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1話.最弱の魔王だけど勇者も弱いの?

魔王ってあまり前に出ないじゃん?

その理由はこれじゃないかな。

魔物が強いのもそう、魔王のおかげだ。

勇者なんてスライムで十分なほどに。


「報告です、さきほど出てきた勇者を序盤のスライムが倒したそうです」

「そうか……」

薄暗い城の中で、金色の光輝くとてつもなくデカイ椅子に腰をかけ、目の前にいるオークから報告を受けた。

「……え? 勇者倒したの?」

「ええ、そうです」

「それも出てきたって、巣から出てくる蟻じゃないんだから」

「自分たちからしたら勇者など蟻の存在より小さいですよ」

「……反逆とか起こさない?」

「魔王様に逆らうなどとんでもございません! 一生、下で働かしてください」

「う、うん」

一礼をしてから扉を開き出て行った。

オークがいなくなりこの広い部屋は俺一人になった事を確認してから辺りを見渡す。

薄暗い室内には謎の絵画やロウソクの付いていないシャンデリアが飾られてある。他に武器も飾られており、いかにも魔王の座と呼ばれる部屋だと思わせられる。

「俺は魔王じゃなくて人間のはずだったんだけど……」

体つきと顔は人間のままなんだけど、何故か尻尾と角が生えているのは謎だ。

何故こんなところにいるかと言うと、それは俺が魔王だからなのだろう。

いや、中二病とかじゃなくてね? そう言われたんだよ。


就職活動を見事に失敗した高卒24歳フリーターの俺、狭間はざま おう

ある休日の昼に、俺は1ヶ月くらい干していない布団から目覚め、パソコンの電源を入れる。

「今日もこいつで副業だなぁ」

コンビニバイトだけでは生活できないため、ネットのアンケートやブログ、広告料などで金を稼ぐ。

このオンボロアパートに住むだけでも月の給料7割は取られる、そのためコツコツと稼いではいるのだが。

「これ、電気代で稼いだ分消えてるよな」

もう一つくらいバイトをしたい、そう考えるがそれは不可能だ。

俺の目つきの悪さはひどくて、どこの面接に行っても質問などを受ける前に帰らされるという、自分で可哀想に思うほどだ。

今のコンビニは、店長の心が広く、深夜バイトに務めさせてもらえた。

だから昼間はこうしてパソコンをいじっているが、それも今日でやめよう。

パソコンの電源を落としてからもう一度寝ようとどかしていた枕を取ろうとした時、枕の上に赤い封筒があった。

「何これ」

見た事のない封筒を手に取り中身を取り出す。中から一枚の手紙が出てきた。

「………汚い字で読めないな」

かろうじて読める字は王のみで、他のは幼稚園児が書いたような文字で読み取れない。

特に大切な手紙というわけでもないと、俺はゴミ箱へ丸めて投げ入れた。

そこまではいい。問題はここからだった。

ゴミ箱から紫色の煙が出てきた。

「は?」

俺が行動に出る前に大きな音と共にゴミ箱は破裂した。

「はぁ⁉︎」

破片が顔に刺さり血が出ているが、そんな事気にもしない。今起こった目の前の現象に驚愕していた。

「キュー、痛いよぉ〜」

何故かさっきまであったゴミ箱の位置に20代くらいの眼鏡をかけた金髪の女の人が頭を抱えてぺたんと座っていた。

「………………」

「失敗だったかなぁ」

「誰?」

「あ、魔王様!」

「……いや、はが抜けてるよ、狭間 王だよ俺は」

「魔王様!」

「話聞いてないのね」

「目を瞑って十数えてください、早く!」

「え、ああ……はい」

突然の事だったが、言われた通りに目を瞑り一から十までカウントを始める。

「金の座へ」

十のカウントが終わった時、そう眼鏡の人が言うと、エレベーターに乗っているような感覚が起きた。でも瞬時に元に戻る。

「目を開けて大丈夫です」

「あ、はい」

目を開けると、そこは俺の部屋ではなかった。薄暗くて、だけど高貴な感じの雰囲気だ。こんな事が起きたのに自分でも驚くほど落ち着いている。

「その後ろにある金の座に」

さっきの女の人に手で示されたどデカイ椅子に腰をかける。

すると目の前で頭を下げられ、自己紹介を受けた。

「私はサイジョルグ・イェーガーと言います」

「随分と格好いい名前だね」

「恐縮です、それで魔王様」

「狭間ね、狭間、はを忘れないで」

「魔王様に来てもらったのはですね」

「全く人の話を聞かないね」

「伝説の勇者の血を引くものが現れる可能性があります」

「勇者?」

「彼らは私達を殺そうとする残虐者達です」

サイジョルグは手を握り拳にして体からオーラを放つ。

「これからは魔王様の力が必要となってくるのです」

「……俺の事言ってんの?」

「ええ、そうです」

「いや、俺は狭間だって」

「魔王様の秘書として全力で勤めさせていただきます、よろしくお願いします」

人の話を聞かない秘書は口笛を軽快に吹いた。すると俺が座っている椅子の前にドロッドロのスライムが出てきた。

「レベル45ですか、なかなかですね、さすが魔王様です」

「何が? 君は何を言ってんの?」

「魔王様の存在のおかげでスライムが強くなりました」

「いや、おかしいでしょ」

「何がでしょう?」

「スライムだよ?動いてるよ、これ」

「おかしい事なんて一つもありません」

「君の存在もおかしいけどね」

「恐縮です」

「何が?」

意味が分からない。

「あと、魔王様のレベルは1なので、フィールドに出ないようにお願いします」

「どゆこと?」

「魔王様の魔力が私達魔物を強くしています、あなたが死んだら私達も弱くなり勇者にやられるでしょう」

段々と理解していく。つまり、俺は魔王様なのね。

「魔王様は全力でお守りします、その前に勇者を序盤で潰しておきますが、伝説の勇者相手にはそうはいかないでしょう」

「大丈夫なの?」

「大丈夫です、ですから何もしないで座っていてください、それが力になります」

言いたいことは分かった。

俺は頭のいかれたこの世界でスライムより弱く雑魚だけど魔力で魔物を強くするから俺が必要だってことだろう。

「なんか頭から角が生えてる……」

「立派です」

「尻尾まで」

「綺麗です」

「えっと……サイジョルグさん?」

「サイでいいです、それで、なんでしょう」

「俺は何をすれば?」

「何もしないで平気です」

なるほど、RPGでの魔王の気持ちが分かった気がする。

「守りますから」

だけど、エンカウントモンスター達に守られる魔王はどうかと思う。

投稿していくよ、ええ。

暇ならね。

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