9.その人見てるか見てないか
「ハイ、もう少しデス!」
暗くなってきた空に、赤く焼ける地平線。
相変わらず、リオは底抜けに明るい声だ。イツキはちらりと前方を見た。……町の灯りが大きくなってきたのは分かっていたけれど、どうやら目と鼻の先に来たらしい。
「お二方は体力的にどーでショ。ダイジョーブデス?」
「ええ……オレはまぁ」
ちらりと横を見た。まだ平気そうな顔をしているが……どこか妙だ。
思わず立ち止まる。
後ろから見ると、足の運びがはやい。……ん? つまり、早いということは少し小股だ。
口をぎゅっとしめて歩くその姿に、どことなく違和感がある。
――これ、どっかでみた。
「イツキ?」
「…………」
「どうかしたの、いくよ?」
そう。あれは具体的にいうと、時永邸で。
夕方、そろそろ帰るというときに……
「ま、なんかあったら小生の肩を叩いてくだサ~イ」
「…………。」
……思わず呆れ笑いをした。訝しげにこちらをチラチラと見るミコトだけど、その表情をしたいのはこちらだ。やはりどこか余裕の無い感じで早歩き。
うん、覚えがある。そもそも、自分に置き換えたらそういう生理現象が暫くなかったので、こちらから指摘をしたことはなかったが。
「……ミコト」
「……なに?」
確か、イヌカイにはちょこちょこ指摘されていたっけ。
――『それ、健康に悪いぞ。ミコト』
「オレが言うのもなんだけど……トイレは大丈夫?」
「………」
ミコトはほんのり笑ったまま立ち止まり、イツキの方を見た。
……図星です、みたいな顔をしている。
「いや、だったら言えってば!?」
「自分1人の問題だし、もう少しなら大丈夫かなって」
イツキは息を吐く。――他人がペラペラ喋ってるからって気をつかうなよ。
「お喋りなんていつ中断したっていいんだから。次からこっちだって遠慮しちゃうだろ。暫く休憩しようって言わなかったオレも悪いけどさ」
「あ、イツキもトイレって行……っ、行ってた!?」
ミコトが二度見する。
――いや、何でいまさら愕然とした声を上げてんのさ!?
イツキは呆れ百パーセントで声を上げた。挙手つきだ。
「リオさーん!」
――そもそも劇場のコンサートホールで仮設トイレついてったの誰だと思ってんの! オレだよ!
そう心の中で毒づきながら、前の方を歩き続けるリオに声をかける。
……考え事をしているのか、名前をハッキリ呼んでも耳には入っていないらしい。
「リ・オ・さ・んっ!」
足が止まらず、どんどん遠ざかっていく。
「あー……。ミコト、ちょっと待ってて」
「でも」
「リオさん!」
イツキは走り出した。――止まる気配が無い!
こうなれば力づくだとつるを伸ばした瞬間。
ふと、違和感に気付いた。
「……え」
――……音がない。
「……。なんデスか?」
するっと音がした。つるが掴まれている。視界に入った瞬間に確保されたようだ。
少し驚いた表情なので、彼の不意をついたのは本当だろう。……不意?
イツキは思わずその表情を二度見した。
――「どう見ても子供な相手に、4対2デスか?」
初対面時のそれを思い出す。
不敵な笑み。へらへら笑って、それでも射貫くような黒い目。
あんな……武装した4人を相手に、涼しい顔でボコボコにする人間の、不意?
「呼んでマシタか?」
「えっと、ばっちり呼んでましたよ」
こっちはこっちで、妙だ。
「……あー、そっかァ……ウン。失礼しまシタ」
その表情は少しだけ、本気で反省したように思えた。
――気を、抜いた? いや……反応できなかった?
