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#03 少女:想記継承

とある街にある、

『大樹総合病院』

名前にしては小さめな総合病院。

もともと、循環器(特に重度の心臓病)を専門とする病院が、風邪を引いたり、怪我したりした時に呼んでいた医者を常駐させる度に、診療する科が増えた。そういうきっかけで、総合病院になったのだから、小さくても仕方がない。

ただこの地域では、なくてはならない医療施設になっていた。


なにかが、四階建てのその病院に向かっていく。


そう…あの時の光の球だ。


まるで、行き先が分かっているように5階の窓から、奥の病室へと向かっていく。


4階建てなので、実際は4階だが、縁起が悪いのでだいたいの病院に4階はない。もちろんこの病院にもない。


その病室は個室では、ひとりの少女がベッドの上で寝ていた。光の球は音もなく少女に近付くと、胸の辺りで止まり…そして少女の中に消えていった。

光も何もない場所…。少女はひとり、その場所に浮かんでいた。


(これは…夢…?)

少女は漠然とそう思う。

その時、声が聞こえる。

「あなたがこの世界を決めるのです…。」

高くて響きのある、優しい声。

(世界を…決める…?)少女はいきなりの声と命令に、疑問と不安を抱きながら呟く。


その呟きで察したかのように、声は聞こえる。

「私はイデア、創造するもの。

あなたはわたしの力を受け取り、この世界を創造するのです…。」

(わたしが…創造する…世界を?)

まだ少女は困惑している。


「世界があなたがたを必要としているのです。あなたを中心とする縁の深いひとたちに…。」

(………。)

少女は考える。ただ漠然とした不安と、あまりにも突飛な展開に、何も思い付かない。


声は聞こえる。

「願うのです。あなたの思っていることを…。」


(わたしは…空をみたい。)

少女は、青い空を願う。そうすると…浮かんでいた身体が、ゆっくりと落ちて地面に着地する。上には青い空が広がっていた。

下は何もない白の空間。


「そら…?…青い空!」

少女は驚きに満ちた声で、呟く。

しばらくすると、今までの不安が溶けたかのように、好奇心が少女の中で動き出す。それは少女を通して、世界を変えていく。


(世界を創るって、こういうことなんだぁ。)

少女の周りには花が咲き誇り、100m先には小川が流れている。

その先には、山や海、草原や湖…まるで、人間の手が加わっていない自然豊かな場所に…世界が変わる。

目の前に広がる光景に感動していると、また声が聞こえる。

「そろそろ、あなたのいた世界に戻りましょう…。またこの世界に戻れるように…。」

その声を聞いた少女は、突然睡魔に襲われた…。

コンコン

ガラガラガラ…

「あかりちゃん。検温の時間よ。」

「あ…はい…。」

「寝ていたの?」

少女は、眠そうにコクリとうなづく。

(あれは…夢なのかな…)

そう思いながら、看護士さんから体温計を受け取り、脇の下に挟む。

ピピッ

体温計の音。脇から外して、液晶を確認する。

(36.2℃、今日は熱ないみたい…。)

そして、看護士さんに渡す。

「今日は熱ないみたいね。でも、あまり無理しちゃダメだからね。」

体温計を受け取り、確認した看護士はそう言って病室を後にした。

(夢だったのかな…)

少女がそう思って窓の外を眺めたとき…

「夢ではありません…。オルディアス…あなたの世界であり、この世界の全てに影響する世界…。」

(オルディアス…)

自分の作ったあの光景が、頭のなかで広がって行く…。

「あなたに、これを…」

膝の辺りの布団の上に野球の硬球くらいの光の球がある。

少女は両手に取ると、光の球は手に吸い込まれていった。

(あれ…なくなってる…)

「目を閉じて、あなたのカードを見たいと願ってみて…あなたには、見えるはず…」

その声を聞いて、少女は目を瞑ると、願い始める。


少女の中で、うっすらと…少しづつ輪郭が見え始める。

(魔術師…)

「そう…マジシャン。

始まりのカード…。

(始まり…)

「そう…。あなたがこの世界の…全ての始まり…。

他のカードを持つ者とともに…世界を導くのです…。」

(他のカード…!?)

「そう…あなたとの繋がりの深いひとびとが…カードを宿しています。」

(繋がりの深い…)

少女は、自分の知っている人を思い付く限り思い浮かべて行く…。

お父さんや、お母さん…友だちや学校の先生…。

でも、ほとんど病室にいる少女にとって、あまり親しい人は多くない…。

(待つしかないよね…)

今は病室にいることしかできない少女…期待と不安を抱えながら、ベッドで身体を休めていた。

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