きっともうすぐ‥‥
投票が終わり、いよいよ発表の時間がきた。
発表は、三位から順に、二位、優勝と発表される。
要するに二位を取れば、俺たちは生徒会との直接対決にきっと勝てる。
愛美が二位になる事を、俺は祈っていた。
そしていよいよ、発表が開始された。
「お待たせしました。まずは三位から発表します。第三位は、鈴城環さんです!」
えっ?誰それ?
俺がそう思っていると、副会長が雅な佇まいで、ゆっくりと前に歩み出てきた。
なんだ副会長か、って、副会長が三位って事は、コレは勝ったかもしれない。
残るライバルはリカちゃんだけれど、この学校の生徒が普通の生徒なら、リカちゃんに投票なんて、もはやできるものではない。
俺はかなり、勝利を確信していた。
しかし、次に発表された名前は、俺にとって意外なものだった。
「では、準ミスを発表します。準ミスは‥‥高橋唯々さんです!」
なんと!俺の予想が外れた。
となると、当初の予想通り、優勝は昨年のチャンピオン、リカちゃんで決まりか?
それとも、真嶋先輩が言ったように、愛美に優勝の可能性があるのだろうか。
オチのあるギャグアニメとかなら、権力のあるお姉さんキャラや、綺麗な先生が優勝をかっさらうところだが、そんなキャラはこの学校には存在しない。
となるとやはり愛美なのか。
俺はドキドキしながら、体を硬くして発表を待った。
準ミスの喜びの挨拶も終わり、いよいよ、ミス萌芽高校グランプリが、発表される時がきた。
一瞬時間が止まったように、全てが静まりかえる。
そして、マイクのハウリング音が、辺りに響きわたった。
「えぇぇ、ミス萌芽高校グランプリは、一年梅組‥‥」
キターーーーーー!
「山田美沙太郎さんです!」
エーーーーーーー!
辺りに歓声が響きわたり、生徒達が一斉にざわつき始める。
よく聞くと、笑い声がほとんどだった。
ああ、なるほど、俺がしらけるようなコメントしまくったから、マジでしらけて、みんなネタ投票に走ったのか。
でもなんだか、俺はホッとしていた。
そりゃ当然、愛美が優勝してくれたなら、俺はきっと喜んだだろう。
だけど何処かで、俺だけの愛美であって欲しいとも思う。
我がままな話だけれど、愛美は、俺だけの萌えッ子であればいいのだ。
まあいずれ、俺だけではなく、みんなから認められる、史上最強の萌えキャラになるのだろうけれど、今日はまだ、その時ではないようだ。
俺は愛美に駆け寄った。
「愛美、俺にとっては、お前が一番だからな」
恥ずかしい台詞ってのは、一度言ってしまうと、その後は結構言えるものらしい。
「うん、私も、久弥くんが一番好きだから」
ああ、なんだろうか、この萌えるような気持ちは。
目の前の愛美は、とにかく今までで最高に可愛かった。
「まあ今日は負けたけど、明日はきっと、愛美が史上最強の萌えキャラになっているさ」
俺はそう言って、愛美を抱きしめた。
すると後ろから、聞き覚えのある大きな声が聞こえた。
「あぁ!お兄ちゃん、お姉ちゃんとばかり仲良くしないで、リカもかまってよお~」
そう言ってリカちゃんが、俺の背中に飛びついて来た。
すっかり忘れていたけれど、俺にはうっかり釣りあげてしまった、小さくて可愛い妹のような先輩もいたんだっけ。
「わ、私も、仲良くしても、いいですか」
そこにいたのは、高橋だった。
「えっ!あ、あぁぁ‥‥」
俺はどうこたえればいいか、愛美の顔色をうかがった。
愛美を見ると、愛美は笑顔だった。
根拠は無いけれど、愛美はどんな時も俺を信じ、俺には笑ってくれる気がした。
大丈夫だ。
俺は愛美の許可を勝手に得て、高橋の要求にこたえる事にした。
だが俺がこたえる前に、高橋はボソッと、ひとこと言葉を付け加えた。
「愛美さんと‥‥」
って、愛美とかい!!
まあでも、愛美と仲良くしたいって事なら、それは俺も愛美も大歓迎だ。
「仲良くしても、いいんじゃないかな」
「はい!もちろん神田くんも、仲良くしてくださいね」
「そ、そうだな」
俺と愛美はなんとなく、今日から高橋と友達になる事になった。
今度は、俺の服の袖を、引っ張る女子がいた。
副会長だった。
何故に副会長が、頬を赤く染めて、俺の服の袖を引っ張っているんだ?
そろそろこの話もクライマックスだからって、無茶しすぎだろうが。
だいたい俺は、愛美さえいればいいんだから、ハーレム話にしなくていいんだよ。
この状況を見て、当然、冷子も、ヒカル先輩も、副委員長も、そして養殖科の人たちも、俺の周りに集まってきていた。
もうこうなったら、どうにでもなれ!
俺はみんなを手当たりしだい抱きしめた。
「わふぅ~ん。神田くんって、強引なんだな」
お前いつのまに!
俺は誤って抱きしめてしまった、美沙太郎を蹴り飛ばした。
辺りには笑いが溢れていた。
こんな無茶苦茶な一日だったが、この日は俺が、心の底から愛美の事を愛していると、自覚できた日だったかもしれない。
愛美。
中学時代、いつかは萌えキャラになると信じた。
高校入学当初、もうすぐ萌えキャラになれると思った。
そして今は、沢山の笑顔に囲まれて、誰にも負けない、満面の萌えスマイルをしていた。
きっと愛美は明日から、史上最強の萌えキャラになるのだと、俺は確信した。
応募に間に合わせる為に、後半少し走り気味になったのが、自分としては残念だったかな。
でも、それなりに笑いどころのある、面白い作品になったと思っています。
本当は、夏休みとか、色々なイベントもこなして、成長するところを書きたかったんだけどね。