--.舞台・登場人物の設定*過去編まとめ
【登場人物】
・豊田 美郷
女神「メティス」の声が聞こえる一般人。
幼い頃に雪道のスリップ事故で両親を亡くして以来、「人生、自己満足」が信条。特に序盤は「これがしたい」と思ったらノーシンキング。その為、はたから見ると変に思い切りがよく、強引に見えたりして迷惑になることも。
逆にいうと「これ以上失うものがない」と思っているからこそフットワークが軽いのだが……。最終的にどうなったのかは言わずもがな。
・時永 誠 (別人格/右手くん)
・他者に対する警戒心と拒絶反応
・同族、自己嫌悪
が中心核になっている。
短気で臆病。他者からの愛情に飢えており、その自覚もちゃんとあるのだが、元々が『他人に対する拒絶反応』を軸に成立している為、それを自分に向けられているものだと認識することができない。
(テレビ取材を勝手に受ける→調子にのってタレント化する→主人格に炎上タレント扱いされる……の流れはその為。チヤホヤされるのは大好きだが、距離感が縮まると拒否反応で攻撃的な発想と発言が出る)
元々は主人格から成長過程で忘れられてしまい、心の奥底にしまいこんだままの暗い感情、いくつかの記憶やトラウマがベースであり、断片化していたそれらをクロノスが集め、一纏めの人格として過去編の裏で形成されていった。
やがて己の恋心に気づいた主人格は美郷に好かれる為、己を変えること(嫌いな部分を削り、切り離すこと)に拍車をかけるようになる。そのため主人格+美郷に対しては「捨てられた/無視された」という感覚が強いらしい。
更にはクロノスが自分に課そうとしている役割(「主人格によって生まれたミコトの『養育/飼育』」)にも気づいており、他人からの干渉を極端に嫌がる彼はそれに対しても内心、かなり反発していた模様。
クロノスの手により都合よく成長・形作られたような存在だが、クロノスを含めた他人に恐怖心と嫌悪感しか覚えない当人は逃げ出すようにその事実を最終話、「44.もう、届かない声(下)」で拒絶。
この時点でそもそもクロノスの存在自体を記憶からすっとばすことを決めており、彼の影響でグレイブフィールを扱えるようになったことも断片的にしか覚えていない状態になっている。
第1部で彼が持つ万能感は【他人に与えられた・関わった】等の不都合な記憶を意図的に消去し、手柄を自分に結びつけた結果+主人格が分離直前に殺意を己に向けて捨てた『自己愛』を、こちらが拾い上げたから。
が、それでも別人格はクロノスの支配下から逃れることはできず、ミコトにも謎の執着を見せている。――彼はそれを、「愛情の名残」だとはまったく自覚できないままに。
・時永 誠 (主人格/普段、美郷と話していた「時永くん」)
・他者に対する愛着
・家族に対する愛情
・「他人が認めてくれた自分」に対する前向きな自己愛
が核となって成立している。
感受性豊かで涙脆く、他者に対して面倒見のいい穏やかな性格。
ミコトの誕生を画策したクロノス。
「クロノスに合わせての成長」をした別人格とは逆に「美郷に合わせて成長」したような存在が主人格だが、スタートがミコトを生み出す為に仕組まれたものとはいえ――その愛情や恋愛感情は、後半部においては紛れもなく本物になっていた。
本編では第2部以降に登場する時永の基盤。
第3部15話『神々の幕間・後』でのメティス曰く――クロノスと接触したミコトが「(主人格の)破片」を発見したというエピソードがあるようだが、それは美郷を突き飛ばして別人格が表面化した際や主人格が美郷の最期を目視して精神的に折れたとき、ピキピキと音がしたアレ。
人格や意識を司る器官である『魂』が文字通り一部砕けたのが主人格が分離した原因。
ばらばらのそれらを繋ぎ合わせて、無理やり稼働しているのが「ミコトの理想世界」でのお父さん時永だ。
