第一条 風と鳥
話ごと第一条、二条と区切っていくつもりでいます。要するに記念すべき再投稿(笑)第一条です。
キャラクター紹介((荒いバージョン
神風 紘/カミカゼ ヒロ H9.7.3
金髪にエメラルドグリーンの瞳。成績は壊滅的な陸上部。金髪なのは不良なわけじゃなく、母親が外国人のハーフだから。関係ないけど牛乳アレルギー。
笠鳥 隼/カサドリ ハヤ H9.7.7
銀髪、緋眼。いつも紘の傍に居る男勝りな女。暴力主義で成績はそこそこ。強いのには理由があるそうです。関係ないけど金属アレルギー。
兎田 紫苑/トダ シオン H9.5.6
茶髪、黒目。メガネ、ヘアバンド着用してる。中二病をこじらせて死ねばいいと隼によく言われる。一番好きな設定は「実は、二重人格なんだ」である。秀才でありながら残念な少年。本作で出て来る人では珍しい一人称が「ぼく」のキャラ。関係ないけど粉ミルクアレルギー。
保科 桜愛/ホシナ サクラ H10.2.7
名前通り桜色の髪、目は糸目なので一部の人しかその色を知らない…らしい。紘と隼の喧嘩の仲裁係。暖かくこの変人ども(上記の三人)を見ていられる数少ない人間。実は怒ると一番怖かったりする。関係ないけど甲殻類アレルギー。
義賢 優真/ヨシカタ ユウマ (生年月日不明)
謎に包まれすぎてもう訳わかんないキャラ。どうやら医師の資格を持っているらしい。
この5人を主要キャラと定めて進めていきます。細かな設定はいずれ。
日雀町。まだまだ発展する余地のある田舎町。
その中に海外に大規模展開している神風カンパニーの経営する異彩を放つショッピングモールがある。世界的な企業がなぜこの田舎にショッピングモールを置くのかは知らないが、それなりの業績を収めている。そんな中途半端な町に堂々とたたずむ中学校がある。
日雀第一中学校、通称ガライチ。
いろいろな意味で有名な中学校
これはガライチの学生を中心に語られる話。
第一条 風と鳥
朝、雲ひとつなく澄み渡る空に心を洗われる。出会いと別れの春。葉桜になりつつある桜の色と空の青色が春の温かみを生んでいると言っても過言ではない。そんな日に銀髪緋眼の少女が金髪少年に発する罵声が響いた。
「バカ紘、起きろ!さもないとぶっ殺すぞ。」
呼ばれた金髪少年は大あくびでそれに答え、内心だけだがうるせぇと言い返した。ただ、発言的に考えて、いかにも銀髪少女の方が偉そうで主権を握っていそうである。
金髪の少年の名は神風 紘。彼はハーフでエメラルドグリーンの瞳に特徴的な金髪は外国人である母親譲りなのだ。時間には少々ルーズで人を少し待たせる事が大半で笑ってすませる。反省はその時だけして次に生かさない。陸上を幼少のころから趣味の範囲で習っており足だけは速い。成績は下位で学力的な頭の回転は極端に遅い人間である。
「お前はいちいち物騒なんだよ、隼。」
隼と呼ばれたのは先ほどの銀髪緋眼の少女のことだ。銀髪緋眼の少女は笠鳥 隼。彼女は純粋なる日本人だ。暴力主義で大ざっぱ、ガライチの中で暴力面は最強だろうと歌われる人。声は女性としては低く中性的。彼女の外見を一言で表せと言うなら、眉間に皺をよせ腕を組むスタイルが様になるような女性と言えば大抵の人が想像したもので違い無いと思われる。運動神経は一般から少し劣る成績を収めている。本人はインドア派と言うが周りから見れば行動第一のアウトドア派。成績は時と場合によって違うが総合してみると中位ほど。
金髪の少年は隼の態度を見てあからさまにため息をついた。
紘、隼の二人は幼いころからの知り合いであり、いわゆる幼馴染と言う間柄。
今年で二人揃ってめでたく中学一年生となった。
隼は通学用のリュックサックを片手に持って紘の寝ているベッド付近にたたずんでいた。紘は朝一番それを目の当たりにするのだから恐怖心に煽られ良い目覚しになると考えている。二度寝をしようものならその片手に持ったリュックサックによって頭を強打される、お頭の足りない紘でさえバッドエンディングを迎えることくらい容易に考えつく。
「そういえば、お前は昨日もオレの家に居たのかよ。」
紘は隼に問いかける。赤の他人から見たら噂もしにくい由々しき問題なのだが、二人にとってはどうでもいい日常的ないつものことのようだ。
「あぁ、帰るの面倒だったし。」
「そーかい。」