そして数メートルほど後ろのミコトの様子を見、合点が言ったように。
「あ、ハイ。ソレで呼んだんデスね?」
……観察眼が鋭いのに今更ながら気づく。ミコトの姿勢や歩き方で判断したのだ。
その点、やっぱりただものではないのだけれど……。
「言いづらいデスかー。まー異性デスからね。んっとね、離れるならあの辺りくらいまで?」
リオが苦笑いしつつ、道から外れた塚の辺りを指で示す。
「この辺、トイレなんて気のキいた建造物はナイんで、その辺でネー」
「え、ええ?」
「見ないから早いトコすましちゃえよ。……草の背とか、高いだろ」
イツキの言葉にはじかれたように、いそいそとミコトは道から離れた。
――なんで早めに言わないかなあ。
イツキは息を吐く。
――屋外だとこういうこともあるだろうし、フツーに遠慮しすぎだってば。それともイヌカイにならまだ言えたかな、あの子。年齢近いと言えないとかある? もしかして。
「……やっぱり我慢してたんじゃん」
「いよっ専門家!」
「ミコトオンリーで発揮される『尿意の専門家』スキルとか嫌すぎるんだけど」
「ぷははは! ドコのスキルを伸ばしたらたどり着ける境地なんデス?」
ふざけたような言葉に思わずつるがびしっと伸びた。
「お、ゲーム風にいうと実績解除! 『ブッ叩くぞこのヤロー!』のジェスチャーが分かりやすくなってきまシタね、嬉しいデス!」
「何で嬉しがってんの!?」
――怒りの表れなのだが!?
「小生、昨今には珍しく、叩かれて伸びるタイプなので!」
「何が伸びんのそれは!?」
「小生のやる気が!」
「クソみたいなやる気スイッチ!!」
スイッチをマゾヒズム方向に延ばさないでもらいたい。
「……はあ、でも」
「なんデス?」
治安というか、安全策的にもあまりよろしくないし、衛生的にもよくはない。
「ああいう女の子が、トイレのない環境でその辺にするとか。どこのサバイバル訓練だよ」
「その辺は仕方ないデスねー、この世界デスから?」
イツキは腕をつるに変えたままだ。
そのまま、リオをじっと見た。
「神界の人間として釈明しておくとデスね! 宿とか店にはちゃんとあるんデスよ? ただ、町の外はもう湿原だったり山だったりするでショ? 結局、町の外ってのは――ほぼ自然環境と同じデス」
他の人にあるものがない。当たり前に聞こえているノイズが聞こえない。
それは、もしかすると……。
「人間は変わらず多いデスが、別に食物連鎖の頂点でもナイ。上には神がいる! だから結局、驕り昂ったりはしない、したくてもできまっセン! ……小生たちは結局、自然を前にすれば獣と同じなのデス!」
「……そう」
「そもそもネー、町のそれもボットン式デスから、似たよーなモンでショ? 文化的にはまだまだ途上デスよ。神界」
「……」
だんだん呆れ笑いのようになってきたイツキの視線を見て、リオは首をすくめた。
「……ま、ごちゃごちゃ言ったトコで……キミ、ごまかされたりしまセンよね。イツキクン」
「そうかな」
彼の表情はおどけたように、けれど。
目を射抜く。
「ボケっとしてるようで――頭キレるでしょ。実は?」
「オレ、どれかというと鈍い方だと思うけど?」
「ニブイ――あ、時永の話デス?」
さらりと彼は口を開く。
まるでそう――その人間を。接したことのない時永という男を、本当に知っているかのように。
「君を散々、コケにした方の」
イツキは頷く。
――「……イヌカイさん」
――「何だ?」
――「“正しい”って、なんだと思う?」
数刻前のミコトの問いに、イヌカイの質問返し。
あれを聞いていて、ふと気づいた。
「正しい」は、「正しい」だ。少なくとも今までの認識だとそうだった。世の中には善い行いと悪い行いがあって、白黒ハッキリつけられて。だから、善い行いをするであろうひとを追いかけたのだと思う。
――「イツキ、私も知らないことだいたい知ってるよね」
