2日目の朝
朝、いつもの集合場所へ行くと二人がいた。桜良は昨日の事を桜良のお母さんに怒られて早めに出てきたらしい。
今日は3人一緒で学校に向かい、私達が校門前に着くと凄かった。
何が凄いか、詳しくいうと某夢の国の人気アトラクションに並ぶ人達のような、人気アイドルに群がる人々のようなそんな群衆だ。
桜良も涼ちゃんもポカーンとして突っ立っている。
何の集まりだ?なんて誰かが言っているが私はこのイベントを知っていた。ここまでの人が集まっているとは予想外だったけれども
これは昨日言っていた風紀の先輩の出会いイベントだ。確か今日は新入生歓迎の為に風紀の人たちが挨拶運動?みたいな事をしているみたいなんだけど…
正直それどころではない気がする。
「キャー!早乙女先輩よ!!」「太陽くーん!!」
あちらこちらで黄色い声が上がる。
今騒がれているのは早乙女太陽先輩。サラサラの金髪(地毛)で笑顔が絶えず、皆に分け隔てなく接するので男女ともに人気があるという設定のキャラクターだ。
女子だけでなく男子にも次々に声を掛けられていた。
「あ! あの人だよ!」
「は?」
「昨日体育館に案内してくれた人!」
人が多すぎて桜良の指さしている先が見えず、涼ちゃんはキョロキョロ辺りを見回している。
「人多すぎて見えねえ…」
「確かに…」
先輩の姿は一瞬しか見えず、私たちは諦めて校門へ入り、昇降口へ行こうとしたら「桜良ちゃーん」とどこからか聞こえてきた。
まあそこはお約束の早乙女先輩が私達、正確には桜良に眩いばかりの笑顔を向けてこちらへやって来た。
よくあの人の多さで桜良を見つけられるなーなんて関心していたが関心してる場合ではなかった。
先輩がこちらに来た事によって周りにいた生徒たちの興味と嫉妬交じりの視線がこちらに向いている。普段そんなに注目なんてされないものだからこちらは畏縮してしまう。
「おはよう!昨日ぶりだね!」
「おはようございます!ちょうど先輩に会いたいと思っていたんですよ、昨日のお礼をしてなかったので」
「そうなんだ、でもお礼なんて良いから、俺は仕事をしただけだしさ」
「そんな、お世話になったのに申し訳ないですし…」
桜良と早乙女先輩は親しげに話ているように周りにも見えているのかもしれない、だんだんと「あの子誰?」「なんで早乙女君と話してるの?」
なんてこそこそ囁かれ始めている。私たちは完全にアウェー状態だしこのままだと桜良が何か良くない事になりそうで怖い。すると、
「なあ」
と、それまで口を挟まなかった涼ちゃんが桜良に声を掛ける。
桜良もそれでようやく私達に気付くとうわあ!ごめん!と慌てて私たちに謝ってきた。先輩も話し込んじゃってごめんなと謝ってくれる。
私は良かったのだけど、涼ちゃんは不機嫌なまま桜良の腕を掴んで「俺たち先行きますんで」と言った後、桜良を連れて昇降口の方に向かってしまった。
「なんか怒らせちゃったかな?」
「すみません…でも、先輩もあまり人の多いところで特定の女の子とお話にならない方が良いですよ」
「え?」
「それでは」
先輩が周りのことを全然気にしてないようだったので少しのアドバイスをして私は二人を急いで追った。
だけど二人はすでに教室へ行ってしまったのか下駄箱にはいなかった…ちょっと寂しい…
教室へ行くとすぐに桜良が来てくれた。
「茜音、先行っちゃってごめんね」
「桜良…」
「もー、涼が引っ張ってっちゃって…」
「いいよ、それより涼ちゃんは?」
「なんか機嫌悪くなっちゃった…」
まあ分らなくもないから何も言えないけれど、これは機嫌治るのに時間が掛かるかな?と涼ちゃんをチラッと見たら不貞寝している。
それから朝のHRが始まるまでさっきの涼ちゃんに対しての愚痴につき合わされてしまった。桜良、許してあげて。
午前中の授業は入学して初日の授業らしくプリントの配布だったり自己紹介だったりが大半で楽で良かった。午後からは委員会を決めるらしい。
でも今はお昼休みだ。桜良はどうするんだろう?乙女ゲームだったら朝と昼と夕方が自由行動の時間で攻略相手の所に行って好感度を上げるんだけど…
「茜音!一緒にお昼食べよう?」
お弁当箱を持って私の席へ来てくれた。そうだよね、いきなり昼休みどこかに消えていったりしないよね。良かった。
「うん、じゃあ涼ちゃんも誘おうか」
「そうだね」
朝の件もあったけど涼ちゃんに声を掛けると一緒に食べてくれるみたいだ。機嫌治ったみたいで良かった。教室で食べても良かったんだけど、桜良が庭に行ってみようと言ったのでそこで食べる事にした。
無駄に広い学校の中にはちょっとした広場がいくつかあってそこで昼食をとる生徒も多い。
その一つの食堂近くにある庭(というか広場かな)ではなく、私達は桜良が見かけたという庭で食べる事にした。案内されてそこへ行くと、そこは周りが私達より背の高い庭木で囲まれていて、道は真ん中に向かって石畳になっている。
綺麗に手入れされ、四角くスペースが出来ており、ちょっとした花壇も周りにある。真ん中には大きな公園や山道の途中によく見かける屋根があり、テーブルとベンチがついたちょっとした休憩場所みたいな所があった。
ああいうのを四阿とか東屋とかいうらしい。ネットで調べた。
シンプルだけどなんだかヨーロッパの中庭みたいな場所だ。すごく特別な場所っぽい。
「ここ使っていいのか?」
「学校の敷地にあるし、いいんじゃないかな?」
涼ちゃんが怪しんで庭に入っていいのか分かる看板なんかを探している。こんな良い場所普通は誰かに取られていても良いはずなのに人が周りに居ない。
「……ここ、嫌な感じがする」
「え?茜音嫌だった?」
「ううん、ただ言いたかっただけ」
「アニメの見すぎだな」
「よくあるでしょ、こういうセリフ」
「でももっと怪しい場所とかで言わない?」
「怪しいっていえば怪しいけどな」
と冗談を言ってはみたが実は私が言ったことは間違ってはいない。
くるぞ…くるぞ…と心の中で繰り返した。
「おい、ここで何してる」
遅くなりました… 正直早乙女先輩はもっと後に出したかったのですが、メイン達は早く出してやりたいと思い、次の日いきなり会う事にさせました。




