--.登場人物の設定*「青春ロスト」まとめ
※前回までで青春ロスト、ようやく終了!
ここまでの「まとめ」として、登場人物の作中でのプロフィールと補足説明をつくってみました。
当然のように最終部までのネタバレがありますのでご注意ください!
ちなみに作中のあとがきにも似たような紹介を散らしてきましたが、あちらは読み進めながらの情報開示(その先のネタバレなし)。
そしてこっちのまとめは「総まとめ」! 中身は人物評の後半がほとんど違うので、見比べてみるのも面白いかもしれません。
【登場人物】
・谷川 ユキ
この物語の語り手。
周囲からの呼び名は「谷川さん」「ユキ(谷川)先輩」「ゆっきー先輩」等。
お話の当時は高校生で、元より1個上。
己のアイデンティティに悩む「客観性」と「主体性」に欠けた少女。
周りからは恋多き女だと思われており、自分でもそうだと思っている。演劇部に所属しているのは、「何者にもなれない自分」にコンプレックスがあるから。
・犬飼 元
この物語の聞き手――そして、視点の持ち主。
周囲からの呼び名は「元くん」、「犬飼」等。
ユキと同じくお話の最中は高校生。ユキより1個下。
本編で大暴れしてる「イヌカイさん」の若かりし頃の姿であり、体格は今よりもスレンダーで少し小さい。
(※マッチョ化は第1部で時永がちらっと言っていたように、大学でラグビー部に入っていたのが原因なのだ)
普段は気怠げでローテンションだが、実はかなりのいたずら好き。
周囲を軽いノリで引っ掻き回しているように思えるが、実は色々やった結果の反応を観察するのが楽しいだけ。バスケ部では少し人が変わる。
・佐田 秀彦
周囲からの呼び名は「佐田」「佐田くん」「秀ちゃん」等。
(基本は名字で呼ばれることが多いようだが、少数派であるユキの言葉で話が進むので地の文では秀ちゃん呼びである)
元の同級生で親友ポジション。おどけた三枚目を演じているが、その中身は誰よりも真面目に周囲を観察しており、一度懐に入れたもの・気に入った何かに対する拘りは人一倍強い。特にタコとか。
・津田 美潮
周囲からの呼び名は「津田さん」「津田先輩」等。
名字呼びが多いようだが、クラスメイトには地味にニックネーム呼びをされることもあるらしい女王様系ツンツン女子。カズナミからは嫉妬深い女性という意味で「般若」とも。
ユキの同級生(クラスは違う)。有名女優の2世。自他共に厳しい性格で、(自分を含めた)他人を追い詰めやすい。
歯に衣着せぬ物言いをするが、それは彼女なりに「おべんちゃらは言わない(自分が言われたらプライドがズタズタになるから)」という信念の裏返し。
ユキに対して優しかった時期があるのは、
「母親に似ている節を見出したから(憧憬)」
+「どうあがいても追いつかれないほど彼女がヘタだったから(蔑み)」
+「それでも本気に見えたから(敬意)」
という複雑なバランスの上に成り立っていた感情。
その真ん中にあった「ヘタだったから(蔑み)」が文化祭の急成長で取っ払われた結果があの惨事。彼女にとっては自分より高い実力を持つ人間は敵でしかないのだ。
彼女がかつてユキに持っていたそれを、「友情」と呼べるか否かで言えば……呼べるのだろう。ロストしたけど。
・柏原先生
呼び名は「柏原先生」、「柏原(呼び捨て)」等。
演劇部顧問で選民思想の強い教師。モットーは「天才は勝手に育ち、凡才は育てても追いつかない・敵わない」。
自分がかつて「天才」に敵わなかった――そんな経験を軸に世の中を渡るしかなかった人。負けたことで奮起するのではなく、「負けたことが当然であったのだ」と認識をすり替え、宗教的に信じることで己の歩いてきた道を正当化している為、その価値観を他人に押し付けることでしか息ができない。
己を天才に劣る凡才だと定めながら「天才を見出し、天才の躍進を阻む凡才から守り通す」のが己の使命だと思い込む傍迷惑な夢想家なので、当然己の理想に沿う形の天才しか目に入らず、他は凡才と断じて機械的に潰すか、存在を無視していく羽目になる。
ユキのことを「たまたまいい評価を出しただけの凡才」と評するのは、選民思想が強すぎて「人間が成長する」ということを信じていないから。
彼の見る狭い世界には生まれついての天才と凡才しか存在せず、彼が教師になったのも「まだこの世に出ていない」天才を出迎え保護する為であり、決して教育に興味があったわけではない。
この時期に感じた「ああいう大人にはなりたくない」=「人の可能性や成長を信じて喜びを分かち合える人間になりたい」という思いが現在、本編の「イヌカイさん」を形作っている重要なピースの一つとなった。それが第3部での「(後進・後輩である)橘の頑張りを無碍にしたくない」という決断、結託に繋がっていくのは、きっと想像に難くない。
・山内先生
呼び名は「山内先生」「山内」「拓也」等。
バスケ部顧問で元の恩師。
一見「ナメられている」ようにも感じるほどに生徒からの距離感が近く、まるでチームメイトの一員のように扱われる先生。
練習試合の最中にシュートを外すとお金が発生する罰金ジュース制度をしいて「失敗した人間を責めない」ような空気をつくったり、部の上下関係を取っ払って「丁寧語・敬語禁止」にしたりとかなり特殊な顧問だったようだが、それが本編の「イヌカイさん」の基盤になっているのは確かである。
余談だがこの罰金ジュース制度、イヌカイも聖山学園で引き継ぐように採用しており、練習試合や大会でたまたま出身校と当たった際には山内と一緒にこっそり自販機にジュースを買いに行く姿が見られたらしい。
この2人、ジュース買いながらどんな会話をするんだろう……。
・落合
高校生。元の1個下でユキの2個下の学年。
生粋の「陽キャ」なムードメーカーでかなりのお調子者。ただし「ぺろぺろしたい」発言など若干変態の匂いがする……!?
