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#06 発覚:模索接合

ここから、傍観視点に変わります。

一方、そのころ…彼は外を映すモニターを見た途端、別の時空に迷い込んでしまったのかと思い、愕然とする。

既に元の世界から別の時空に飛ばされた彼にとって、また別の時空に飛ばされてしまうということは、元の世界に帰ることが難しくなる確率が高いから…。そう彼が思うほど、景色は大きな変貌を遂げていた。


一面が自然あふれる緑に変わっていた。

先ほどまで、無機質的にただ白い地面が広がる世界を見ていたとは考えられない。

しかし、あの機械なのか生物なのか分からない装置は何事もなく存在している。


(一体…此処は何処だ!?)


だが、彼はすぐに気付いた。

あの球体が、可能性を司る装置だということに…。(いや…もしかしたら、帰る方法が見つかるかも知れない…。)

別のモニターを一つ一つ確認しながら、必要だと思われるデータを探していく。

「これは…!?」

いろいろ操作していると…見覚えのあるものが映っているプログラムを見つける。


映っているのは、いろいろな絵が書いてあるカード。

(あかりの病室で見たんだが…たしか、タロットとかいっていたな…。)

モニターには、22枚の半分以上が裏向きで表示されていて、表になっているのは、

・マジシャン(魔術師)

・テンパラス(節制)

・スター(星)

・ムーン(月)

・サン(太陽)

の5つだった。


(志田君なら、知っていたかも知れないな…。少しはこういうのにも、興味を持たないといけないな…。)

専門分野と一般教養には強いのだが、特に占いの知識はほとんどない。男性で科学者ならなおさら占いとは無縁なのかも知れない。


もう少し詳しく調べるため、キーボードで操作しようとした時…画面に変化が起こる。


4番目のカードが反転しようとしていた。

(4番のカード…何だろうか…。)


反転して表向きになったカードには、何故か彼が映っていた。


「何だ…このプログラムは…!?」

知らない空間で、このモニターは彼を知っていたかのように映している。

周りを探して見ても、この室内を映すカメラは見当たらない。

(モニターに、何かあるのか…?)

モニターに手を触れようとした、その時…。


画面の中の彼自身を映し出していたカードが、絵に変わっていく。

出てきた絵は、大きな椅子、冠を着けた男性、背景は城のように豪華…。

(これは、皇帝…?)

そう、エンペラーのカードだった。



彼がモニターに、エンペラーのカードを見つけたその頃…。

病室にいたあかりは、頭の中に急にカードが浮かんでいた。

(皇帝のカード…。急に浮かぶって、何かあるのかな?

ここは、久美さんに聞くのが一番いいかも…。)