過去編最終話「44.もう、届かない声(下)」で美郷によって培われた『自己愛』を捨て去り、結果的に別人格の持つ『自己嫌悪』とトレードしている。主人格の時永が本編第3部にて、別人格の所業をこれ以上なくコケおろしていたのはそのせい。
美郷の影響で自分を認め、許そうとしていた彼は、今――『美郷を殺した自分という生き物』が、現在進行形で大っ嫌いなのだ。
・時永 ミコト
メティスの解説を要約すれば「数値化するのも億劫な桁の幸運値」を持つ赤ん坊。彼女が願うように、望むように……無意識に世界の方が形を変える。ただし彼女が把握していない・理解していない事柄は変えられない。
そして当時のミコトがメティスやクロノスの存在を理解していたかというと……そもそも人間一年生に悟れという方が難しい。
・メティス
美郷に付きっきりの「見えない女神様」。
神界における神様とは「思い込みや言葉の強さ」が知覚した空間内に強く作用する性質を持っているため、能力の使い方や暴走の如何によっては「生きた災害」と評されることも……。
能力の暴走しがちなクロノスを幼少期から散々『反面教師』にしてきた彼女は「自分もいつかそうなるのでは」という恐怖感から厭世的な性格になり、屋外には殆ど出ないようになっていた。
そして暇潰しと逃避のため、地球と繋がる不思議な現象「夢」を辿り、自分と一番近い魂を持つ美郷の様子を度々観察するのだが……幼いその子をだんだん見ていられなくなり、ついには声をかけ始める。
いつしか彼女たちは姉妹のような間柄になっていた。
「こんな『砕けた口調』になるのは何年ぶりだろう、楽しい気持ちは何年ぶりだろう」――メティスは思う。「私はこの子に、何をしてあげられるの?」。
その結果が最終話の、美郷との神経接続だ。
――リスクなんて関係ない。発狂する? 痛い? ああ、上等だ!
かくして美郷は自分の人生を生き抜いた。そして痛みもなく、安らかに死んだ。
しかしメティスの神経は、感覚は――確実に、未だ美郷とつながっている。
だって美郷が見た「未来の夢」は――メティスの声が、すぐ近くから聞こえなかっただろうか?
・クロノス
時永と仲の悪い「神界に住まう神」。美郷が夢で見かけたのは少年の姿であり、体に青い布を巻いている。時永と同じ魂の基盤の持ち主で、地球に干渉する際は殆ど時永経由。
髪は金色。髪の色も目の色も全く違うが、やはりどことなく時永に似ているらしい。
一見尊大な振る舞いをするが、中身は見た目同様子供じみた性格で、対等に接するのは同郷かつ同じ神であるメティスのみ。
どうも『人間というすぐ死ぬ生き物』を頑なに見下すことで、不安定な精神のバランスをとっているようだが……。
ミコトの持つ「神以上になんでもありな力」を使って何事かを企み、その為に時永の精神を断続的にいじくりまわしていた。
・谷川 ユキ
美郷の友人。男遊びが激しくノリが軽い女の子。美郷行きつけのラーメン屋『アオギリ』でバイトしており、店主の孫であるイツキとはゲーム友達。
高校時代はイヌカイと付き合っており、演劇部のナンバーツーポジションにいたのだが……なんだかんだ別れ、追い出されるように部を辞めたという過去を持つ。
(※詳しくは『青春ロスト』参照)
過去編当時は色々吹っ切ろうと頑張っている最中で、言動も『青春ロスト』当時から比べると空元気かつ、サバサバ感がある。
・佐田 秀彦
谷川の高校時代の後輩。「明るくふざけたお調子者」を演じているが、実際の中身は自信を持てたことのない努力家。
なぜかタコに異常なこだわりを見せる。
美郷とメティス曰く「計算したおバカ」。
・落川 有一
時永の一学年下、同じ人文学部後輩の声も体もデッカい方。
親友の七生にツッコミがてらアッパーを食らうのが常だが、文句を言いつつ嫌がっている様子はない。でも七生以外に殴られるのは嫌。
