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1.親子取引


 虫も押し黙っているような、静かな夜更けだった。

 そんな中、音がする。


 ――がさり。


 バタバタバタ、と羽音がした。……飛んでゆくのは白い鳥。

 白い色を除けば鴉にも似ているが、ともかく梟でもない鳥がこんな夜更けに飛ぶことなどあるのだろうか。


 ――がさっ。


 暗いというより、もはや黒い。そんな森の中の一本道。

 獣道といっても過言ではない、荒れ果てた砂利の線に姿を現したのは――神界、とある大陸の東側に位置するコンセンテ国の王子、アポロンだ。顔の上半分を隠す鈍色の仮面に草の汁が飛ぶのも厭わず、白い服が茂みをかき分け進んでいく。

 そしてアポロンはもう1人、そこに来ていた黒い人影を認めるとため息をついた。


「……レト」

「久しぶりじゃないか、アポロン」


 返事をしたのは歳のいった女の声だった。双方、付き合いは長いようだが気を許すような仲ではないらしい。


「ふん」


 アポロンは胡散臭げに女……レトを見ると、懐からなにやらカードを取り出した。


「挨拶は置いておく。今朝、私の部屋にこれが置いてあった」


 ――【明日の早朝3時、城の南東の森中心部にて待っている。後をつけられないように注意せよ】


「……貴様だな?」

「そうさね」


 レトが同意し、アポロンはもう一度ため息をつく。


「何を目的に呼び出した?」

「久々にお前と取引をしようと思った、それだけの話さ」

「……取引だと?」


 頷いたレトはニヤリと笑う。


「近頃、地球からの来訪者をかぎまわっているそうだね?」

「……否定はしない」


 クロノスが出した声明は大陸全土に通達されている。

 曰く、()()()()()()()()()とのことだ。

 アポロンは息を吐く。

 ――全く、自分で呼んでおきながらいけしゃあしゃあと!


「お前も私の子だからね、大方未来でも見えた……そんなところじゃないのかい?」

「……もう俺はあんたの息子でもなんでもない」


 レトを前に、一瞬表れたその困った口調が素なのだろうか。普段の彼の『偉そうで硬い』キャラクターとは印象が随分違う。

 柔らかく、砕けていた。


「さて、聞こうじゃないかアポロン殿下」

「……」

「『別の世界の自分』を殺して、どうするつもりだい?」


 今更馴れ馴れしい実母、レトの問いにため息をつき、アポロンは仮面をようやくはずした。……その顔つきをみれば、さぞやイヌカイは驚くに違いない。

 なぜならまるで双子か兄弟と言って良いほど、彼の地の顔は彼に良く似ていたのだから。

 ――ただ、あえて指摘するならの話だが。彼より少し硬派で若い印象を受ける顔つきだという点か。


「……この世界で『イレギュラー』という言葉は大方、魂を分けた兄弟が異世界に存在しないもののことを指す」

「突然なんだい」

「『そっくりな誰か』がいないということは、力が2分の1になっていないということだ」


 へえ、とレトは面白げに先を促した。

 ふしくれだった指が手振りをする。――()()殿()()()()()()()()


「魂の兄弟が存在しないイレギュラーは、ある種、クロノスやメティスのような神より特殊で、強力な力を持つ……誰にも行動を止められない。予知されない。先回りをされない」


 神は自分勝手な生き物であるが、とにかくマイルールに則り考えて力を振るうことが多いのに対し、イレギュラーの場合は無意識が100パーセントだ。起こることもランダムで、当人にすら『力の発揮』の予測は難しい。


「その者がそこにいるだけで、息をして存在しているだけで、未来が確定しなくなる。それは世界を支配することを例外的に許された神の敵。……そうだったな? レト」


 神の天敵。そう言われる存在がイレギュラーだ。


「イレギュラーには地球に同じ魂を持つ者がいない。つまり逆説的に言えば、お前が同じ魂を持つ者を消せば、後天的にではあれどイレギュラーになれるかもしれない……そういうわけかい」

