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明日から史上最強の萌えキャラ  作者: 秋華(秋山 華道)
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萌えの同士

 二限目の授業が終わると、俺と愛美を取り囲むように、有沢と冷子が立っていた。

 なんだ?どうしたんだ?

 俺と愛美がキョロキョロしていると、いきなり有沢が話し始めた。

「実はこの萌芽高校は、萌えの芽を摘む高校として有名なんだ」

「そうなのよ。オタクが名前だけでこの高校を選ぶようになり、学力は一気に上がったんだけれど、気持ちの悪い高校として、世間に認知されるようになった」

「だから、校長は危機感を抱き、評判を良くする為に、萌えとオタクを徹底教育によって、排除しようと躍起になった」

「そんなわけで、萌えの属性を持つ九頭竜さんが、どうしてこの高校を選んだのか、気になったわけなのよ。、まさか、大和撫子教育を、受けにきたわけじゃないわよね」

 おいおい、長々と時間を費やして話を脱線させてきたのに、今度はいきなり話すんだな。

 だが、疑問はだいたい解消された。

 担任の田中が、電話で愛美のドジを封じ込めようとしたのは、やはりプロの仕事、大和撫子教育とか言うやつだったというわけか。

 それにしても、えらい高校に入ってしまったものだ。

 俺は愛美の、いつか認められるであろう萌えを期待していたのに、それを無くすように教育されては、たまったものではない。

 だいたい、萌えを無くそうとする高校とは、時代錯誤にも程がある。

 大和撫子を否定はしないが、萌えを認めないなんて、学校教師のする事ではあるまい。

 よくも愛美を、大和撫子に改造しようとしたな。

 許すまじ先公ども。

「俺がみたところ、九頭竜さんは、萌え目、天然科、ドジっ子属性の、「天然ボケのドジっ子」のようだが、どうだろうか?」

 当たっている。

 有沢、お前はいったい何者なんだ!

 って、普通に見れば、すぐにわかる事だがな。

「ああ、その通りだ。で、それがどうかしたのか?」

 ‥‥?‥‥

「いや、ちょっと言ってみたかっただけだ」

 有沢、お前がオタクだって事は分かったから、そろそろこの話を俺たちにした意味を、教えてもらいたいものだ。

 ぶっちゃけ、こんな話を聞いても、俺たちは別に、何も動じる事はない。

 愛美も俺も、何も変えようとは思っていないのだから。

 有沢は、何やらショックだったようで、膝をついて、自分の顔をアイアンクローするような感じで、手を顔にかざしていた。

 駄目だな、そう思って俺は冷子の方を見た。

 すると冷子は、やれやれと言った仕草をして、ゆっくりと話し始めた。

「私は、萌え目、養殖科、ツンデレ属性の、「ボケツンデレっ子」よ」

 ‥‥‥‥

 いや、そんな事が聞きたいわけじゃないんだけどね。

 つか、お前のキャラは、明らかに天然だと思うぞ。

 それにそもそも、萌える要素なんて、一切ないからな。

「で、俺たちにそんな話をした理由はなんだ?」

 俺がそう言うと、冷子はパッと表情を輝かせて手を打った。

「それはな、お前たちが俺たちの同士だと思ったからだ」

 いきなり有沢が復活して、話に入ってきた。

 可哀相に、冷子はバカみたいな顔で固まってしまっていた。

「ほう~同士?と言うと、有沢、お前は天才で、冷子は萌えキャラだと言いたいのか?」

 俺がそう言うと、愛美が椅子を倒してコケていた。

 おいおい、そこはコケるところじゃないぞ愛美。

 どうせコケるなら、さっき冷子が、自分で自分の事を萌えキャラだと言ったところでコケるべきだったな。

 俺はなれたもんで、軽く愛美を救出していた。

 って、なんだか表現が色々とおかしいが、まあいいか。

 俺は救出した愛美を、膝の上に座らせた。

 此処が一番安心できる。

 で、有沢は話の腰を折られ、ツッコミを入れるタイミングを逃したようだ。

 仕方がないな。

「もう一度言うが、お前は天才で、冷子はバカなんだな?」

「ああ、その通りだ」

 ようやく全てが見えてきた。

 要するに、有沢の望むところは、学校側の企みを挫く為に共に手を取って、一丸となって、「ジーク萌え!」と唱えたいと、そういうわけか。

「よし分かった。共に萌えを追求しようではないか!」

 俺はそう言うと、有沢に右手を差し出した。

 すると有沢は、間髪いれずに握手してきた。

 そんなに萌えの同士が欲しかったのか?

 なんだか有沢の事が、可哀相になってきた。

 横を見ると、冷子が愛美に握手を求めていた。

 どう考えても、冷子に萌える要素は一切ないが、かなり変わった奴である事は確かだ。

 こいつとなら、愛美は友達になれるかもしれない。

 流石高校だな‥‥

 俺は少し嬉しい気持ちで、愛美と冷子が握手しようとしているのを見守っていた。

 って、油断していたが、こんなにうまく愛美に友達ができるわけがない。

 俺がそう思った時には、時既に遅しだった。

 見ると、愛美は握手を求められた事に驚いて、慌てて手をさし出そうとして、持っていたシャーペンを、冷子の手に突き刺していた。

 やっちまったか‥‥

 俺は手で顔を覆った。

 しかし、冷子の反応は、俺の予想とは違っていた。

「甘いわね。私の皮膚は、ドラゴンの鱗よりも硬いのよ」

 そう言う冷子をよく見ると、爪でシャーペンの攻撃をガードしていた。

 俺はホッと胸をなでおろした。

 なかなかやるなこいつ。

 俺は再び、嬉しい気持ちになった。

 こうして、俺と愛美は、有沢と冷子と、萌えを追求する同士となった。

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