プロローグ5
「もみじちゃん、今日はありがとう。」
「えっ?」
「こんな情けない僕のことを好きだって言ってくれて、一緒に生きるって言ってくれて、本当にうれしかったんだ」
「そんなお礼を言われるようなことはしてませんよ?別に、当たり前のことをしたまでなのですから。大好きなライくんが傷ついていたら、助けるのは当然なんですよ?」
もみじちゃんは少し早口気味に言い切ると少し足を速め、数歩分先を歩き始めた。
その耳は真っ赤になっていた。
たぶん僕の顔も赤いんだろうけど…
目も真っ赤だろうな、あんなに泣いたし、
「ライくん、実は私今日ちょっとうれしかったのですよ。ライくんは昔のまんまなんだなぁって。」
「えっ?」
もみじちゃんは振り返っていった。
「泣き虫なところも、それなのに無理に涙をこらえようとするところも、恥ずかしいときや気まずいときにほおをさわる癖も、」
「あ、」
思わず頬をさわっていた右手を引っ込める。
もみじちゃんがクスクスと笑う。
「それを言うならもみじちゃんだって…」
僕はそこから先の言葉を続けることができなかった。
明かりの少ない夜道で遠い街灯の光でぼんやりと照らされたもみじちゃんは、うまく言葉にできないけれど、とても幻想的で、神秘的で、昔よりずっときれいだったから。
「ラーイーくんっ??どうしたのですか?そんなに私のことじっくりと舐め回すように…はっ、まさか、こんなところで!?だだだだめですって、そういうのはもっとこう、「あーはい、ストップストップ、違うから、何を考えたかは聞かないけど、絶対違うから。ほらもう、さっさと帰るよ。」
「そ、それは帰ってから二人きりでするということで「だからしないから、そんな見境なくないから、とりあえずそから離れようか。」
そんな慌ただしい幼なじみの暖かい手を握って、家への道を歩くのだった。