「……光よ[ihiryo(ィヒリョーカ)ka]」


 アポロンは指先に光を灯し、暗闇を見上げた。

 森に潜んでいた虫たちが光に寄せられて一斉に集まってくる。……()甲虫(かぶとむし)天牛(かみきりむし)黄金虫(こがねむし)……。動かなかった虫がいれば、使い魔で立ち聞きされていたところで判断ついたのだが、どうやらパッと見はいないようだ。


「……」

「それで、何をする?」


 “イレギュラーになって何をするのか”、そう問われて。


「未来を変える」


 さらりと彼は口を開いた。


「……」

「過去は致し方ない。そう結論づけてもいい。起きたことは変えられないからな」


 ジュースは果物に戻らないし、()()()()()()()()()()


「ただ、これからならば……変えることができるはずだ」

「はあ。……王子がイレギュラーになりたがるとは……それは建国以来の歴史に泥を塗る大事件だねぇ」


 フードを被って表情のわかりにくいレトは、照らされたところで結局分かりづらかった。


「別の時空に魂を持たない“イレギュラー”はこの大陸では弾圧されてしかるべき存在。……神は絶対だ。神は王より尊く畏るべき。それを汚すものは悪だ」


 ……そう、それが実母の持論だ。

 アポロンは思わず眉をひそめた。


「大臣たちはどんなにか、嘆くだろうね。……本来王位継承者であるはずのアルテミス姫がイレギュラーだからといってお前を呼んだはずが、その呼んだ人間すらイレギュラーになろうとしているなんて」

「ハッ、嘆くのは主に貴様だろうに。()()()()()()()()()()()の元締め……レト預言師(よげんし)よ」


 苦々しげにアポロンは言う。この女の食えない性格は知っていた。

 身内に見せる甘い顔も、外に見せる悪辣さも。


「聞いているぞ。つい最近全国各地でイレギュラー狩り運動が活発になっているらしいとな。しかも扇動したのは貴様だとか……」

「おや、情報元はあの白い鳥さんかい? お前も随分と色々なところにリムトーキを分散させているんだねぇ。成長したようで喜ばしいよ」


 そう言って笑うレト。

 しかし少々言い方が芝居めいていて、本当に彼女がそう思っているのかは定かではなかった。


「まぁそう……しらみ潰しにやっていくのも当たり前さ、それだけ不安要素が多いのだからね」

「だからと言って、それは自らのにきびを潰しまくるのと同じような行為だろう」

「しかし私は、それが国の為だと信じてやっているのだよ」


 疑わしきは罰せよ。――未だ何もしていなかったとしても、イレギュラーがあると聞けば殺す。それを守ろうと動く人間も殺す。全ての不確定事項を殺す。それがレトだ。


 腕を上げ、歳を経て。

 日に日に彼女の「防御行動」は苛烈さを増していく。


 彼女は純粋かつ残忍だ。予定通りにいかないことをひどく嫌う。

 要するに未来視の能力を持つ彼女は、己の目で見たものをきちんと守る――【この国の未来】を守る守護者なのだ。


「……大丈夫、報復に来ることも無いように後始末もきちんとやっているよ。王は安泰だ」

「それは仲間として活動している可能性もある一般市民共々、殺しているということだろう」


 アポロンは目を細めた。


「奴らだって一応は生きている。主義主張が違うだけの話だと父上はおっしゃられているのだ。それを殺すことを望んではいないぞ」

「お前が言える立場かい?」


 レトはアポロンの目を覗き込んだ。ようやくその目と、アポロンの視線がかち合う。


「……」


 よどんだ目だ。

 狂気じみた焦りの目。

 焦りを隠した口調からは想像もできないほど、孤独な目。


「……殆ど、それと同じことをお前はやろうとしているんじゃないかい?」


 ぴくり。

 ほんの少し、アポロンの口角が震えた。


「……貴様の言葉を借りるなら、『国を思って』だ」

「イレギュラーにはイレギュラー、そう思っているのかい? しかしね……お前の狙う来訪者は何も知らないよ?」

「…………。」


 レトはからかうように続ける。


「私の動きを悪くいうなら。……国を思って人を殺すことを批判するなら、お前のしようとしていることは何だい?」

「……しかし、後には引けん問題だ」


 アポロンは重く口を開いた。


「貴様にも見えているのではないのか? あの、凄惨な光景が」

「……」


 ……こうなってくると腹を探るのも億劫になってくる。

 アポロンは息をついた。


「ともかく、奴ら来訪者はクロノスと様々な意味で繋がっている。大方、付け狙われているようなものらしいが、こちらとしては迷惑千万だ。奴らはこの国に潜伏している……それを見て見ぬふりをすれば、恐らくクロノスを敵に回すことになるだろう」

