プロローグ6
「じゃまた、今日はここで、もみじちゃん色々ありがとね、うれしかったよ、もみじちゃんと会えて」
わたしの家の前に着くとライくんはそう言った。
なんでそんなこというの?まるでもう会えないみたいじゃない、そんなの嫌だ。
「ライくん、夕飯食べれてないですよね?もみじなんか作りますから上がってってください」
「いいよ、あんまり食欲ないし、だいたいもみじちゃん夜食べるのはよくないよ?女の子なんだから」
ライくんは笑いながらそう言う。きっといつも通り笑えているつもりなのだろうけど…その笑顔はとても痛々しくてわたしには見ていられなかった。なんか、何でもいい、なにかライくんをここにとどめる方法は…
「そんなこと…ライくん泊まる場所ありませんよね?家に泊まって行きませんか?あんな事件があったんですもの、家には帰れないでしょう?」
「それがそうでもないんだよ、事件のあったリビングと地下は入れないけど僕の部屋がある二階は今晩から入っても問題ないって、」
「でも…」
「もみじちゃんそんな心配しなくても僕は大丈夫だからさ、それじゃあまた」
そんな顔で大丈夫なんて、大丈夫じゃないのなんて一目見たら分かるのに、なのになんでそんなこと…
あぁもう行ってしまう何かないの?ライくんを引き留める方法、いやそれは無理かもしれない、でもまたライくんに会える方法、なんかないの?せっかく会えたのに、そんなの…
「ライくん!」
十メートルほど先でライくんが振り返る
「なにー?」
「明日、朝ご飯食べに来てください!」
「うん、わかった」
「約束ですよ?」
「分かったよ」
「寝坊しないでくださいね!」
「はいはい、もみじちゃん、それじゃおやすみ」
「おやすみなさい」
次の日、朝ご飯がすっかり冷め、昼を過ぎても、日が暮れても、ライくんは、来なかった。