入学当初からユキに淡い片思いをしていたが、元との付き合いもあり表に出さないようにしていた。が、モロバレだったので元に呼び出され「そんなに好きならコクってこい」という流れに。(彼氏がいうか!?)
バスケ部で敬語禁止令があることもあり、元とは先輩後輩の仲というよりは「対等のチームメイト」という意識が強く友人感覚。一応部の外では体裁を考え扱いをチェンジするも、だんだん地がでてくるとバスケ部の対等モードになってしまうジレンマがある。
(体育会系は上下関係に厳しい環境が多いので、元も最初は戸惑い気味だったが、慣れていくうちに「あ、悪くないな……こういうのありなのか」と逆に学んだ関係性だった模様)
イヌカイとイツキが年齢差を超えてタメ口の凸凹コンビになっているのはどうもこの時の経験が強いらしく、イツキによれば「タメにしようって言い出したのはあっち」とのこと。
・土方
高校生。映画研究部所属で演劇部有志。
元と佐田のクラスメイトでユキの1個下である。
家族に警察官が多く当人もそれに沿うつもり満々なせいか、イタズラ・おふざけ好きの2人よりは生真面目で大人しい気質をしており、時折ストッパーのような役割を果たす。
絵や工作から始まり大道具、小道具作りも器用にこなせる人間だが、それはあくまで趣味の範囲と割り切っており、当人は「剣道のほうが得意」とケロッとした顔で言い切るさっぱりした性格。
今後本編での出番はあるのか、いや、ない。
(スピンオフ等で絶対絡む程度にはTwitterのショートショートで出してる設定はあります。聖山学園の失踪事件を担当してる警察官が実は……とか)
・犬飼 カズナミ
呼び名は「兄貴」、「お兄さん」、「カズナミ先輩」等。
ユキの2個上の先輩。元の3個上の兄。
土方の先輩にあたる小道具・大道具担当。もともとは美術部。
「パッとしない兄」と「キレッキレの弟」という扱いを両親含めた周囲から受けるせいでちょっと屈折しており、弟への扱いは他と比べて超ドライ。スコーン!と秀でた活躍をしてはよく目立つ弟が羨ましくて、弟が苦手としている絵や習字、モノマネ芸を黙々と極めるもなかなか相手にされていない。
(ちなみに元は純粋にそれを「凄いもの」と尊敬しているが、彼としては元凶の弟に言われたところでモヤるかムカつくかのいずれかである……)
弟に対する扱いだけは悪いが、コミュニケーション能力に限っては本来抜群に高い性質で、弟以外の年下に対する接し方やフォローはピカイチ。年上からのウケもよく、比較対象がいなければ実は完璧人間の類。
現在、本編中での「イヌカイさん」と振る舞いだったりノリが似ているのは、そもそもが末っ子気質だった彼には年下の子相手の免疫がなく(生徒相手のそれとはまた感覚が違うらしい)、「良き兄貴分であろう」とむりやり背伸びしたらたまたま自分の兄のイメージが合致したので、実はあえて真似をしている部分もあったりするから。
・津田 実記
美潮の母。「人の目を惹く」という才能の持ち主で、演劇業界では天然の天才だと評される人物。表面上は輝いて見えるが、それは己に自信がないからこそ必死に積み上げてきた「実力」も含めてのものなので、当人は「過大評価」だと思っている。
(ただし美潮からすると皮肉にしか聞こえない発言である)
・植苗 イツキ
小学生。ユキからの呼び名はイッちゃん。
ユキのバイト先のラーメン屋の孫であり、「オレのユキねえちゃんをとるな」という一心で見知らぬ高校生にパンチアンドキックをかました。ちなみにユキのことは「いつも遊んでくれる優しいねえちゃん」兼ゲーム友達としてみており、not 恋愛感情。
・時永 誠
ユキと同学年で、彼女の進学先での友人。
ユキからしてみると次の片思い先だが、見ていたら分かる通り「片思い」のままで終わった模様。
……現代の「谷川ユキ」に対して反応が冷たいのはもとからではなく、本来は友好的な間柄。
イヌカイの記憶から作られた彼女がミコトやクロノスと同じ「世界側」の人間だと分かっているから、あえて線を引いているといった感じ。――自分がこれから滅ぼそうとしている「ミコトの世界」の人間。それと好き好んで話し込んだり馴れ合ったりするほど、彼は強い人間になれない。
……なれるわけがないのだ。
――以上です! 長い外伝編ですが、これにてちょっぴりインターバル。
お疲れさまでした。
といっても第4部は前半戦の山場なので下準備があり、本編にはまだまだ戻れないのですが……
次は、今までもったいぶられていたあの話の予定です。




