プロローグ
私には物心着く前から兄妹の様に育った幼馴染がいる。
1人は女の子、春日桜良、もう1人は男の子、夏木涼介の2人。
2人とは小、中、と学校が一緒。これから行く高校も私を含めた3人とも同じだ。
ただ違うのは、私がこの世界をゲームの世界だという事に気付いてしまっているという事だけだろう。前世が誰でどんな名前で、どの様な人間だったのかは思い出せない。
でも、この街、この高校の名前を前から知っているような感覚と共に、これからどんな事が起こるのかが分かってしまっているのだから、前世はある、はず…。確証はない。
しかもゲームだと分かるくらいの記憶なのだから相当やり込んでいたのだろう。
物凄く重大なようで、物凄くどうでも良い事かもしれないが、問題なのはそこではない。
このゲームの主人公は私ではなく、さっき私が言った幼馴染の春日桜良で、夏木涼介は主人公にずっと恋心を抱いているお約束の幼馴染キャラ、しかも主人公と恋愛出来るフラグを持った攻略キャラなのだ。
そして私は本当なら主人公の相談役である親友ポジションだと言う事……
その私が夏木涼介に恋愛感情を抱いているという事が問題なのだ。
ゲームでは確か、夏木ルートで主人公と夏木を取り合うライバルキャラだと記憶している。
まぁ、はからずしもゲームと同じ状況に陥ってしまったわけで正直、頭を抱えてしまった。
夏木涼介の事は好きだ。正直、相当に惚れ込んでしまっていると自分でも自覚している。
でも、主人公の春日桜良も大好きなのだ!
ずっと側にいたが、少し天然で、優しい桜良は本当に可愛い。そばに居た同性の私ですらそうなのだからそりゃ夏木も好きになるはずだと1人で勝手に納得していた。
納得した結果、私は夏木が桜良と恋人になるなら2人の仲を応援しようと決めた。さり気なく気づかって2人の動向を暖かく見つめる事にしようと。
かといって積極的な応援はしない。ほんの少しだが、自分も夏木にアピールくらいはしようと思っている。
なんていったってこれは乙女ゲームなのだから、桜良にはこれからたくさんの男子とのフラグが立つ予定がある。桜良が誰を選んでも良い様に配慮するのは当然の事で、この1年で桜良が誰かと付き合った後に私は自分の行動を起こそうと思っている。
だって、乙女ゲームで結ばれたキャラクターは未来永劫、ラブラブなのだ。夏木以外と付き合った場合そのキャラと別れる事はほとんどない。そう思えば、この1年を過ぎれば後は好き勝手に出来るのだし、私の恋なんて後回しだ。後回し。
さて、そろそろ時間も来ているようだし、始業式に行こう。もちろん3人一緒に。
私はこの1年が終わるまでこの乙女ゲームの学園生活を楽しもうと駆け足で待ち合わせ場所へと向かった。
お読み下さりありがとうございました。
小説素人なので文章が変だったり読みにくい所があれば教えて下さい。そのつど直しますので。あと、更新は遅めになります。