「そうだねえ」

「下手にクロノスを刺激すれば、この国は破滅の一途を辿ることはもう既にわかりきっている。経験済というやつだ。奴は故郷を火の海に変えたと言われている存在だからな……」


 神とはそういうものだ。自然災害が人の形をしている。そんなたとえは言い得て妙だった。


「もしかするとクロノスは、奴を利用して何かをするつもりなのかもしれない。火力だけは十分にある。それがここ暫くの【犬飼 元】だ」


 夢で見た。――彼が大きな怪物と渡り合うのを。

 石の化け物を破壊するのを。

 でたらめに手足をぶん回したぐらいですら、もろく凹んで崩れるようだった【()()()()】に、【()()()()()()()()】。


「今は奴自身がその全貌を把握していないだけで。クロノスの企みを潰すためにも……そして奴に“下手に暴れられないためにも”、私の影である【犬飼 元】の存在は、塵のひとつも残さずに消し去っておかねばならんのだ」

「フフフ……」


 レトは何が面白いのか小さく笑い声を立てた。本気の笑い声ではないことは、アポロンには容易に察しが付く。……幼少期に聞いた声はもう少し、明るい音だったように思った。


「随分評価しているんだね、向こうの自分を」

「……読めん奴だ、あの男は。潰して置いて損は無い」


 格闘技を若干かじっただけのような素人の癖によくやる、とアポロンは心の奥底で思ったが言わないでおいた。……あまり褒めると殺すのが惜しくなってくるような気がする。情が移ってはかなわない。


「……そこで本題に入るよ」

「やれやれ、ようやくか」


 姿勢を正しつつ、アポロンはもう一度ため息をついた……今日だけでもう何回ついただろう。相変わらず実の母親相手にはやりにくい。

 レトはフードを深く被りなおすと真面目に切り出す。


「つい先ほど情報が入った。……所在不明だった来訪者の現在地だ」

「!」


 それを聞いたアポロンの動きは速かった。――右手を流れるように構え、腰を落とすと口を開く。


「[an]……ッ」


 風を操るレトを無力化するには、彼女が空に逃げるより先。地上にいる瞬間、足を撃ち抜いてとどめを刺さなければならない。

 しかし、次の瞬間には目の前にストップ……『待った』のジェスチャーがレトによって突きつけられた。


「……この間、出現時に末端を仕向けた時はメティスの介入でうまくかわされた。しかし今回は良い策があり、いつでも捕らえられる状態にある」

「……『来訪者は捕らえてやる、だからこちらの言い分を聞け』と?」


 強襲は諦めよう。――息を整え、腰を上げる。

 現状【目の上のたんこぶ】でしかないレトを囚えて無力化――つまり情報だけもらうというのはなかなか難しい。

 殺しを肯定する彼女の罪状だけなら、それこそいくらでもある。ただ彼女が元気なら、いくらでも揉み消すことができるはずだ。


「悪辣だな、やりようが」


 それだけのコネクションがあり、英雄といっても過言ではない実績がある。就任以来数々の水害や地震、外交問題、それらを未然に予知して安全策を立案し、最悪のパターンを幾度となく防いだ。現在この国があるのは彼女がいたからだ。