久美や愛美から、タロットカードの絵を教えてもらっているためか、すぐにエンペラーのカードだと言うことがわかった。

もちろん、まさか自分の父親がカードの所有者-ルーラー-だとは気づかなかったのだが…。

あかりは、検温のために来るだろう久美を待つことに決めた。

カラカラカラカラ…

いつものカートの音。

あかりには、あまりに聞き慣れているせいか、この音で久美かどうかがすぐにわかる。


「あかりちゃん。検温よ。入っていいかな?」

「うん。だいじょうぶ。」

「じゃあ入るね。」


ガラガラ…

カラカラカラカラ…

ガラガラ…

扉を開け、カートと体を部屋の中に入れて、扉を閉める。

この早業は久美の特技の一つではないかと、あかりは見るたびに思う。

「はい。体温計。」

あかりは久美から体温計を受け取ると、なれた手つきで脇の下に差し込む。


ピピッ。


取り出して、表示を確認する。

36.2℃…まあ平熱かな。


久美に体温計を渡しながら、尋ねる。

「久美さん。ちょっといいかな?」

「だいじょうぶよ。なぁに?」

「えっと…」

さきほどのエンペラーのカードを見た件を話す。一通り伝えて聞いてみる。


「久美さんは、どう思う?」

「そうね…。これだけの情報では、誰かわかんないわ…。ん…ちょっとね…。」

「もしかして…なんか気づいたの?」

「気づいたというより、思いつきなんだけど…。」

「うん…。」

「逆はできないのかな…?って。」

「逆って…?」

「今まで、人からカードを導き出したよね…。だから、カードから人を特定できないのかな…?って思ったんだけど…。」「あっ…そうだね。やってみる!」

そういうと、あかりはカードを頭に思い浮かべて、意識を集中していく…。だんだんとカードの絵が現実味を帯びた風景にかわってゆく…。


(ここは…何かの施設…?)

白っぽい床、無機質で素っ気ない壁。

天井の照明が規則的に並んで、先へのびている。


(見たことあるんだけど…どこだったっけ…?)

先へ進むと、扉が見えてきた。

扉を開けると、はっきりと思いだした。

(ここ…お父さんの研究所だ!)


あかりには、どんな機械だかはわからないが…いろいろな計器や管などがあちこちにつながっている。


「あかりちゃんだよね…?」


急に声をかけられたために、現実にいきなり意識は引き戻されて、あかりは何も答えられなかった。声の振り向いてみると、白衣を着た女性が息を切らせながら、あかりを見ていた。


沈黙を破ったのは、隣にいた久美だった。

「いきなり大声出さないで下さい!…って…」

と言いながら、何かに気づいたように声のほうを向く。

そして、狐につままれたように彼女に尋ねる。

「のっこじゃない!急にどうしたの?あかりちゃんがどうかしたの?」

彼女のほうも、呆気にとられていたが、すぐに状況を把握して答える。

「あ…くみたん…。ちょうど良かった!」


状況を把握していないあかりに気づいた久美は、

「のっこは、とりあえず落ち着いてね…。」

「あかりちゃん。彼女は、のっ…志田法子-しだのりこ-さん。お父さんの助手をしてるから、何度か会ってるかもしれないわね…。わたしと同級生なの。」

と、彼女をあかりに紹介して、落ち着いたところを確認して、聞きはじめる。

「で…のっこは、あかりちゃんにどんな用事なの…?」

「えっと…実は、お父さんのことなんだけど…。」

驚きを隠せない、あかり。法子は、あかりに目を合わせながら、諭すようにゆっくりと、話しはじめた。

「あかりちゃん。落ち着いて聞いてね…。実験中に事故があって…教授、お父さんが、いなくなったの…。」

「い…いなくなった…?」

動揺する、あかり。

「どうも、別の世界に飛ばされてしまったらしいの…。一回だけだけど…連絡取れたから、生きてるわ…。でも、どうすればいいか…わからないの…。」

「異世界…?飛ばされたって…。」

あかりは、お父さんを心配する気持ちで、考えられなくなっていた。

しかし、あかりの反応は、逆に久美の推理にとって鍵となり、あかりに希望を持たせるように伝える。

「あかりちゃん…。もしかしたら、エンペラーのカードは、お父さんなんじゃないのかな?」

「え…?」

久美からの答えを聞いて、少しずつ考えをまとめるあかり。

(お父さんの研究所…そして、お父さんは異世界に…。)

(異世界?もしかして…オルディアスに?)

「久美さん。もしかしたら、お父さんはオルディアスにいるかもしれないってこと…?」

「うん。もしかしたら…だけどね。可能性は0じゃないでしょ?」


話を聞いていて段々と内容が見えなくなってきた法子は、久美に尋ねる。

「くみたん、カードって何…?オルディアスって…?聞いてると、教授と関係ありそうだけど…。」

「あっ…、ゴメン。のっこにはわかんないよね…。」

「うん…。説明お願い。」

「そうね…。あかりちゃん、のっこももしかしたらルーラーかも…。調べてみて?」

「うん…。」

だいぶ状況が飲み込めたあかりは、法子の前に行き、手を差し出す。


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