苦笑いではあったのだけど、尊敬のまなざし。
さっきのそれは、時永の育ちに対して言われたのだけれど。……これ、ミコトには時永関連の話題に限らず、よく言われるのだ。
好奇心から首を突っ込んだ形跡。少しでも、憧れの誰かに近づきたくてあがいた、その痕跡。
けれどあれは、イツキ自身からすれば頭がいいのではない。
妙に偏って知っていただけだ。
――「褒めてほしかったのかもしれない」
ミコトによる時永評を笑えない。
一切だ。そこにある、子供じみた言い訳を笑えない。
――たぶん、分かってほしかった。
――「存在を認めて欲しくて。否定してほしくなくて」
認めてほしい。否定しないでほしい。
イツキは大きく息を吐く。
――あの時永を、盲目的に信頼したのは。結局オレ自身。
……褒めてもらえたら、気分が良い。
普段、誰もこちらを見ていないから。
学校でだって、クラスの中心というキャラではない。
家族の中心も……妹に取られてだいぶ経つ。
けれど彼は。
――「相変わらず君は熱心だね。……今日も寝ずに聞いてくれたみたいだけど」
口から出まかせであったとしても。
ただのおためごかしであったとしても。
「好きなものにだけ打ち込むな」。
「好き嫌いをせずに全部やれ」。
頼りないと信頼されない。誰からも甘い顔をされない。しっかりしろと言われ続ける中で、彼だけは褒めてくれたのだ。
――「人ってのはたぶんな、誰しも『欲しいもの』があって……そのために生きていくようなところがあって」
褒められれば――目の前の、羨ましい【誰か】に並べたような。
そんな気がして、走り続けたのだ。
――「……生きてる充実感というか、充足感。【物事のやりがい】ってのは誰かに評価してもらって初めて生まれるところがあるもんでな」
あのイヌカイの言葉は、結局のところ一般論だ。時永の抱えていた「悪い部分」をちゃんと読み解けていたかなんて――今更、分かるわけもないのだけど。
少なくとも、イツキにとっては腑に落ちた。
――「何かが足りない。そう思いながら衝動のままに頑張って。たとえ何を言われたとしても何も心が動かねえんだとしたら。……自分の心にだな。『暖簾に腕押し』ってのはしんどいもんだと思うぞ」
たぶん、自分の中に何かが足りなくて。認めてほしくて。誰かから否定された気分になるのが死ぬほど嫌で、とにかく噛みつくように反発して。
勝手に目の前のものを――自分とは違う崇高なものだと持ち上げて、勝手に汚らしいものだったと失望して。勝手に分かった気分になって。
それでも相手を深掘りはしなかった。
時永はミコトに。こちらは時永に。
同じくきっと――上っ面を見ていた。
「……オレはあんまり、他人をみるのが得意じゃない」
イツキはリオに向かってふと口を開いた。
「面倒を見るのがじゃなくて、人を見る目がきっとよくない」
リオは頷いた。――君の言いたいことは分かっている、とでもいうように。
「たぶんオレさ。自信もない。表面上というか……中身をみずに判断しがちな自覚はある」
「……そう。キミは、だからこそ」
そのリオの言葉がふいに、おどけた様子を消した。
「もう同じ轍は踏みたくなくて余計に【上っ面】を見る」
ハッとして向こうの顔を見た。心の中の声を読まれたようで。
「理にかなってるんデスよ」
「…………」
リオは首をすくめた。
「ソレでおっけーデス。……ってかね、今小生、上っ面と言いまシタが……ソレはソレで、ソコしかみてねーってワケでもねーのではないデスか?」
「……えっと」
「だってその分、キミは色々見てるでショ?」
リオは縁石のように突き出た、道端の岩に座り込んだ。
背の高い湿原の草から顔を出す、灰色の岩――イツキに対しても少し離れた岩をさした。
まあ座れ、と。
「騙される人ってのは、ひとを見て騙される。――中身を見て、そして行動を見て、それでも不安。そいつのことをもっと知りたい、掴みたいから騙されるんデス」
