三章
最初のターゲットを竜村に定めた。
こいつは単純で行動パターンも少なかったので、格好の標的と言える。
竜村は幼い頃に両親が離婚していた。
母はスナックを営んでおり、ほぼ朝帰り。
兄弟もおらず、夜は一人が多くなり、結果族仲間と過ごすことが多くなっていったようだ。
俺は集会から帰る深夜を襲撃した。
竜村は素行とは裏腹に母にあまり心配を掛けたくないらしく、母の帰宅前の深夜には自宅に戻るようにしていた。
周囲に怪しまれないように早朝マラソンをしながらピンポンダッシュを四時から五時の間でバラバラに繰り返す。
竜村もいつもの標的と同じように疲労の色が露わになっていく。
だが、さすがと言うべきか、なかなかしぶとく、降参するまで二週間近く掛ってしまった。
『これは君がチームに所属する限り続く。降参をしたいのならば、速やかに脱退せよ。暴走行為を含む過去の行動を償うには更生あるのみ』
この文書を送り決着はついた。
元々チーム内で短気で問題が多く軋轢があったようで、竜村が脱退しても他の三人は落ち込む素振りはなかった。
次のターゲットは参謀の北井。
北井は両親が海外赴任をしていて、高級マンションに一人暮らしをしている。
マンションはオートロックで、監視カメラもあるので直接の攻撃は難しいだろうと藤堂のメールには書いてあった。
《ピンポンダッシュの会》の規則に反するが、今回はちょっとやり方を変更した。
北井が冷静沈着な性格で、桐嶋とは違い単純な作戦では根をあげさせるのは難しいからというのもある。
作戦は二つ用意した。
一つ目は偽配達注文。
いくつかフリーアドレスを作り、ネットでピザなどを注文する。
最初こそ配達員にキレていたものの、面倒になったのか素直に買い取るようになった。
普段の行いのせいもあり、北井は警察に通報することはなかった。
二つ目の作戦はイタズラ電話作戦。
なるべく人目につかず、外出していることが親に気付かれないように公衆電話から北井の自宅へと電話を掛ける。
二重の攻撃にクールな北井も精神的に追い込まれていく。
作戦を開始して二週間程で苛立ちが募ったようで、無言でリアクションを待っていた俺に暴言をぶつけてきた。
最後に竜村と同じ文書を送る。
短期決戦に持ち込んだ甲斐があり、竜村のときより早く北井を落とすことに成功した。