お昼と会長と金髪と-2
豪華な庭の真ん中に、美形2人と少女が2人。なんとも落ち着かない。
私達はさっさと食べて教室に戻ろうと思い、お弁当を広げた。
「あ、そういえばまだ自己紹介してなかったね」
「そういえばそうですね」
「俺の名前は早乙女太陽、風紀委員長をしてるんだ。で、こっちの怖い顔してるのが
水城雅貴、現生徒会の会長だよ。どっちも3年なんだ」
よろしくね、と早乙女先輩が言ってきたので私達もよろしくお願いしますと言っておいた。
「えっと、私は春日桜良です。1年です」
「同じく1年の秋野茜音です」
その後なんて言っていいのか分からずにまた、よろしくお願いしますと言うハメになった。
「君は茜音ちゃんって言うんだ。桜良ちゃんは入学式の時に付けてた名札見て名前覚えたんだけど
茜音ちゃんとは朝会ったばっかりだしね…入学おめでとう、学校で何か困ったことがあったらなんでも言ってね」
出来れば私の名前だけは抹消して頂きたいのだが、何か困った時確かに頼りになりそうだし頭の片隅にでも置いておこう。先輩たちのこと。
「おい、お喋りもいいが時間を忘れるなよ」
「あ、そうだね!じゃあ食べよっか」
早乙女先輩がいただきますと声を掛けたと同時に私達もお弁当を食べた。
早乙女先輩のお弁当はお肉中心でご飯にもお肉が巻かれていた。ちょっと意外だ。ハンバーグや唐揚げみたいに子供が好きそうな食べ物が好きなイメージではあったけれどここまでお肉が好きとは…ギャップというものなのだろうか…
反対に会長はとても品格のあるお弁当に敷き詰められた栄養バランスも色味も考えられたお弁当だった。私的にはこっちのが美味しそうだ。
しかもご飯が玄米ときた。ヘルシー
「2人のお弁当はかわいいねー」
「そうですか?冷凍食品ばっかりですが」
「お、お母さんが作ってくれてるんです」
「そうなんだ、美味しそうだね」
「美味しそうに見えるのかお前は」
会長が私のお弁当を見て早乙女先輩に言っているように見えた。最近の冷凍食品は美味しいのにな
まあ、でも手作りが1番良いのは認めてます。
「会長のお弁当は豪華でとっても美味しそうですね」
私がそう言うと、無視された。何でだ、酷い。
「えーそうかなー?肉足りないよ!」
「そうでしょうか?とてもバランスの良いおかずに見えますが」
「まぁ、そう作らせてるからな」
会長が答えると桜良が「会長も作ってもらっているんですか?」と聞く。
「ああ、専属の料理人がいるからな」
「え!」
「いいよねー、毎日美味しいもの食べ放題だよ」
「そんな事ない」
「もしかして水城先輩のおうちってお金持ちなんですか?」
「あれ?気づいてない?」
「何を…?」
桜良が頭を傾げて早乙女先輩を見た。
「この学校の名前は?」
「瑞城学園?」
「じゃあ、ここにいる雅貴の苗字は?」
「みず、しろ…って…え?」
「うん、ここは雅のお祖父さんが経営してる学園なんだよ」
「えええ!?」
そう、実は会長、この学校の学園長の孫なのだ。学園の名前と漢字が違うのはワザとなのだろうか?そこはよく知らない。孫について本人はあまり気にしてないようだが、口外はしていない。
色々噂する人もいるだろうし騒ぎ立てたくない…と、ゲームではそんな感じに言っていた。
「あれ、茜音ちゃんは驚かないの?もしかして知ってた?」
「いえ、驚いてます」
「そう?あんまり驚いてるようには見えないから…」
「太陽!あまりこういうことを他人に言うな」
「う、ごめん」
「全く。もういいか?俺は教室に戻る」
会長はいつの間にかお弁当を食べ終わっていて、さっさとお弁当を風呂敷に包んで帰る準備をしていた。
携帯で時間を見たら予鈴まであと10分あるかないかだ。のんびりしてる場合じゃない、私達も早く食べないと!
「あ、あの!」
桜良が会長を引き止めた。
「なんだ」
「えっと、今日はありがとうございました!あと、ご迷惑お掛けしてすみませんでした!次はちゃんと学校の注意事項見ておきます」
「……次からは気をつけろ」
なんとも素っ気ない返事だがあまり怒ってはいないみたいだ。というか今のは一応デレなのだろうか?
私はお弁当を食べながらあのツンツンしてる会長のデレを引き出すとは流石桜良だ、と心の中で思っていると早乙女先輩が優しげな笑顔を浮かべ桜良を見ている事に気付いた。
「よかったね、怒ってはいないみたいだ」
「はい、良かったです。あ、早乙女先輩もありがとうございました」
「俺はなんにもやってないよ」
「いえ、この場所でお昼食べさせて頂きましたし、ちょっと得した気分です」
えへへ、とはにかむ桜良に私も、多分先輩も心を持っていかれたに違いない。
なにこの天使!可愛い!! 流石私の天使!
桜良は何に対しても素直な感情を仕草や表現で表す。たまにそれが傷になってしまう事もあるが、そこが桜良の良いところである。
さっきのも無意識にしたのだろう。会長に迷惑をかけてしまったから謝っただけだと言いそうだ。
「また良かったら一緒にお昼食べようか」
「え、でも…」
「ダメかな?」
桜良がちらりと私を見る。私は良いよという気持ちを込めて笑顔で頷いた。
「じゃ、じゃあ…はい、先輩が迷惑じゃなければ」
「ほんと?良かった、じゃあこっちから誘うから、2人ともメルアド交換しよう」
「私も、ですか?」
「もちろん!だって二人は友達でしょ?一緒にお昼食べる事も多いだろうし一緒に食べよう」
ま、まぁ先輩もここに2人いるのにどちらか1人だけに教えてもらうにはしのびないだろうし、仕方ない。ここは妥協して教えてしまおう。
先輩とさくっとメルアドを交換する。先輩からの初メールは『メルアドありがとね(´∀`) これからよろしく 太陽』という感じの顔文字付きメールだった。
うわあ、私リアルで乙女ゲームのキャラとメールのやり取りしてる。なんか感動だ。
「じゃあまた連絡するよ!無理な時は断ってくれたらいいから、遠慮しないで」
「ありがとうございます」
「いいえ、じゃあそろそろ行こうか。時間なくなっちゃう」
「はい!って、あ…お弁当残しちゃった…」
「私も……教室行っておにぎりだけでも食べちゃおう」
「うう、私おにぎりになってないよ…」
「私の1つあげるから」
「ありがと…茜音…!」
ひしっと抱きついて来る桜良の手を取り、早く教室に戻ろうと促す。
その後私達は途中で先輩と別れ、全速力で教室へと戻った。結局2人とも本鈴ギリギリだったためおにぎりはおあずけになってしまった。
お腹すいた……
基本フラグ建てるのは桜良なので主人公が主人公しておりません




