリィこれは不可抗力ってやつで!」


漸くリンは自分の手がどこに置いてあるのか気が付いた。しかし時すでに遅し。

「いいから歯を食いしばりなさいッ!」


言うなり素晴らしい速度で拳を大きく振りかぶって迫る。


「ちょ、頼む説明させぶべらッ!!」


アーリィの渾身の一撃で激しく吹っ飛ぶ。

薄れゆく意識の中、震える口でリンはこう言った。


「まさかお約束展開がグーだなん、て……ガクッ」


と。

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