「…………」
イツキは警戒した表情のまま座り込んだ。
……リオは切れ者だ。少なくともそれは分かる。ただ、それを隠すような挙動をとるしあえて怪しいふるまいもすることがある。
「ひとをみて距離をとる。逆に踏み込む。ソレはどちらにしろ褒められてイイ所業デス。よき心がけデスよ。少なくとも相手を理解することを無意識にやめる、放棄する、そうして諦めているよりは。……人間ってのは理解しあえまセン。けど、ポーズは取れマス」
そういえば、くだんの時永も同じことを言っていた。
――「正直、仮定が多すぎて理解できているかすら分からない。……更にいえば、理解したところで、さっきみたいに『分かった』なんて気安く言ってはいけない」
ミコトの世界での時永は、他人の怒りがピンとこない。
その感覚器がそもそも、元からごっそりなくなっているように。
――「人の憤りっていうのはそういうものだ。システム的に分かってなくても、大事に扱うことはできる。扱おうとすることもね」
それでも彼は分かろうとしたし、行動予測をした。経験測だけで処理をした。
結果的に、寄り添うような行動をとった。
……分かろうともがくことはできる。手に届かなくても、手を伸ばし続けることはできる。
「…………」
不意にイツキは気づいた。
……それは以前の悪い時永も持っていた一面だ。
彼には他人の心が分からない。
ミコトに対する優しさも、馬越に対する気遣いも、なにひとつない。
それでも『持っているフリ』をすることはできた。意味が分からなくとも、その方が好都合だとは知っている。
――時にはその行為が人を救うと、幸せな心を持たせると。
だから表向きにはひどく無害な、優しい先生のフリをし続けたのだ。
きっと目の前にある上っ面だけをなぞって、都合のいいポーズをとりながら。
「ってゆーかね。手の中のそれが上っ面だっていうんなら、上っ面がみるみる拡大してるんデスよ、キミ。人の脳波でも拾ってマス? そのつる」
イツキはハッとした。……人の方につるを向けると聞こえる、微かな音。
勿論、小さすぎて最初は気づいていなかった。
けれど、リオを見て気付いたのだ。
――ない。イヌカイやミコト、メティス。ミコトの世界の時永や谷川、佐田にすらあったもの。あって当然だった低い音。
他の人物にはある音が、この男にだけはない。
明確に一つないというよりは、いくつかが足りない。
「考えてることまでは分かんないけど、たぶん」
「人間の姿に戻ってから聞こえてマスよね。人の緊張とか」
人の鼓動。脈拍。息の音。
……それらはどうにか正体が分かる。
個々には聞いたことがある。知識としては知っているからだ。
腹の音だってそうだろう。
それらを総合的に判断して、相手の様子をうかがう。
――勝てそうなら前へ。負けそうなら後ろへ。
それがミコトの世界を出る直前辺りからイツキの手口になりつつあった。
ただ……いつもの癖でそうやって『勝てるかどうか』。『不調かどうか』。それらを分析していくと、聴覚の向こうに一つだけ残るものがある。
聞きなれない音。低くて小さな雑音だ。
「……小生には分かりまセン」
「そりゃそうというか」
「違う」
苦笑いしたように彼はイツキの手を引いた。先ほどまで『植物のつる』だったものを、頭部に持ってくる。……イツキが先ほどまで何を聞いていたのか。
「え」
「……答えを言いまショーか。聴覚神経デス」
その情報を、補足するように。
「正確にいえば、『聴覚に反応している音』が聞こえていないんデスね。キミは。先程も言いまシタが頭の中の音デス。脳波でも聞いてんのかっつったでショ? 体内の電気信号がちいさな音を出すこともありマス。ソレが少し漏れていて、キミには人の健康状態が分かる。……機能していない箇所にも違和を覚える」
