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明日から史上最強の萌えキャラ  作者: 秋華(秋山 華道)
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クラスメイト有沢

 ホームルームが終わり、最後の礼をして、皆それぞれに家路に向かう。

 結局、どんなクラスメイトがいたのか、教師の名前すらも、俺は覚えていなかった。

 そんな中、唯一名前を覚えていたクラスメイト、有沢が俺に話しかけてきた。

「やっほぃ!お前どこ中から来たんだ?」

 さっきは唯一の大人かと思っていたが、こういう声のかけ方は、やはり同年代か。

 大人の方が良いと思う反面、やはり本音としてはこちらの方が安心するな。

「ああ俺か、俺は夢見中だ」

 俺がそう言うと、有沢の表情が笑顔に変わった。

「うほ!知ってる知ってる。サッカーの試合で、一回行った事あるわ」

 まあ同じ学区だから、部活の試合か何かで来たのだろう。

 俺は帰宅部だったから、他校の生徒との交流はなかったが。

「そっか。まあよろしく」

 俺は、中学時代から、特に友達が多かったわけでもないし、誰とでも仲良くできるほど器用でもない。

 ぶっちゃけて言えば、普通だ。

 だから話しかけられても、特に話す事が無い相手とは、話が弾む事はない。

 相手もどうやら同じで、特に俺には興味が無さそうだった。

 なるほど、本当の目的は、愛美か。

 有沢は、食べ終わっていなかった弁当を、再び食べ始めていた愛美を見ながら、再度話しかけてきた。

 って愛美、まだ食ってるんかい!

「彼女、可愛いね。恋人と同じ高校に行くなんて、仲いいんだな」

 有沢がそう言うと、愛美は食事を続けながら、少し照れた様子で会話に参加する。

「久弥くん、私可愛いって言われちゃった」

 愛美の口の中には、沢山のご飯が入っていたが、喋ったおかげで、少しだけブツが口からこぼれ出ていた。

「愛美、口の中の物が無くなってから喋ると、再び口に入れなくていいから楽だぞ」

 俺がそう言うと、愛美は「久弥くん天才」とか言って、再び食べるのに集中していた。

「ふ~ん、仲が良いって言うか、なんか家族みたいだな」

 有沢の言葉から察するに、おそらく恋人ってよりも、妹みたいに見えるとか、そういった事が言いたかったのだろう。

 確かに、俺と愛美は、どちらかというとそんな感じだ。

 それはきっと、俺が愛美の事を本気で好きではないからだろう。

 いや、好きなのは好きだ。

 好きじゃなければ、いくら先物買いとか言っても、付き合っていく事はできないと思う。

 そうだな、先物買いの意味を正確に表すなら、俺はこれから、ドンドン愛美の事を好きになっていくって事かもな。

 俺は無意識のうちに愛美を抱きしめ、「やらんぞ!」と、有沢に言っていた。

 俺の愛が、いずれ恋に変わる事は、確実だから。

 俺の行動に、有沢は苦笑いしていた。

 そらそうか。

 目の前でいちゃいちゃされたら、対応策は苦笑いくらいしかあるまい。

 それにしても、有沢が話しかけてきた真意はどこにあるのだろうか。

 別に、俺たちがいちゃいちゃするところを見たかったわけでもないだろうし、愛美とお近づきになりたかったわけでもなさそうだ。

 俺が疑問の目で有沢を見ていると、有沢は、話しかけてきた真意らしき事を話し始めた。

「その弁当美味そうだな」

 って、もう一つ関係無い話を挟んでくるとは、有沢はなかなかやるな。

「あ、食べる?」

 愛美が笑顔で、有沢に弁当を勧めていた。

 すると有沢は、少し顔が引きつっていた。

 そらそうだろうな。

 さっき愛美が口に入れた米が、色々なところに飛び散っていたからな。

 そんな思ってもいない事を言った、有沢が悪い。

 でも仕方ないなぁ~、助けてやるか。

 俺は愛美が差し出していた弁当を受け取り、適当に口に放り込んだ。

「うん、美味い」

 まっ、俺の彼女だし、さっき言われた通り、家族みたいなもんだからな。

 俺は全く気にならない。

 それを見た有沢は、ようやく無駄話の愚かさを悟ったようで、話しかけてきた本題らしき事を口にだした。

「神田、というか彼女の方、九頭竜さんは、どうしてこの高校に来たんだ?」

 ふむ、この質問は、どう判断したら良いのだろうか。

 俺たちが超賢そうに見えるのに、萌芽高校という超平均的な高校に来た事が不思議だとでも思ったのだろうか。

 確かに、俺にしても愛美にしても、ここ萌芽高校は、学力相応の高校ではない。

 俺は内申書も含めて、トップクラスの高校に行く事も可能だったし、学力だけなら愛美は俺以上だ。

 ただ、愛美は内申点が悪かった。

 テストでもドジを繰り返し、実際の知識相応の点数は、ほとんど取った事がない。

 そんな愛美が、それなりの余裕を持って合格できそうな高校が、たまたま萌芽高校だったわけだ。

 俺は、そんな愛美に合わせて、この高校を受験した。

 中学の時の教師も、両親も、マジでビックリしていたな。

 もったいないと、必死に説得されたりしたが、勉強なんて何処の高校でもできる。

 要はやる気があればいいだけだ。

 そんなわけで、どうしてと聞かれても、その程度の理由しかなかった。

 俺は素直にそう言った。

「二人で合格できそうな高校だったからだよ」

 すると有沢は、気味が悪いくらいに、ニヤッと笑みを浮かべた。

 なんだ?何かあるのか?

 俺はドキドキしながら有沢を見つめていたが、有沢は、俺のこたえに対する返事をするつもりはないようだった。

 その代わりに言った言葉は、

「この高校の名前は、萌芽だよな」

 この一言だけだった。

 これが何を意味しているのか、俺に分かるはずもない。

 実はこの学校名に、何か意味があるのだろうか。

 ただ単に地名からつけた名前だと思うが、仮に意味があると考えれば、萌えを目指す若き人々の集う所とか、そんな意味だろうか。

 そんな高校あるわけがない、俺は苦笑いした。

 しかしこの考えが、あながち間違いではなかった事を、後日俺は知る事になる。

 そして俺たちのやり取りを、廊下からひそかに見ている人物がいる事を、この時の俺が気づく由も無かった。

 有沢は、軽く手を挙げて、「じゃあな」と言って、教室から出ていった。

 愛美はようやく、朝食である弁当を食べ終えていた。

 時計はそろそろ、十二時になろうとしていた。

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