#12 異界:親子幽閉
一方、あかりと父親である有坂光樹-こうき-は、石盤の中の世界に取り込まれつつあった。
あかりの父親である、有坂光樹-こうき-が目をさましたのは、研究所のソファだった。
(あれは…夢だったのか…!?)
光樹は、オルディアスで起こったことが、断片的にしか思い出せなくなっていた。
静寂の中、突然に電話が鳴り響く。慣れた手つきで、テーブルにある電話の受話器を取ると、
慌てた様子の女性の声が聞こえた。
「大樹総合病院ですが、有坂さんですよね?」
(大樹総合病院!あかりに何かあったのか…!?)
焦る気持ちを抑えて、冷静になるように自分に言い聞かせるように、ゆっくりと、返事をする。
「はい。有坂です。娘に何かあったんですか?」
ふと、光樹の頭によぎる記憶…。それは、何らかの影響で娘のあかりが、二週間前から意識不明になっているというものだった。
「たった今、意識が回復されたので…すぐ来て下さい。お母さんももう来てますので。」「わかりました。すぐに行きます。」
喜びと、娘にすぐに逢いたいという気持ちが先走りして、そういうとすぐに受話器を戻し、病院へと急いだ。
戸締まりをして、部屋をカードキーでロックしたときに記憶が浮かぶ。
(そうか…三年前と…)
四年くらい前、妻であり、あかりの母親である、ひかりも大樹総合病院に入院していた。告げられた病名は、原因不明の心臓病。
一年くらいたった、三年前の今日、ひかりの病は、原因不明のまま奇跡的に回復したのである。
(もしかしたら…あかりも…)
光樹は、かすかな希望を胸に、病院へと急いだ。
石盤の中の世界に入った時に刷り込まれた記憶だと気付かずに…。
「あかり…!よかった…。」
母である、ひかりの声でびっくりした、あかりは、きょとんとした声で、返事をする。
「お…お母さん…。どうしたの…?」
あかりが大丈夫だとわかった、ひかりは落ち着きを取り戻して、伝える。
「寝たまま…長い間…気を失ってたから、そのまま死んじゃうんじゃないか…心配してたのよ…。」
(そんなに長い間…それに体が…楽になった気がする…。)
あかりは、なんだかわからない違和感を覚えたが…長い間、気を失っていたせいだろうと思い込んでいた。
ガラガラ…。
「だいぶ…ぐっすり寝てたのね…。今までこんなに寝てたことないから…あかりちゃんの体に異常がないか、検査しなくちゃね…。また呼びにくるからね。」
看護婦に言われて、
「うん、わかった。」
と、返事をする。
(なんか違う気がする…。でも、わたしのところに来るのは、いつも由美さんだよね…。)
光樹と同様に、記憶を刷り込まれ…違和感を感じながらも、虚構の世界だと気づかない、あかり。
もちろん、法子たちが二人を取り戻すため戦っているとは知るよしもなく…。