夜
…激しいネオンの光
吐きそうなくらいな人の数
満員電車並みの苦しさと
むせるほどの強烈な香水
最悪な条件下のはずなのに、お酒がまわって何も感じない。
「ねぇ、君さ、よかったら一緒に飲まない?」
20代後半くらいの男性が声をかけてきた。腰に手をあてて、「お酒飲むでしょ?」と言って、バーカウンターに私を連れて行く。
男はみんなこれだ。なんでなんだろう。
でも、私も全てを分かってその男についていくのだ。だから、変な前置きもお酒もいらない。偽りの愛も甘いセリフもいらない。だから、お酒ももう十分なの。
じゃあ、「出る?」という問いかけに無言で頷き、二人で外に出る。顔が好みで後腐れなければ何でもいい。この時、一番手を出してはいけないのが、「本気」な人間。これだけは、めんどくさいし、お互いが傷つくんだ。
「どこへ行くの?」そんなことは聞かない。お互いなにも聞かずに当たり前のようにあの場所へ向かう。人々が休まり、心を癒す場所。そうでしょ?癒されたいんでしょ?誰もが。
お互いが求め合う。けど、愛し合わない。その場であっても愛し合うことはない。愛は必要ない。愛は存在しちゃいけない、無駄なもの。
全てが満たされた時、彼は息を切らしてシャワーをす浴びに行く。でも、私は何も満たされない。満たされた演技をして全てが終わる。
あぁ、まただ....と。世の中はこれが全てだ。ドラマや漫画のような純粋な恋愛は存在しない。世間の恋人を否定はしない。でも、私は信じきれない。いや、信じることをしない。
「何?悲劇のヒロインか何かなの?笑」
なんて嘲笑う人もいるけど、私からすればお前の愛はじゃあ本当に愛なのか?知りたい。
それは依存ではないの?愛なの?
他の人に目移りするじゃない?
イケメンが求めたら答えるのでしょ?キスをするのでしょ?
気持ち悪い。吐き気がする。
そんなのは愛じゃない。
「堅いよ?もっと楽しく生きようよ?」
何を言ってるの?堅くなんかない。生きたいように生きてる。あんたみたいなやつといたところで、楽しくない。満たされないわ。
「え?何本気になってるの?笑」
なってないわ。分かってる。最初から期待なんてしてない。
気持ち悪い。気持ち悪い。気持ち悪い。気持ち悪い。気持ち悪い。
全てに吐き気がする。
世界はこんなにも狂っている。
…彼がシャワーを浴びてる最中に私は部屋を出る。二人で朝を迎えはしない。それが私のやり方だ。時間は深夜4時。あと少ししたら始発が動き出すだろう。夏であるならば駅で始発を待つのだが、今は冬で些かそれは耐え難い。駅の近くにタクシーを呼んで、ここから一番近いある場所に向かう。タクシーで15分ほどのマンション。当たり前のようにポッケから鍵を取り出し、ドアを開ける。ドアの鈍い音が早朝の冷たい空気を揺らし、静かな部屋に響かせる。奥の部屋から猫が出てきた。
「…ごめんよ。起こしたね、あき。姉さんは寝てる?」
「そうだよ。」といっているかのようにあきは鳴く。奥の部屋を覗くと女性が寝ている。姉さんだ。寝相の悪い姉さん。布団がずれて、何も掛けずに丸くなっている。凍えている彼女にそっと布団をかけた。相変わらずだらしがない。姉さんが寝ている部屋をそっと出て戸を閉めたら、リビングのソファーで横になる。私の布団の中に潜りこむあき。
「あたためてくれるの?(笑)ありがとう(笑)」
なんて言ったけど、こいつの本心は逆で自分が温まりたいだけどろうな。
さっきまであんな居心地も悪いところにいたのに…なんてここは安らぐのだろう。。。
高級ホテルのベットよりも姉さんが安売りしてて買ったソファーの方が居心地がいい。気持ちいい。さっきまで何も感じなかったのにな。
安らぐ中、私の夢は何とも言えない幸せな世界であった。白く柔らかい不思議な世界。でも私ともう一人女の子がいる。誰?幸せな気分の中、その子に話しかけようをしたらこう言われた。
「あなたは欠けている。」