表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/38

大人たちへ相談-3

「知っていたんですか?」


私がそう問い掛けると沙原先生は申し訳なさそうに眉を下げた。


「まあちょっとだけね?」


人差し指と親指の間を少し開ける動作をする沙原先生。


私が誰を追いかけていたのか沙原先生は気付いていた、だから『人生相談、いたしましょう!』なんて事を言い出したのか…そう思えば先生の奇怪な言動にも納得がいく。

いや、奇怪は失礼だろうか?仮にも心配してくれていたんだし。


「1人で無理してたみたいだったから、ちょっとだけアドバイスをと思ったんだけど…怒ったかしら?」

「……いいえ」


首を少し傾げながらこちらを窺う先生。

怒りはしない、けれどなんだか恥ずかしくなって俯いた。同時に涙が出てきそうになる。


私自身、この学校に来た時少し不安だったのだ。必ずとは言わずともバットエンドが待っている未来を知っている為、絶対失敗出来ないと気を張りすぎていたのかもしれない。


「それに優作も心配してたし」

「え?」


私が真堂先生の方を向くと、急に話題を振られた先生は慌てながらも応えてくれる。


「…じ、実は…春日が言っていたんだ」

「桜良が…?」

「最近秋野が無理をしている、顔色が悪いし元気がないと。それは自分のせいじゃないかと言っていた」

「え?」


どういう事だろう、どうして桜良がそんな事を思ったのだろうか?


「自分が雪村と友人になってほしいという言葉が原因じゃないかと」


答えはすぐに真堂先生が教えてくれた。

昨日来た時もその前も心配げにはしていたけれど悩んでいるようには見えなかったのに。


「確かに俺から見ていても秋野は最近少しやつれていたし、昨日倒れたと聞いて驚いていたんだ……春日も凄く心配していたんだぞ」


見上げると真堂先生が心配げに私を見ている、それと同時に彼女の泣きそうな顔が思い浮かんだ。

私はまた、彼女を泣かせてしまったのかもしれない……


確かに私が最近無理をしていたのは雪村君と仲良くなろうとしていたことが原因だ。

それをずっと気に病んでいたのだろうか、先生に相談するくらいに……

もしかしたら涼ちゃんにも心配掛けていたのかもしれないな……だから昨日無理するな、なんて言ってくれたのだとしたら私は…


私は、なんて幸せ者なんだろう。大好きな人達に心配されて、気遣われて、とても大事にされている。


「そっか……」


桜良達の思いを知ると耐えきれず自然に目から涙が伝っていた。

いつでも変わらない、優しくて暖かい私の幼馴染。ああ愛おしい。


だからこそ私は、あの2人を絶対に悲しませたくない。


改めて決意をしてからふと顔を上げてみたら先生達がこちらを見ていた。それはまるで幼子を見るような親のような顔で、もしくは小動物でも慈しむような微笑みで。


って、2人の目線の先にいるのは間違いなく私だ!!

うわああ!!何人前で泣いているんだろう私は!恥ずかしいいい!!

恥ずかしさで途端に我に返り、涙をぐしぐしと制服で拭き取りわざとらしく咳をする。


「ん、んんっ!!ああ、ええと……まあ、あの、あ、りがとうございます。あ、あと心配をお掛けしてすみませんでした」


若干の鼻声と私の慌てぶりにクスクスと笑われる。


「何笑ってるんですかっ」

「いやあ、可愛いなあーって、ねえ?優作」

「え……えっと、まあ微笑ましいな」


ああ、何だろうこの空気!いたたまれない!あの真堂先生が気遣わしげに笑っていらっしゃる!

確かに心配されたのは嬉しかったのだけども、先生達に、しかも真堂先生に、こ、こんな恥ずかしいとこ見られた!

この世界一応ゲーム世界なんだから記憶の抹消って出来ないのかな……


でもまぁその前に、きちんとしておく事があるだろう。

幼馴染達がここまで心配してくれているのだ、私がうじうじしてては仕方ない。

だから思い切って聞いてみる事にした。


「先生」

「ん?」

「私が雪村君と仲良くなるにはどうしたら良いと思いますか」


アドバイスを頂けると言うのなら今はそれに甘えてしまおう。恥ずかしいとかそんな事気にしていられない。だって、1人で何とか出来る事なんて限られているんだし、今そう学んだのだから。


「そうだな……まずきちんと話をする事じゃないか?」


真堂先生がアイデアを出してくれるが今のままでは無理だろう、


「避けられてるんです、話聞いてくれますかね?」


その言葉を聞いて真堂先生はうーんと唸った。


「そうねえ、しばらく時間を置いて油断したところを捕まえるのもありじゃないかしら、それで無理矢理閉じ込めちゃえば?」


にこっと天使のような笑顔で物騒な事をさらりと言ってる先生。それにあれ、なんか聞いたことあるな~そんなやり方、と既視感を感じてしまうのは仕方のない事だと思う。

私が逆に雪村君を閉じ込めちゃうの?そんな事したら私が完全にヤンデレじゃないか!!ストーカーもしちゃったし!


「お前な…その後に話なんて出来るのか?」

「でも、捕まえるには有効な手よ?まずは逃げる相手をきちんと土俵に上げなきゃ」


口元に人差し指を当て、いたずらっ子のようにウィンクする沙原先生。最初はどうかと思ったけど沙原先生は結構的確な答えをくれている。

そうか、時間を置くか…確かに良いかもしれない。雪村君がなんで避け始めたのかは知らないが、私も彼も今は距離を置いて一旦冷静になるべきだ。今のままじゃ捕まえるのすら難しい。


閉じ込めるかは後で考えよう


「しかしなぁ…無理矢理捕まえて嫌われるかもしれないぞ」

「ああ、それなら大丈夫です。すでに嫌われてますから」

「だそうよ?」

「そ、そうか…」

「そうね、じゃあもう思いっきり出来るわね、嫌われてるなら多少の荒療治も必要だと思うわ」

「なるほど…」


沙原先生のアイデアを色々と聞いていく中でぼそりと真堂先生が疲れた顔をして何かを呟いた気がした。


「はあ…秋野が馬鹿に染められていく…」


☆★☆


「ありがとうございました」


ぺこりと2人に頭を下げる。

あれから色々アイデアをもらい随分経ってしまった外は夕暮れをとっくに過ぎ、星もちらほら出ている。沙原先生からは色んな悪知恵を受け継いでしまったな。それを真堂先生は見守ってくれてはいたが内心は呆れていたのだろう。今とても疲れた顔をしながら会議室のカギを閉めている、お疲れ様です。


「頑張って、成功を祈っているわ」


ガッツポーズをしながら応援してくれる沙原先生に笑いかけた後、私は早く帰らなくちゃと歩みを早め、玄関へ向かう事にした。

たいっへん遅くなりました>< スミマセン!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