プロローグ1
「明後日は、お前の誕生日だな。今年は俺もみんなも時間がとれたからパーティーを開こうと思う。連絡がぎりぎりになってすまないが、結構忙しくてな、時間がとれるかどうかなかなか分からなかったんだ。とはいえやるからには盛大にやろうと思う。しっかりと準備しとくから、楽しみにしててくれ。あいつらも久しぶりにお前に会えるのを楽しみにしてるみたいで相当張り切ってたからな。昼までには来てくれな、せっかくのミカの料理が冷めてしまうからな。主役だからって遅れるなよ? 父とお前の家族より」
メールが表示されている端末をもう一度確認してからしまう。
面倒なIDチェックとか許可証の確認がようやく終わり、僕が駅から出ると誕生日だというのに灰色の重たい空がずっしりとのしかかってきた。もう立秋だというのに、湿度も気温も高い。夏において行かれた暑さはどうやらまだここにいたいのか、じめじめと纏わり付いてくる。この都市に来てまず目に入るのは、空へ向かって聳え立っていっている虹色の建造物。「悠久の時を刻む塔」。それはこの世界で初めて使われた魔法が施された建造物。という事にされているが、実際は違うだろう。そんな大きな建造物にかける魔法を国がぶっつけ本番でやるなんてありえない。そうして5年前この国では魔法が公に発表された。そしてこの都市は「特別総合特殊研究都市」つまり最先端の魔法研究都市に指定された。それからこの都市は「魔法の始まり(アルケミナ)」と呼ばれている。今日は曇っているが、晴れている日は綺麗に光を反射するらしい。僕がこの街を出るときにはまだ時計塔すら見る影もなかったが、今ではその時計塔の周りには研究施設が所狭しと敷き詰められている、らしい。そこの入れるのは国から特殊な許可をもらっている国家研究員だけ。一部官僚など特殊なケースもあるが、相当なレアケースだそうだ。その区域は中央区域と呼ばれ国からレベル4の禁止区域に認定されている。レベル4は、国の資格や許可をもらっている人が入れる区域、ここの場合は要するに研究者だ。そもそもこの都市は全体がレベル3の禁止区域に指定されている。いまこの都市に入れている僕は、もちろん国からの許可、第三許可証を持っている。第三許可証はこの都市で働いている家族がいれば発行してもらえるからそんなに貴重ではない。それでも駅での検査とかが厳しい理由はもちろん「魔法」で、そんなわけでこの街に出入りする時には、厳重な検査を受けなければいけないのである。