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大人たちへ相談‐1

「まあこれだけなんだが…悪かったな、呼び出した上にここまで探させてしまって」

「いえ、私が休んだのがいけないんですし」

「そういえば病み上がりなんだよな……」


責任を感じたのか真堂先生は申し訳なさそうに謝る。こう何度も謝られるのもなんだか悪い気がするなあ…


「先生」

「ん?」

「あの…そんなに謝らないで下さい、さすがにそう何度も先生に謝られるとこちらも気を使ってしまいますし」

「ああ、すまな」

「ほらまた」

「面目ない…」


私が指摘すると途端に眉をハの字にしてしゅんとしている。しゅんとしている先生も可愛いぞ!!うん!

って、ああもう、いつまでも萌え状態でいちゃダメだ私、いい加減目を覚ませ。

すると何を思ったのか今度は沙原先生がいきなり「じゃあここは名誉挽回といこうじゃない」と言い出した。


何をわけの分からない事を言っているのだろう、この人は。

そして私を指差しながら、


「THE、人生相談いたしましょう!」


と可愛くウィンクしながら言った。


…沈黙。


「真堂先生もう気にしないで下さい、大丈夫ですから」

「すまな…いや、ありがとう」


落ち込む真堂先生を私は励ます。なんだか先生思っていた以上にヘタレになっているのは気のせいだろうか?


「無視しないでぇ!!」


ばんばん!っと机を叩く沙原先生。

せっかく何もなかったフリをしたというのに…真堂先生もそう思ったのだろう、面倒臭いといった感じに沙原先生へ話し掛ける。


「何を言ってるんだお前は」


その言葉の後に『頭大丈夫か?』という言葉が脳内再生されたのは仕方のない事だと思う。


「だから、あんたは教師のくせに生徒に気を遣わせて迷惑掛けてるんだからちょっと名誉挽回といった感じに秋野さんの悩みをきいてあげたら良いんじゃないのって事よ」


そう早口でまくし立てた沙原先生に真堂先生はグッと言葉を飲み込んで黙ってしまう。

え?いやいやいや先生、負けるの早すぎでしょう、もう少し粘りましょうよ!それに私は迷惑を掛けられた覚えまったくないし。


「そうだな……秋野には迷惑を掛けた、とは思うからな…俺に出来る事なら何だってするが」

「そうでしょう?」


沙原先生は満足気に頷く。


な ん で そうなるっ…!私を無視してポンポン話が進むのやめて頂きたい。

しかし先生、気軽に何でもするなんて言ってはいけませんよ。ほんとになんでもしてくれるならなんでもさせちゃいますよ、私は。

は、白衣とか…眼鏡とかつけて写真撮らせて頂けると嬉しいカナーなんて……あははは、一瞬でも思ってしまった私を殴りたい。反省。


普段私も桜良や涼ちゃんになら何でもしてあげられるって思ってるけれど、私が2人に何かするならともかく、先生に何かしてもらう所以はやっぱりないしな、断ろう。


「いえ、結構で「入学したてなんだし何か困った事とかはないかしら?」


しかし私の言葉をバッサリ遮ぎり、勝手に話を続ける沙原先生。

顔を見たらニコニコ笑いながらこちらを見ている。分っててやったなこの人。思わず睨んでしまう。


確信犯な沙原先生にこれは断っても押し切られるのがオチだと悟った私は一応何か困った事はなかったか考えてみたが特に学校に対して相談することも無いなと思いながらもふとひとつ、面倒な事が頭によぎった。


雪村君の事を相談してみようか?


いや、でも…と少し考え直す。意外とそういう話を先生達に相談するのは勇気がいるものだ。というか素直に恥ずかしい。

けれど私の変化に目敏く気付いた沙原先生は容赦無く「何かあるみたいね」と含みのある笑顔で私に言った。このまま一人で考えても埒が明かないし、沙原先生には気付かれてしまったし、もういいか、と内心投げやりになりながらも口を開いた。


「まぁ……そうですね…友人になりたい人が1人いるんですが、なかなか仲良くなれなくて…」

「あら、意外と真面目…」

「薫、黙ってろ」


沙原先生の言葉を真堂先生が制す。真堂先生はこちらを見て私の言葉の続きを促した。


「えっと、話し掛けても最近は軽い挨拶くらいしか返してくれなくなって…それに今日からはもう避けられはじめて…」

「恥ずかしがってるだけじゃないのかしら?」

「そんな感じはしませんでした」


あの態度は流石に恥ずかしがっている姿じゃないだろうと今日の雪村君を思い出しながら私がどうすれば良いのか、と目で訴え、先生達を見ると真堂先生が何か考えるそぶりを見せた後、話し始めた。


「そうだな、そもそもなぜ秋野はその子と仲良くなりたいんだ?避けられるくらい話し掛けに行ってるのは何故だ?」

「それは……」


言葉が詰まる。あれ、なんで私、雪村君とそこまで仲良くなりたいんだろう?


桜良をバットエンドにさせないように監視する為?

それともただ単に仲良くしたい為?


私は首をひねりながら考える。私が最初に仲良くなろうと決めたのは桜良に頼まれたから、もっと仲良くなろうとしたのは涼ちゃんと桜良、雪村君達が自然体に接する様になって疎外感を感じ、私だけが仲間外れの様に感じたからだ。


私は……私自身は特に彼と仲良くなろうと思ってはいない。仲良くなってみたいとは思ったけれど積極的になりたいとは思っていなかった。せめて彼を近くで見ていられる位置に居れれば良かったのだ。


ハッと我に返ったように私は思い返した。そうだ、ただ、傍に居られる存在であれば良かったのだ。

何故今までそこに気付かなかったんだろうか。無理に話し掛けに行く必要なんてなし彼の傍には桜良が居て、涼ちゃんも既に仲良くなった後で私の"本来の目的"は達成されている。


私とも距離を近付ける必要はないじゃないか!


今更こんな事に気付くなんて…目の前の事に精一杯になりすぎて本来の目的を見失っていた。こんなんじゃ駄目だ。これじゃ二人を幸せになんて出来ないじゃないか。私は悔しくなってぎゅっと拳を握る。


けれど今は落ち込む暇はない、先生の質問に答えないといけないし今更仲良くなる必要はなくなったとは言えないし…


「……特に、理由はないんです」


それでも結局何の言い訳も考え付かず私はある意味最低な答えを言ってしまった。




先生達の見せどころがやってきた?かもしれません。 茜音は王道なものを好きな感じですね、白衣眼鏡…

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