思い出してご覧
その日の夜、私は夢をみた。私がまだ元の世界に居た時の夢だ。
乙女ゲームをしていた。今私がいる世界の。
画面には悲しげなBGMが流れ、画面下にあるテキストには主人公が泣きながらごめんなさいと謝っている。
それは夏木ルートのBADEND。
元々夏木を好きだった秋野は桜良にその事を告白する。しかし、物語途中の桜良は自分の気持ちが分からず、曖昧に返事をしたままいたずらに時が過ぎた。夏木の事が好きだと自覚するも、その事を秋野に言えず、夏木と仲良さげに過ごす桜良に秋野はついに怒りをぶつけて2人は喧嘩別れをしてしまう。
その原因となる夏木は桜良を心配し、励ますが、選択肢でBADEND直行の選択肢を選んだり、好感度が足りていないと夏木とも秋野とも仲がこじれたまま春日桜良は1人、高校を卒業してしまう。そしてそのまま3人は会う事もなくなってしまうというBADENDだ。
私は悲しかった。桜良が残りの2年間を2人と過ごせず卒業してしまうなんてあんまりだ。せっかくの高校生活なのにきっと辛い3年間になっただろう。
そんな事にならない為にも私は私が桜良の恋に干渉しないでそのリスクが無くなるのならそうしようと考えたのだ。
私がこの世界の事を思い出したのは3年前で、涼ちゃんに恋した後だったので、 最初は自分の気持ちを堪えるのは辛かったし、悲しかった。
それでも3人バラバラになるよりかは断然マシだと、なにより2人の悲しむ姿が見たくなかったから耐えられた。いつしかそれが普通になって日常になって……
今では桜良がもし涼ちゃんと付き合っても「おめでとう」と言えるはずだ、最初から何も無かったみたいに。
ふと、目が覚めて起き上がると涙が頬を伝っていた。携帯を見るとまだ夜中で携帯のディスプレイに桜良や涼ちゃんと映った画像が出ている。幸せそうに笑いあいながら3人で映ってる写真だ。
私はそれを胸に抱いて、そのまま起き上がった姿勢を元に戻し、横になって誓う。
絶対にBADENDは回避する。絶対に…。
いつしか私は眠りについて、起きた時にはちゃんと朝が来ていた。さて、今日も一日忙しそうだ。
少しシリアスです