五章
さすがに竹里の脱退にはショックを隠せなかった長田は、他のチームを見境なく攻撃していく。
その荒れぶりにチームはどんどんバラバラになっていった。
今までは手を出せないでいた他のチームも、幹部が抜けボロボロになった機会を逃すまいと仕掛けてくる。
だが長田の喧嘩強さは凄まじいもので、なかなか他のチームも落とせないでいた。
最後の標的には正攻法で行くことにした。
《ピンポンダッシュの会》としては腑に落ちないものが続いていたので、長田とは真っ向から勝負したいと思ったのだ。
長田の家は一般のありふれた家庭で、どこにでもある一軒家に住んでいた。
母親は気が弱く何も言えないでいたが、父親は頑固でよく長田と衝突を繰り返し近所でも大声での喧嘩騒ぎが有名となっている。
チームは解散寸前状態だったが、そんなときでも長田は外では一切の弱みを見せないでいた。
ここ数日帰宅は深夜になっている。
俺もそれに合わせ行動を開始した。
突然始まったピンポンダッシュという幼稚な嫌がらせにわかりやすく長田は苛立ちを露わにする。
これが長田家の親子喧嘩を激化させた。
毎夜二人の怒号が木霊する。
一週間程は近所もいつものことだと無視していたが、さすがに耐えられなくなったようで、トラブルはどんどん大きくなっていく。
下手をするとせっかくのマイホームから引っ越しを余儀なくされる深刻な事態となる。
これには長田も家族に悪いと思ったらしく、あまり出歩くことが少なくなっていった。
これ以上は警察沙汰になりかねないと思い、とどめの攻撃を繰り出す。
文書を読んだ長田は数日後にチームを解散した。
約二か月余りに及ぶ藤堂からの依頼はこれで終わりを告げる。
そのはずだった。