入学式-6
入学式をショートカットしたい。
しかし現実はRボタンを押して飛ばせるわけでもなく、始まってしまった入学式はとても長い。嬉しい行事だけど退屈だ。
今は新入生へ校長先生がどうのこうの言っている。私はそんなに真面目な方ではないから適当に聞き流してしまっているけど、流石に長過ぎではないだろうか?早く終わってほしい…と心の中で愚痴っていたら、いつの間にか次のプログラムに移っていた。
『生徒会長の言葉』
その言葉と同時に壇上へ上がる生徒会長の姿に周囲がざわめく。
美しいプラチナブロンドのさらさらの髪、凛々しい佇まい、切れ長の目、シュッとした高い鼻筋、綺麗な形をしたまるで花弁の様な唇。その人はそこにいるだけでオーラが違った。
それが我ら瑞城学園の学園一の美形と言われる生徒会長だ。
そして、彼もまた桜良の攻略キャラクターである。
そんな生徒会長にほとんどの女子は目を奪われ、うっとりしている。学園一と言われている美形は伊達じゃないな、と私が感心していると、生徒会長が祝辞を述べる。
その声にまた女子は腰砕けだ。
成る程、入学式では生徒会長が出てきてたのか、ゲームで入学式に生徒会長が出てきた記憶はない。なんたって主人公の桜良は眠過ぎて意識を保つのに必死だったみたいだから。それであのイベントに繋がるわけか、と色々思い出していると悩殺兵器と化した生徒会長の祝辞が終わった。どことなく名残惜しげな雰囲気が漂っている。
『閉会式』
まさか生徒会長の言葉がトリだったという事には驚きだ。でもこれでやっと堅苦しい入学式が終わりかと思うと一気に力が抜けた。
今日は後、教室で色々プリントやら配られて終わりなので楽だな。
あ、あと担任の先生も見られるイベントがある。楽しみだな。
教室に着いたら、直ぐに桜良の下へ向かった。
「お疲れ様、間に合って良かったね」
集合場所に遅れる事はあったが入学式に遅れるとは…まぁ、シナリオだから仕方ないとしても…
「茜音〜!ありがとう!誤魔化してくれてたって…」
「大変だった」
「うー……すみませんでした」
誤魔化すのがそれなりに大変だったのは本当だし、私の良心をちょっと傷付けてしまったので苦笑しながら言うと桜良は手を合わせてごめんなさいのポーズをしている。それに笑みがこぼれた。
「以後、気をつける様に」
「はい……」
しょぼんとしている桜良の頭を撫でる。ふふ、怒られた犬みたいで可愛い。
「甘やかし過ぎだと思うぞ」
呆れた顔をした涼ちゃんがそう言ってきた。普段自分が1番甘やかしてるくせに、と喉から出掛かった言葉は涼ちゃんの為にも飲み込んでおく。
「涼もありがと……電話してくれて」
「中々来ないから仕方なくだ、仕方なく」
甘やかすななんて言ってたけど……やっぱり涼ちゃん、説得力全然ないよ。
「素直じゃない……」
そう私が言うと
「あ、茜音!変な誤解すんな!」
と、言って顔を赤くし、照れながら怒る涼ちゃんに桜良と顔を合わせてくすくす笑う。
「おい、聞いてんのか」
「聞いてる聞いてる」
「聞いてるよ」
しばらく涼ちゃんをからかいながら喋っていると教室の扉が開く。
「これからHRを始める、席に着いて」
あぁ、やっと来た。そう思って声の方へ意識を向ける。そして担任の先生……と入学式の前に私に話し掛けてくれた先生が教室に入って来ていた。
乙女ゲームの知識があまりない方に説明させて頂くと、ゲームのRボタン、もしくはLボタンで大体の乙女ゲームはお話を飛ばせる(早送りできる)スキップと言う機能が使えます。また、小説に出てきた用語などでわからないものがあればその都度書くので教えて頂きたいと思います。