喜怒哀楽は隠さず勢い任せで口に出す為、結果的にめちゃくちゃ煩い。
美郷とメティス曰く「天然のおバカ」。
……余談だが、青春ロストに出てきた落合くんとは家が隣同士と見受けられる発言がある。人呼んでゲキ落ちコンビ。
・七生 カイ
時永の一学年下、同じ人文学部後輩の体がちっこいやつ。
親友の七生に顎下からツッコミがてらアッパーを食らわせるのが常だが脊髄反射的にやっている為、特に悪意はない(害意はあるかもしれない)。
普段は物静かで底の読めない性格をしているが、落川を遮るくらいの大きい声を出すことも。少なくとも相方をコントロールするだけの理性はあるらしい。
本編のイツキ以上に小柄だが、チビがコンプレックスなイツキと違い、マイペースな彼は特に気にしていない模様。
(「えっ……むしろ周りがボクとチグハグなんですよ?」と思っている節がある)
・ラーメン屋の店主
美郷の行きつけ+谷川のバイト先のラーメン屋店主。
普段から少しぶっきらぼうだが、ランチタイムは荒さに余計拍車がかかる。
そのくせ一見怖い人かと思いきや、よくよく見てみると若い女性や子供に対してかなり弱い節があり、本編でミコトや妹に対し強く出られないイツキにガチでそっくり。……だって彼の父方の祖父だし。
・植苗 イツキ
ラーメン屋店主の孫で、本編に登場するイツキの小学生時代。
「9.カッコ悪さ」
「29.影の想定」等に登場する。
なお、「カッコ悪さ」の舞台裏は同作者の別シリーズ『消滅時計』の「よぶんのいち」という話でチラリ。あっちはイツキの父親の話なので家でのイツキの話が聞ける。
・犬飼 元
高校時代の谷川の後輩で佐田の同学年かつ大親友。本編に登場するイヌカイの高校〜大学生時代。
「2.旅先で 1年目、7月ごろ」
「32.平穏と半年 4年目・4月5日~9月26日」
に本人がしれっと登場する他、名前や谷川の語る「元彼の動向」というだけならば、意外と頻繁に出ている。
・馬越 栄子
かつて時永邸の「行方不明事件」を捜査した女刑事。誠の養父とは同郷の昔馴染み。
「君のことばかり思う」からの再登場で、歳を重ねて図太さが増した様子が窺える。
ちょくちょく思い込みで行動する事があるものの、根は真面目で正義感の強い人間。
最終話ではグレイブフィールに襲われて腹に風穴が。
そしてそのまま、意識は戻らなかった。
・馬越 慎治
時永邸の隣家に住む時永と美郷の友人で、栄子の夫。――本編に登場する「馬越さん」その人である。
恋の相談に、学校生活に、人間関係――いわゆる良き相談役+愚痴相手ではあったが、いわゆるディープな事情は知らなかった。
そんな中最終話では、とうとう時永邸の複雑な事情に巻き込まれることに……昏睡状態に陥った栄子を利用され、迷った末に慎治の中にふっと蘇ったのは時永の言葉だった。
『僕や美郷さんに何かあったりしたら、そのときは、ミコトを預けていいですか?』
――結局、慎治はその言葉だけを15年。その人生を棒に振ってまで守り続けた。『自分の無茶を一番嫌った』女性がこの世から消えるまで。
その思い出が、過去のものになるまで。
【舞台設定】
・星移大学
東京郊外、丘陵地の高台にある「楓」以外は地味な大学。偏差値が低めなのと、どうにもパッとしない印象でなぜかバカにされがちだが、単に周辺大学がやたらキャラ濃いだけなのである。
土地代が安いのかキャンパス密集地で、道一つ挟んで隣の敷地にも別の大学があり「食堂はあっちの方がいい」と潜り込む人間多数。
時永は人文学部、美郷は経済学部の出身。
ちなみに山一つ越えた隣にもまた別の大学……スポーツが軒並み強豪に数えられる白帝大があり、そっちはイヌカイの出身校。飲み会等で予約がダブると、ちょっと気まずい。




