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中途半端な転校生-9

私が若干落ち込んで黙っていると何か勘違いをしたのか先生はすまないと謝ってきた。


「固い話をしてしまって、悪かったな」


いやいや先生は何も悪くありませんよ!!悪いのは勝手に撃沈した私ですし!だからそんなにすまなそうな顔をしないでほしい。


「そんな事ないです、すごく勉強になりました」


私の恋が成就する道が遠いという事を実感しました。


「そうか?それなら良いんだが…どうも俺が話すと面白みのない話ばかりになってしまうんだ…国語の担当なのに恥ずかしいな」


いや別にそれは国語とかの担当関係ないのではないだろうか…


「それは先生の性格だと思いますよ?」

「つまり面白味がないという事なのか?」


先生は若干絶望的な目で私を見ていた。ええ!そんなつもりじゃないんですよ!


「ち、違います!!そうではなくてですね、先生は物事に真摯というか、私の話を真剣に考えて下さって答えをくださっているだけですし、それに先生の話を私は面白くないなんて思いませんでしたよ!どう感じるかは人それぞれですよ!」


私が慌ててフォローをいれると先生はふ、っと柔らかく笑った。

先生はイケメンである、つまり、笑った顔がマジで格好良い。なにそれお得。

私が先生の思わぬ笑顔にドキドキしながら悶えていると


「ありがとう。友人にもよく理屈っぽいと言われるんだが…けど、そうだな、どう取るかは人それぞれか」


お礼を言われてしまった。そんな恐れ多い!!


「は、はい!そうですよ!」

「そうか…」


何か思い耽る事でもあるのだろうか遠くを見ながら先生はしばらく黙った後、また、ありがとうと私に向き合ってお礼を言う。なにこのイケメンつらい。


そろそろ時間になったので班の子達と私は帰りのバスに乗るための集合場所へ向かった。

今回の出来事で先生に対する私の好感度はうなぎのぼりだ。先生になら桜良を任せても大丈夫だなと思った私は頭の中で許可の判子を先生に押す。


その桜良達のいる班は何やら問題があったらしく、先生達に怒られていた。

しかし、本当の問題はその後の事だ。何やら遠足から帰ってきた後から涼ちゃんと雪村君の間に流れていたお互いが遠慮している空気が完全に取り払われていた。一体何があったのか…それは謎だが、私の中では大問題だ。完全においてけぼりである。


そこから私の雪村君に対するストーカー化は酷くなっていった。


◇◆◇


「おはよう雪村君」

「……おはよう」

「今日は一緒に行っても良いかな?」

「ごめん」

「そっかじゃあまたね」


まずは朝の登校時、私はいつもより2時間近く早く家を出て雪村君を待ち伏せしている。私たちより1時間早く登校すると知った私は雪村君を待ち伏せて挨拶だけでもするように心がけた。本当は一緒に行ければと誘っているのだがそれはいつも断られている。雪村君も断るのに慣れた感がある。そんな慣れ方はして欲しくなかった。


それに最近は車で登校する時もあるらしく、それも叶わない日が何度かある。そんな時は普通に学校に行ってすぐに挨拶をするので雪村君が若干引いているような気がするが気にしないでおこう。


お昼はいつも一緒に食べているので特に何もしない。少し雪村君を見つめている時間が長いくらいだ。

授業の合間にある休み時間にもたまに話し掛けに行っているがこれといって仲良くなった感じはしない。


帰りになると今度は下駄箱で待ち伏せして帰りの誘いをする、が断られる。もうそろそろ10日だ。10日近くもこんな事を続けている。完全にストーカー化した私は途中で止めようかとも思った、けれどここまでやってきて私から折れるなんて敗北した気分になると意気地になって止められない。流石にあちらも不平不満の一言を行ってきても良いのではないだろうかとも思うが何も言ってこない。故に、止めるタイミングを失うという悪循環。なにこれ私もつらい。


学校からの帰り道、ため息を吐く。最近は桜良達ともあまり帰っていない…何をしているのだろう私は。これじゃあ仲良くなるどころか逆に嫌われている気がするのは私の気のせいではないはずだ。


家に帰り、どうすればいいんだと頭を抱えながらも今日も日課にしてる雪村君の家を眺める作業についた。ほんとマジストーカー…どうしてこうなった。いや、でもほとんどお向かいだからおうちがよく見えるだけなんだよ、と言い訳させて頂こう。もう遅い気もするが。


ははは、と誰もいない部屋に乾いた笑いが響く。それがものすごく虚しい。


雪村君が家に帰ってくると必ず2階の部屋の電気が付く。1階にあるだろうリビングはたまに付いているなと思っていてもすぐに消えてしまう。


両親が共働きらしいから家に帰ったら大半は自分の部屋で過ごしているのだろうか、リビングでの団欒はほとんどないのだと推測出来る。全ては私の想像でしかないけれどなんだかそれは寂しい気もする。うちではいつもお母さんも下の兄妹たちも待っていてくれるから寂しくないし。でも1人が気楽という場合もあるし本人がどう思っているかは分からないがとりあえず雪村君は帰ってからも1人なのか…と思っているとふと乙女ゲームでの彼が思い出された。


あ、なるほどこの状態がヤンデレになった雪村君が桜良を監きげふんげふん、逃がさないための強行手段に移させた原因のひとつか!なんて思ったらはあ、とまたため息が。最近ため息ばっかりだ…。早く何とかしないと。


こんなに友達になる事って難しかっただろうか。涼ちゃんは一体どんなマジックを使ったのか聞いてみたいが、自分で仲良くなりたいと言ってしまった手前、聞くのが躊躇われる。早く何とかしないと…と思ってはいるが、なんにも思いつかない。


結局悩んでも悩んでも答えは出ず、次の日私はまたいつも通り待ち伏せをしようと雪村君を待っているとなんだか目の前がチカチカする。呼吸も苦しくなり、動けなくなった。しゃがむのもキツく、私はそのまま倒れ込んでしまう。


その時、誰かが声を掛けてくれる。見慣れた靴だったので思わずほぼ無意識に「おはよう」と言った後、私は意識を保てなくなっていた。

お前がストーカーになってどうすんだ!という感じですね…

先生の事で舞い上がっていたら今度は知らぬ間に友人達が仲良くなっていてテンションガタ落ちという上げて落とす作戦成功です。

このお話はもう少しで終わるはず…なのであと少しお付き合い下さい。

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