 コンセンテ国の各方面に借りがあるのが彼女の特徴だった。


「ハハハ、お前ほどじゃないさね」

「……私は極力、『正しいこと』しかしないようにしているのだが? 貴様の言いつけ通りに」


 ……おかげで彼女が「ない」といえばない。「ある」といえばある。

 犯罪とはそういうものになってしまった。

 この国の預言師とはそういう存在だ。

 未来を見通し、統治や政治に意見するコンセンテ国のナンバー2。……国王ゼウスの次に、この国の実権を握る者。


「まあ、その点ではさすがだね。一見正しい。そういう意味ではパーフェクトだろうよ」

「お褒めにあずかり光栄だ」


 アポロンは皮肉を言う。……どうせろくな条件が来やしない。

 そして案の定レトは言い放った。


「それで、のんでほしいことを聞かせてもらおう」

「【アルテミス姫(イレギュラー)】をこちらに引き渡せ」

「……」


 想像しないわけではなかったが。

 ……口がもごりと動く。だが、それだけだった。

 夢を見ないアルテミス。控えめな笑顔が美しく、話してみれば明るい女性。――この国にイレギュラーとして生まれた、疎まれし姫君。


「――それは、出来ない、相談だ」

「何、お前と同じことをするだけだよ……アポロン」


 レトはせせら笑う。


「当人にとっては寝耳に水。訳の分かっていない人間を、目的のために殺すだけさね」

「……」

「そうすれば別世界の自分は消え、狙い通りお前はイレギュラーとなり得るだろう」


 ……確定したような言い方をしているが。

 アポロンは口を結んだ。断定口調は彼女の常套手段だ。

 彼女が言い張れば、それは確定したように見える。


「貴様……」


 もちろん未来視の能力は万能ではない。彼女にだって「見える未来」と「見えない未来」があるはずだ。

 けれど、未来視の能力を持たない者には区別がつかない。

 結局――否、逆説的に『謎の説得力』が増してしまう。


「その上お前は私同様。元々未来を見通す目があり、『(コターボ)』を使える……人為的ではあるがね、アポロン。お前がイレギュラーになれば、それは神と同類だ。能力を持たずただ未来をいじくり回すだけのイレギュラーとは違い、未来を好きなように変えられるだけの技量を持てる。……国の未来を安定させることも出来るんだよ。良い方向にね」

「…………。」


 甘言だ。しかし――アポロンは必死に思いを巡らせる。

 だが。それでは、今まで姫を守ってきた自分の行為はどうなる?


「……」


 ここでレトに引き渡せば、恐らく有無を言わさず殺されてしまうだろう。花が散るよりも早く――そして、そうとうにあっけなく。

 相手が王族だからなんだと一切容赦はしない。

 レトはイレギュラーを執拗に憎悪している。己の仕事に意味がなくなるからだ。

 イレギュラーが絡むと未来が読めなくなる。読めたとして、まったく当たらなくなる。


 だから恐らく、如何(いか)沙汰(さた)がのちの自分に降りかかろうと、それを消そうとするのだ。イレギュラーだからと言って……己の使える王の、たった一人の実子相手だろうが、ばっさり切り落とそうとするのだ。