昔から隼は紘の家に泊まることがしばしばある。ここで勘違いしていただきたくないのはそこらの男性向け恋愛ゲームのように『家に二人以外いないんだ☆』と言った様子は微塵もないということだ。理由のひとつ。学校から若干ではあるが近い上にいろいろと機材が揃っていることにある。機材と言うのはトレーニング用の器具のことで、武術を磨いているという隼にとっては好条件の他ない。ボクシングジムみたいな部屋も存在する神風家の裕福さがうかがえる紘の家は一通りの訓練用具が揃っており、強さを求め武術を幼少時代から学び訓練する身にとっては適した場所なのだ。
また隼は強さが無ければ生きてはいけないと考えている。そのような幼少期を過ごしたためか性格は男勝りで負けず嫌いになってしまった。長い付き合いの紘からすれば迷惑でありながらも、それでなければ隼ではない、と複雑であり受け入れざる負えない特徴である。
「紘、お前そーいえば宿題ちゃんとやったわけ?」
四月中旬の中学一年生には宿題が課せられていた。隼は偶然にもその課題を覚えていたため済ませてあった。しかし、紘は如何せん頭の回転や記憶力が乏しい。紘の場合、高確率で課題を済ませていないと隼は考えていた。と言うか確実にやっていないと言い切れる自信がある。
「あ、やってねえよ。」
紘はニヘラと柔らかく笑うが、隼はやっぱりと呆れていた。しかし紘に向けて自身の宿題ノートをつきだす。紘は涙目でおぉ…と呟く。例えるならば、世界が破滅する瞬間を黙って見ていた少年が救世主が舞い降りたような……表現が厨二スキル全開である。
「まったく……ホラ、これ。出席番号近いんだから適度に別の場所も間違えとけよ。」
隼は用意していたかのような答えを発して紘の部屋を後にしようとしていた。
「恩にきる!授業前までには返すから。」
隼は無言で部屋を出て仕度にうつる。着替えまでも男の家に置いていくあたりほぼ同棲生活のようなもののような気がしなくもないが、隼は慣れた様子で別の部屋に入りクローゼットを開けた。そこにはガラチューの女子生徒用の制服など、いろいろな女性物の服が掛けてある。隼は制服をとり、男子のように豪快に着替えた。誰もいないのだから別にそう着替えても良いのだろうが、着替えにアニメのようなお色気シーンとかそういうものは一切ない。なんというか、全面的に男らしい女である。
それでも女らしく居た方がいいと思うらしく、鏡を見ながら銀髪に櫛を通し始めた。櫛が突っかかることは無い。するすると掴みどころのないその銀色を整えようとしてもなかなか整わない。櫛を通すという何気ない仕草ではあるが、彼女の表情はこわばり何か不満げだった。鏡に映る自分の銀髪に赤い眼、それはぞっとするような不気味さを持っている。外見を今まで幾度となく気にしてきたが、一度割り切ったものをウジウジと考えるのも腹立たしいため最近は考える気もなかった。ここまでじっくり自分を見ようとも思わないもので、見れば見るほど自分と言う存在について考えてしまう。
「バカだな、私もアイツも。」
隼は低く呟く。鏡越しに自分を睨みつけたその後、廊下が騒がしくなってきた。紘の仕度も終わったのだろう。紘はドア越しに何かを言っている。多分、というか絶対に紘は隼を呼んでいる。隼はとりあえずドアを開けた。すると紘が笑顔で隼の手を引いた。
「ホラ、早く行こうぜ。」
隼はそれを鼻で笑うと一言、「私が転んだら損害賠償請求するから宜しく」と言った。最低、と言うかちゃっかりとした女である。紘は慣れていると言わんばかりに苦笑いをし「ハイハイ」と呆れたような口調で返事をする。その姿はまるで兄弟のように仲睦まじい風に見えた。
突然だが、ガラチューに居る生徒の半数以上は家庭環境が特殊な人間だ。
この二人も例外ではない。
それから、これから出て来る人間たちも例外ではない。
紘はふと半歩後ろにいる隼の方を見た。
彼女の首元には赤黒い何かの跡がある。
「なんだ?」
隼は怪訝そうな顔で紘を覗き込む。
「……何かあったらオレに言えばいいのに。」
紘は表情が暗い。
「あ、いや別になんでもねーよ、早く行こう。」
紘は自分でも気がつかないうちにイライラしているようになっていた。
自分の携帯端末をふと点けると笑顔でピースする小さいころの自分たちの待ち受け画面が憎たらしかった。
ドロドロとした感情が彼の中を渦巻く。
「……ばいい」
「紘?」
「え?」
「あ、いや……私の気のせいのようだ。」
続く。
紘くんがなんか不安定、私は修正方法を考えてます。