プロローグ
この作品は何度も何度も転生する作品です。
書き直せば書き直すほどクオリティは上がって言っていると思いますので許容できる方、是非読んで感想をくだされば、有り難いです。
キーン、コーン、カーン…
「っと、今日はここまでだな、各自この部分を予習しておくように。来週小テストするからなー」
『えー!?』
「先生そりゃないっすよー!」
「そうですよ先生あんまりです!」
「ハイハイ、まぁ頑張ってくれー。じゃあ日直、号令を」
「はぁーい、起立ー、礼」
『ありがとうございましたー』
漸くかったるい数学の授業が終わった。クラスメイトのみんなは1学期最後の授業が終わったある意味の達成感から思い思いに羽を伸ばしている。
まぁ大体はすぐさま仲のいい友達と少人数のグループを作り、お喋りを始めるんだが。こんな風に。
「おい燐〜、やぁっと終わったなぁ〜」
「おう、本当にな」
「これでようやく夏休みかと思うと、テンション上がるよなぁ!」
「まぁな! どうせなら夏休みでどっか行かないか?」
「お、いいねどこ行く?」
俺は少し悩んで思いついたことを口にする。
「ん〜、やっぱ王道にプールとか?」
「げぇ、流石に男二人でプールはないだろ」
「そんな反応すんなよ、地味に傷つくぞ……、でもまぁたしかに男二人でプールはなぁ……」
「だろ!? だからさ、誰か女子誘ってみねぇ!? あ、ほら朱音とかどうよ?」
ニヤニヤしながら時也が女子の名前を口にする。
「バッ! いや、アイツはどうせ誘ってもこねぇよ!」
「いやいや分からんよ? もしかしたらオーケーしてくれるかもよ〜?」
「いやいや無いって! 絶対無いって! 絶対無いだろ……」
「いやお前自分で言って凹むくらいならもう少し希望持てよ……」
ここまでのやりとりで分かると思うが話に出て来た朱音というのは俺が密かに片思いしている女子の名前だ。
親友の時也だけは俺が朱音のことが好きなのを知っているのでよくこうやってからかってくる。だからその度に俺はこう言った行動に出るのだ。
「よおし、そこまで言うなら来栖誘ってくるわ、ちょっと待ってろ」
「ごめんなさい、俺が悪かったです、だから勘弁!」
「…………ハハッ」
「…………ヘヘッ」
お互いにニヤリと笑う。
そう、ここまでが俺たちのテンプレとも言うべき日常だ。毎日毎日おんなじことをやっては同じことで毎回笑う。それが俺にとってはたまらなく楽しい時間だった。
だが今日そのテンプレは崩れた。
「え、なになに、志摩くん私のこと呼んだ?」
「う!? あっ、梵さんっ!?」
「深山くん、私の名前呼んだでしょ?」
「へぁっ!? 来栖さん! 」
意中の相手×2がこちらに歩いてくる。
「なんの話してたの、志摩くん!」
「うん? いや、あの、うーん」
ちらっと時也がこちらに視線を投げる。俺はそれにコクリと頷き返事をする。
「ゴホンッ! え、えーと梵さん、よかったらなんだけど夏休み一緒にプール行かない?」
「え、プール!? そ、それってもしかして志摩くんと一緒にみ、みみみ深山くんもくるの!?」
「ああ、そうだよ? な、燐」
「う、おおおぉぉおう!」
いかん、やっぱり梵さんが目の前にいるとドキドキしてうまく言葉が出てこない。ちくしょう、他の女子なら全然大丈夫なんだけどなぁ!
「へ、へぇ〜そ、そっかぁ〜み、深山君もくるのかぁ〜、ふぅ〜ん!?」
長髪の長い髪を指に絡めたりして弄りながら実に挙動不審な挙動をしている。
「ど、どうしよっかなぁ〜!!」
「行くわ」
「へ?」
来栖さんがスッと梵さんの腕を取りながらキッパリとそう言った。
間抜けな声をあげたのは梵さんだ。
(ちょちょちょちょっと! 沙耶ぁ!)
(何? ちょうどいいでしょ? これを期に早くくっつきなさいよ)
(え、えええええええええええ!!? そんなの無理だってぇ!)
なんだか梵さんの反応がとても面白いことになっている。焦った顔をしたかと思えば絶望した顔をしたと思ったら今は顔の目の前で手を大げさにブンブンしながら顔を真っ赤にしている。
(安心しなさいよ、私も付いて行ってサポートしてあげるから)
(で、でもでもでもぉ! 深山君の水着姿なんて見たら私気絶しちゃうよぉ!!)
