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不幸とは  作者: へいみん
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心残り 1

 さて、来たってことは新しい話を聞きに来たってところだね。さて、それなら早速読んでいこうか。今回は「心残り」とある老夫婦の話だね。さて、どうなるのか。


 痛い、痛い痛い痛い痛い。全身が痛い。これなら死んだ方がどれだけましなんだ。

 はやく死にたい。死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい......

 ん?あれ?いたくなくなった。何があったんだろう。あれ?医者が私をじっと見てる?なんでみんな集まって泣いてるの?私はもう元気なのに。

 「せ、先生。母さんは......」

 「残念ながらもう......」

 「う、うそ」

 なんで、私は元気なんだよ?体は軽いし体は痛くないし。

 私は嫌な予感がして後ろを見てみた。そこには横たわっている私がいた。目を閉じて、腹が膨らんだりへこんだりっていうのがない。そうか......私は死んだのか。なるほどね。

 ......って、なんで成仏してないの!?え、死んだら天からなんか光みたいのが差し込んでし来て天に昇っていったり、空だが透明になったりするんじゃないの!?

 あ~、現世に心残りがあれば成仏できないって聞いたことあるな~。私の心残りか......間違いなくあれだな

 私が心残りとして気がついたのは今、死んだ私の手をぎゅっと力を込めて握ることで泣くのを我慢していた旦那のことだった。

 すごくいい人だったが......ダメな人だった。ダメだったとこを上げるときりがないから言わないけど、特に心配なのはやはり生活のことだろう。あの人はスーパーにいったことがない。

「働いてるから家事は任せた」

といって全然手伝ってくれなかった。一人で生きていけるのかな......

 あ、遅くなったけど私は津田節子といいます。享年72、旦那は明、今年で70だったかな?って、私は誰に対していってるのだろうか......まぁ、いいか。

 その日はあと解散、私の亡骸は家に帰ってきた。私と旦那は二人で暮らしていた。3人子供がいたけど全員一人立ち。家があるってことで子供から一緒に暮らさないかといわれても頑なに家から出ようとしなかった。

 家に入って玄関を締めるなり旦那は泣き崩れた。仏間に移動し横たわって動かず、冷たくなった私に手をおき、顔を擦り付けながら泣いていた。そして、私を見て泣きながら酒を飲んでいた。

 あ、そんなに飲んだらダメだって!お医者さんにも言われてたじゃない!そんな私の声も旦那には届かなかった。

 すこししたら旦那は寝てしまった。毛布被らないと風邪ひくよ。

 なんだろう。自分でも信じられないくらい落ち着いてるな~。まあ、死にたいと思ってたし、あの鬱陶しい痛みがないからかな。私は半年前から癌と診断されていた。あの痛みはとても苦痛だった。

 旦那にはわからないと思うけど、私は旦那にくっつきながら一晩を明かした。寝言で何度も私の名前を呼んでたな~。

 次の日、葬式があった。火葬もぱぱっとやってしまうらしく火葬もあった。自分の遺骨、遺影を見るってのもなんかな~って感じだった(笑)何人か私の仲間を見たけど幽霊とか怖くて話しかけられなかった。

 お経って幽霊視点だとあんな心地いいものなんだな~。なんか、クラシックを聴いてるときみたいにリラックスできた。

 その後、私の亡くなったっていう手続きをしてる家族をみてなんか申し訳ないな~って思った。

 旦那は親族の前では決して泣かなかった。でも、一人になったとたんにまるでこの世の終わりかと言う位に絶望した表情で泣いていた。こんなんでこの先1年になるか、2年になるかわからないけど生きていけるのかな......

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