 ……きっとそれが、ただ一つの正義だと信じて。


「……なる、ほど」


 そういう意味では似ている。やろうとしていることはそっくりだ。

 要らないものを消そうとしている。

 欲しいものを手に入れるために――レトは未来の安寧を。自分は新たな未来を。


「……国を、守るのが、私達の使命だ」


 あの天真爛漫な姫君を、人殺しに売り渡すなんてもってのほかだ。自分の中では許しがたいことだった。

 しかし……同時に『アポロン』には王子としての責任があった。

 自分にしか、どうにもできないという確信があった。


「……王族であれ、庶民であれ……人を守るのが、私の役割だ……!」


 今現在、アポロンの中に見える未来像は波乱を極めている。


 ――なぜそうなったのかは分からない。

 ただ見えるのは、荒れ切った焼け野原。戦場の中でうなされながら眠る兵士。

 戦死した親を持つ子供たちの貧困……そして、燃える町。


 その理由が何なのか。

 推察するしかないが――人との(いさか)いではない。

 これは神か、もしくはそれに準じるものとの争いだ。


 今まで、少年の姿をした神・クロノスとこの国の主・ゼウスの仲は膠着状態だった。

 この国にはそもそもの話――クロノスの血が混ざっている。

 ゼウスの『生物学上の父』はクロノスだし、クロノスから見たならば『末の息子』がゼウスだった。

 アポロンやアルテミスから見れば祖母に当たるレーア姫の身柄がクロノスに要求され、この国は断り切ることができなかった。


 少し機嫌を損ねただけで、毎日何十、何百人もの世話係や伝令が死んでいく。

 それがクロノスと関わった国の末路だ。


 ()()()か、()()()()かの選択を迫られたこの国は、苦肉の策で姫と権力の全てを差し出した。「すぐに飽きてくれますように」との願いを全力で込めて。

 そこから人の身でありつつも、内々に国を取り返したのがゼウスだった。

 『神から生まれた「ただの人間」が、己の身一つとお供の女神・メティス。そして短い問答のみでクロノスに挑んだ』。そんな噂話は、そこから二十年と経たないうちにもはや伝説のような代物と化していた。


 ゼウス当人は何があったのか、黙して語らない。

 メティスに問いかけた者もいたようだが、彼女の機嫌がすこぶる悪くなるだけ。

 結局何があったか定かでないものの――気づけばこの国はクロノスから解放されていたし、怪しい動きをするクロノスを幾度も領から追い払い、退けながら。長い時間をかけてコンセンテはある程度、かつての力を取り戻しつつある。


 ただ、その稀有なバランスが崩壊するのは、もう時間の問題だろうか。

 特に来訪者なんていう面倒くさい輩が増えたことで、余計に火種は多くなった。

 こんな個人的なことで、国全体の未来を手放してしまうなんてことはあってはならない。


「……欲を、捨てねば……犠牲にして、得られるものがあるのなら」


 アポロンは暫く考え、ようやく結論を出した。


「……アルテミス姫の引き渡しで……構わんのだな」

「そうだね。あんたの庇護下に置かれている姫の身柄を寄越してもらえると助かる」


 ――あれはあってはいけないものだよ。

 そう、レトの口が動くのを感じた。――存在しているだけで、ひとを脅かす。国を脅かす。未来を不透明にするのだから。


「……承知した。ただし、『犬飼 元』以外の来訪者には手を掛けてくれるな。私は奴を始末したいだけだ、事を荒立てるつもりは決してない」


 その瞬間――無意識に胸を触ったアポロンはハッとした。

 レトは少しだけニヤつく。


「ようやく()()()()に働いてくれたね。アポロン」

「……」

「嬉しいよ。……おや、どうかしたかい?」

「……いや」


 ……以前、アルテミスからもらった花の花弁。

 今触ったのは、それだろう。

 小袋に集めて懐に忍ばせていたのを思い出し、アポロンは口を結んだ。


 これを持つ資格はない。


 袋からかきだせば、それらは地面に向かってぱらぱらと落ちていく。

 暗い夜道に花弁が見えなくなって……


「……。迷わんよ、私は……」


 途方に暮れたような言葉が響く。

 ちいさくちいさく――まるで、闇の中に埋もれるように。


【(現時点での)キャラクター紹介】



・アポロン


 25歳。身長180cm。第2部でイツキとイヌカイがミコトを追いかけてやってきた異世界「神界」にある人間の国の一つ、コンセンテの跡取り王子。

 現在の王様であるゼウスとは血のつながりはなく、「未来を断片的に見る」という能力を持つ「預言師」の血筋から養子に入っている。トレードマークとして白いマントを羽織っており、顔には仮面。


 「預言師」はそもそもコンセンテ国に危機が迫る前段階で未然に対策を取る為に特化された能力を持つため、いわば王に危機を伝える専属アドバイザーのような立ち位置……そこからいきなり跡取りに選び取られて王子にランクアップした彼の幼少期のシビアさは推して知るべし。多分えらい反発があったと思われる。


 イヌカイと同じ「魂の型」を持つ、「影」といわれる関係性。

 その為、彼の過去については熟知している(夢で見ている)のだが……現在、イヌカイを殺戮対象としてロックオン済。

 その下の顔は、魂由来なのかイヌカイに似ている様子。


 ――ちなみにイヌカイ以外の地球人にはあまり殺意がないどころか、殺し屋の双子弟に追われたイツキを涼しい顔で助けてくれるなどの『意外と面倒見のいい正義漢』的な面も持つ。

 いや、たぶん()()()()()……。

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