入学式-3
最悪だ。どうしてこんな短時間ではぐれてしまったのか…
うう、涼ちゃんはどこ?と探して見るが、見渡しても人、人、人でわからない。
色々見渡してぐるぐる頭で考えていたら気持ち悪くなってしまった…少し端の方へ行こう。壁に寄りかかり、しゃがんで携帯を見てみる。着信はきていなかったからまだ気付いてないのかもしれない。
まぁ、携帯もあるし大丈夫かな?と思って少し休んでいく。あ、ちなみに携帯を見たら桜良からメールが来ていた。
【ごめんなさ〜い!!><】
との事。相変わらずだな〜なんて思っているとさっきいたクラス分けの看板が出ているところに人だかりが出来ている。
主に女子達がいるのでもしかして攻略キャラクターの1人がいるのかな?なんて思っていると上から「大丈夫か?」と声を掛けられた。
あ、この人。攻略キャラクターだ。
「立てるか?」
「はい、少し休んでいただけです」
立って見せると表情は分かり辛いが、ホッとした雰囲気になった……気がする。
「そうか、良かった。具合が悪いのか?」
「少し」
「歩けるか?」
「大丈夫です。少し気分が悪くなっただけで休んだら回復します」
「しかし……保健室に行った方が良くないか?」
随分心配症なんだな、と思った。
この人は私達のクラスの委員長になる人だ。
責任感が強くて努力家の頼れる男子で、確か硬派な感じが格好いいとネットとかには書かれていた。
「ありがとうございます。そこまで悪くないし、友人を待っているのでその間休んでいただけですから」
両手を前に出し、そんなに心配しなくても大丈夫だとアピールする。それが伝わったのか
「分かった、じゃあ気を付けて」
と言い、ペコリと頭を下げ去って行く。去って行く後ろ姿に私も頭を下げる。
保健室に連れ去られなくて良かった、と思っていると「見つけた」と肩を掴まれた。
「お前、何はぐれてるんだ」
涼ちゃんだった。
少し怒ってるのか肩を掴む力が強い。
「ごめんなさい」
「電話もしないで、何かあったかと思った」
探してくれたのだろう。少し疲れている。
「行くぞ」
「うん」
「服掴んどけ」
「うん」
後ろの服の裾を掴ませてもらい、涼ちゃんに着いて行くと無事下駄箱まで着いた。服をクイッと少し引っ張る。
「涼ちゃん」
「なんだ」
「ありがとう」
「……別に、大した事はしてないだろ」
照れているようだ。可愛い。
さりげなく優しく出来るのが涼ちゃんの良い所であり、短所。もっとこう、たまには積極的にならないと。
「それにお前、小さいからはぐれたら見付けにくいんだよ。気を付けろよな」
「小さくないよ、150センチは過ぎてるし」
「いや、そんな自信満々に言われても人混みに紛れたら余裕で見えなくなるから」
「これから大きく育つから」
「望みは薄いと思うぞ?」
「涼ちゃんのハゲ」
「ハゲてねーよ!」
まぁ、ハゲても好きでいる自信はあるけど、身長が小さいのを気にしている人に小さいは禁句だから。怒る。
150センチ過ぎたら大人だよ大人。あと10センチはほしいけど。