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#11 初戦:石盤乱舞


「みんな成功だね☆」

「そうですね。あかりさんだけではなく、私達にもこんな"力"があったんですね…。」

「早くあかりを助けないとね…。」

「のっこ、他に方法はありそう?」

「やっぱり、教授とあかりちゃんが気づかないと難しいわ…。外から壊せないから…。」

全員が各々の能力の開放に成功したことに喜び、改めてあかり達親子を助ける方法を模索していると、愛美が異変に気付く。

「みんな、何か来るよ!」全員に緊張感が張り詰める。

「チュートリアルの後にすぐ本番って、ゲームじゃないんだから!」

久美はこの状況をちゃかすように叫び、銃を構えて相手を待つ。

「サニア達も力を貸してくれてるんだ。早く突破して、助けよう!」

陽はそう気合いを入れて、剣を構える。

「気を付けて下さいね、皆さん。」

注意を促しながら、紗夜も集中し始める。

「当たっちゃいけないって…シューティングみたいだね。それなら…。」

愛美は思っていることを口にしながら、魔法のイメージを固めていく。


ガタガタ…

カンカン…

イナゴの大群のように、進行方向を蹴散らし、お互いにぶつかりながら向かってくる無数の石盤の群れ。

数万、いや数十万はあるだろう石盤がまるで、黒い暗雲か一つの巨大な芋虫のように迫ってきている。

「ちょ、ちょっと凄い数…。これ全部相手にするの!?」

流石に、動揺する愛美。

(確かに、凄い数だけど…みんなの力を合わせれば、なんとかできるわ。いえ…なんとかしなきゃ!)

法子は、冷静になってみんなに指示する。

「みんな、よく聞いてね。

数は凄いけど、一つ一つが意志を持ってる訳じゃないわ。

まず、愛美さん。魔法で壁を…属性は炎でも氷でも何でも良いから。」

「うん。わかった☆」

早速イメージを始める愛美。

「次に久美たん、愛美さんが作った壁の右側を塞いで。」

「OK。マナ、属性とタイミング決めて、合図して。」

「OK、マスター。属性は氷、"カンバージュ"のあと、二回転でキャストするから☆」

「了解、マナ。」

属性やタイミングなどを慣れたように話す久美と愛美。

「次に、紗夜さんは左を塞いで。」

「わかりました。」

コクリと小さく頷きながら、返事をする紗夜。

「陽さんには、三人が作った壁からこぼれたのを払い落として。」

「了解。」

陽は、持っている剣の意志を確かめるように一目見て、言葉を返す。


ガタガタ…カンカン…

近づいてくる無数の石盤。

「みんな、戦闘開始よ!」

法子の合図とともに、それぞれ準備に入る。

「みんな準備できたら、合図して!」

愛美は、氷の魔法をイメージしながら、叫ぶように伝える。

陽は左手で攻撃のモーションを確認し、

「いつでもいいぜ!」と気合いを入れながら返事をする。「こちらも完了です。」

陽のあとを追うように返事をする紗夜。久美もあとに続く。

「こっちもOK!」

久美の返事を確認し、愛美はカウントし始める。

「3、2、1、カンバージュ!」

杖の液晶には、"Ispiew"という文字が映る。


紗夜も弓を持つ手を水平に構え、集中を始める。



愛美が杖を掲げ、小さい円を描く。


久美も注射器銃を構え狙いを定める。


紗夜の弓には光がともり、弦と矢の輪郭が現れはじめる。



杖が二回目の円を描きはじめると、陽は剣を投げるように構える。


杖が回転を終えて、光を帯び、愛美の声が響く。

「アイスパイウ!」

その声を聞き、久美も引き金を引く。


愛美たちと石盤の群れを分断するように、いくつもの氷の槍がバリケードのように、折り重なりながら壁を作る。

紗夜は狙いを定めその左に矢を放つ。

放たれた矢は六つに分裂し、規則正しく星を描くように石盤の群れに向かっていく。



久美によって、氷槍の壁の右に発射された注射器は壁に近づくと割れて、中に入った液体が網のように凍っていく。


左の方では矢を基準点に五芒星を描き魔法陣ができあがる。魔法陣からは氷の粒を氷の壁に吹き付け、着実に壁を左側へ広げてゆく。


法子は、今の状況とイメージを重ね本に込めながら、打開策を探している。



陽は氷壁の上に、剣を投げて停止させて、近寄ってくる石壁を待ち構える。正面に位置する氷のバリケードは愛美の力により、どんどん大きく高くなっていく。


左側では紗夜が作った矢の魔法陣によって、氷のフェンスが伸びている。


右側では久美が次々と、注射器を最初に作った氷のネットに少しずつ右側にずらしながら打ち込み、網目を細かくしながら右に広げてゆく。


カンカンカン…

ガラガラガラ…

無数の石盤たちは、もう氷の壁の近くまで迫っている。


陽の剣が無数の石盤たちに向かっていき、高速で立ち回りながら、群の左右を往復して氷の壁へと追い込んでゆく。


高さ10m、長さ50mを超える氷の壁に阻まれた石盤たちは、進路も退路もふさがれながら、バルティアリスの下にたどり着こうと、氷の壁に何度も打ちつけている。


持久戦になればなるほど、法子たちには不利になる…。


焦る気持ちを抑えながら、集中しバルティアリスの弱点を探していく法子。


(もしかしたら…)

質感や外見はどう見ても石みたいなのだが、ここは想像力が大きく左右される世界。今までの先入観をすべて捨て去り、バルティアリスという物体と、飛んでくる石盤のようなものという分かった事実だけをイメージして、本に込めていく。頭の中に、"カルジドレイル"という言葉が浮かぶ。


その言葉を元に、イメージし、本の知識を導きだしていく。

(あった…弱点は…)

導きだした答えを叫ぶようにみんなに伝える。

「みんな、弱点は火炎よ!」



「リーダー、了解!」

愛美は返事をすると、今までの氷のバリケードのイメージを残しながら、炎の魔法をイメージする。『イメージできたら、"カンバージュ"の代わりに"イクト・カンバージス"と唱えて!』

急に頭の中に直接、ステラの声が愛美に届く。

(了解、ステラ。)


遅れて紗夜も

「わかりました。法子さん。」

と返事をすると、ルーナが呼びかける。

『紗夜さん。魔法陣の中心に、炎のイメージをした矢を放てば、属性が変わります。』

今の魔法陣を固定のイメージとして、炎の矢を頭に描く。


「OK!法子さん。あたしは剣を振り回すだけだけどね。」

陽がちょっと皮肉っぽい返事を返すと、

『炎なら使えるよ。』

その皮肉を不満そうに答えるサニア。

(そうなの?)

『あたいは、"太陽"の力を司ってる。氷や水は使えないけど、炎なら得意さ。』

(なるほど!それでどうすれば使えるんだ?)

『感じて…強く想うのさ。太陽の熱と光を。』

(まずは感じればいいんだね?)

陽は、夏の日当たりの暑さと強さをイメージしていく。

『そう…。そんな感じ。それを剣に乗せるんだ。』

(分かった。乗せるんだね。)

陽は、剣に先ほどのイメージを乗せていく。

剣の周りがだんだんと揺らめいていく。

しばらくすると、たちまち火がついた。

(できた!)

『さあ、やろうぜ!』

(ありがとう。サニア…。行くよ!)

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