あまりにもすらすらと言うリオに、イツキは問いかけた。
「……何でそんな、断定を?」
「見てれば分かりマスよ。キミを」
ビクッとした。――普通に生きた18年と、時永邸での13年。
それらがなんとなく、全部見通されているようで。
「……耳が悪い分、こちらは目を使いマス。神様の傘下にいる情報屋らしく、目を二種類。そう。こちらはそもそも音の処理がほとんどできまセン。耳がフツーの人より悪くてネ」
「……元からですか?」
足りないものがようやく分かった。通常の人間は耳を使う。
無意識的だったとしても、常に。
「ン、元から。不自由だと思ったこたァないデスね。知らん間に損してたって気づきまセンから」
「…………」
「元々そーなら、損だとも思わねーんデスよ。人間ってのは」
リオは意地悪気な顔で言う。
「ただね、今のイツキクンの呼びかけが緊急のそれだったら別デス」
「あ……」
「お分かりデスね? そう、敵からの襲撃だったら、即お陀仏! だから肩を叩けって言ったんデスよ!」
軽くスルーしてしまったが、なるほどそういう意味か。
「いっやァ――――!! ヤッパこういうの、小生には向いてナイデスよ――――! 1人に慣れてるとフォロームズイというか、こう逆にフォロー欲しいっちゅーか……あっやってくれマス!? せんきゅーべりマッッッッ!」
「いや、まだ言ってなくない!?」
――勝手にフォロー役にされたが、そう言われるとむしろしたくない。いや、否応にでもやらねばならない気がするのだが。知ったからには。
「……耳が悪くて、今までどうやって仕事やってたんです?」
「さっきもいーまシタが目デス。音に頼ってる普通の人ってのは遠くに離れるにつれて、誰が何を言ってるのかがわからなくなってくると言うんデスが……マァ小生の場合、目がそっちの方面を向いている限りは大体判断つく、と。小生生まれてこの方、目だけに頼って生活してマスから視力も高いし」
「なるほどなぁ」
「両目6.5デス!」
「ってどこの狩猟民族!?」
突っ込みながらもイツキが納得したその時だった。
「い、イツキ~~~~~~っ!」
「っ!? どうしたミコt……げぶっ」
――ピキッ!
特徴的な金属音。ミコトの方を振り返ろうとすると、いきなり剣でぶっ叩かれた。
ミコトの世界から戻ってきた際に手に入れた、あの『意思を持つ儀礼剣』だ。
「OH……! だいじょーぶデッ……プァア――ァ!?」
――パキッ!
がつん、と頭がぶつかった。
どうやらリオもぶっ飛ばされたらしい。
「痛あああ――把握――! すいまセンミコトちゃん先にお尻履いていただけマスでショーか見ないので――!!」
「あぅああああああ!!」
ごつん! ……えっ、2人目?
――パキキキキッ!
「私も見ないのでこう、その、荒ぶる鈍器をどうにかしてもらえると非常にだな!!」
……待って。
「――あの、一瞬でなぜかゼロ距離になってらっしゃるリオさん?」
「イツキクン。小生今、物理的にキミのことしか目に入りまセンよ☆」
「気色悪! ……いや、アポロンの声しませんでした?」
明らかに聞きなれない声が挟まっていた上、衝撃がリオの次にもういっちょ!2連続だった!
「あー……声は分かりまセンが、ミコトちゃんの背後にいまシタね、変態デスか?」
「誤解するなよ、通りすがりだ!!」
がばっとリオの後ろに重なっていた影が起き上がった。
――あっ、本当にあの仮面だ。
…………。
えっ? アポロン?
押し倒されていたイツキは思いっきり顔を上げた。
「ええええ!! リオさんリオさん、後ろ! 通りすがりの王子ってか敵の親玉―!!」
「ヤッタァァァァ! 身包み剝ぎまショー!!」
「! 貴様らか鎧泥棒ぉぉぉ――!!!!」
……あまりにも騒がしい。
身支度を終えたミコトは、ようやく息を切らしながら声の方を振り返った。
「あの……なんか、すごいことになってる……?」