(……ハァ。そんなの深山くんが必ず支えてくれるだろうから気にしなくていいのに)
(え、深山くんが……?)
お、なんだろう、内緒話をしていた梵さんがこちらを向いた。
(だめぇ!! だめだめだめ!! そんなことになったら私幸せすぎて死んじゃう!)
(え、じゃあ死んだら? 何度でも)
(も、もうぅ! 沙ぁ耶ぁ!)
なんだろう、急に涙目になって来栖さんを叩き始めたぞ。でも何と言うか、ポカポカッと言う擬音の似合うような攻撃だな、可愛い。
「おーいお二人さんどうしたの? 結局来るの?」
「へっ!? い、やややっぱり今回は——」
あーやっぱりダメか。
「行くわ、必ず」
「沙耶ぁ!?」
「い、いや無理しなくてもいいよ。機会があったらまた誘うか——」
「大丈夫、行くわ」
「でも、梵さん泣くほど嫌みたいだし、本当、大丈夫だよ」
……あ〜、でもそっかぁ、泣くほど俺と行くの嫌なのか。もう学校これる気しないんだけど……。
俺も少し、そうほんの少しだけ泣きたくなったので席を立つ。
「あ、おい燐どこ行くんだよ?」
「ワリィ、ちょっとトイレ行って来るわ!」
「おいSHRもう始まるぞ!」
「すぐ戻るし大丈夫!」
そう言って俺は駆け足気味に教室から出ようとした。
その時。
『〜〜〜〜〜〜〜〜』
教室を出かけた俺の足が止まる。
何か声が聞こえる。これは、なんだ? 歌か? いや違うなんだか念仏のように聞こえる。
だがそれは俺が今まで聞いたことのない言葉だった。喋っている内容が全く理解できない。英語とも中国語とも完全に似て非なる言語だ。
「これは一体?」
周りにも聞こえているのだろう。皆驚きが顔に浮き彫りになっている。それは時也や梵さん、来栖さんも同様だ。
俺は不安げな顔を浮かべる梵さん達の元へ戻ろうとするが。
「なッ、身体が、動かねぇ!?」
何か見えない力で抑えられているかのように俺の身体は微動だにしない。
そして不思議な出来事はまだ続く。聞こえる言葉が段々と大きくなってきているのだ。それに伴い教室の床に落書きのようなものが広がって行く。
ん? いや違うこれは!
「魔法、陣?」
落書きだったと思っていたものは最初はただの走り書きのような何かだったが、言葉が大きくなるにつれその形の正体を現していた。
内側から小さな円、三角また円、と繰り返し最後に大きな円を描いたところでそれは起こる。
ドゴンッ! ボゴォッ!
最初の音で周りの壁がなくなった。次の音で天井が崩れた!
「キャアア!!」
「っ!」
「うわっ!!」
梵さん達が悲鳴をあげつつ、しゃがみこむ。
しかし、俺は、俺の身体はそんな咄嗟の行動すら起こせなかった。
梵さん達がこちらを見ている。
「燐! 危ねぇ足場が!」
「きゃああ! 深山くん!!」
足場、っくそ! いつのまにか崩れかけになってるじゃねぇか!!
だが——!
「身体がっ、うごかねぇんだ!」
「ハァ!? ちょっと待ってろ!」
そう言って時也がこちらに来ようとするが。
「やめろ! 危ねぇ! お前まで落ちたらシャレになんねぇ!」
「は? 落ちる? 何言ってんだ!?」
「周り見えてねぇのか!? 見てみろ!」
そう言って何とか目線だけで方向を促す。
「何だよ、これ……」
「見たか? 下もおんなじ景色だ。今この教室は浮いてるんだよ」
「浮いてる? ってことはお前!?」
「そう言うことだ」
友を納得させた瞬間だった。
ビシィッ!
俺のいる足元に一際大きな亀裂が走る。
……ああ、なるほど、そう言うことか。
「りぃぃぃん!!!」
「ああ、こりゃどうにもなんねぇわ」
ビシ、ビシ、バキィッ!
そんな音が鳴った瞬間、俺の身体は重力に逆らうことなく真っ逆さまに落ちて行く。
周りの景色は変わっているのか変わっていないのか。
ただ視線を上へと向けると先程までいた円型の教室の床が段々と離れていっていることから落ちているのだと実感した。
「深山くーーーーーーーーん!!!」
最後に梵さんの叫びを聞いて俺は目を閉じた。