萌芽美少女コンテスト
水着審査が終わり、ここで一次投票が行われた。
ここでの上位八人が、予選通過者として、決勝に駒を進める事になる。
結果は、まずまず予想通りの結果だった。
しかし、大きく予想を覆すところもあった。
一次投票の順位は、一位が高橋だった。
これは予想はしていなかったが、或る程度納得できるものだった。
来年や再来年の美少女コンテストで、同じ結果が出るとは思えないが、高橋は上級生からの支持が絶大だった。
今年のコンテストに限って言えば、高橋は最強と言えた。
二位は副会長だった。
リカちゃんが負けたのは予想外だったが、これはきっと、萌えキャラで票を分け合ったせいだろう。
これも予想外だったが、分析すれば理解できるところだった。
三位はリカちゃん、四位は愛美、五位は冷子、六位はヒカル先輩、七位は副委員長と、萌え萌え委員会メンバーが名を連ねていて、これを見ても、やはり票を食い合っている事は明らかだった。
何とかしなければ、俺たちは負ける、そう思った。
ついでに八位には、美沙太郎が入っていた。
これはきっと、コンテストを盛り上げてやろうという、おせっかいな生徒たちが、嫌がらせ八割で投票した結果だろう。
俺は心の中で、そのおせっかい生徒たちに拍手を送った。
「では、質疑応答を始めます。質問はございますか」
出場者への質問は、各クラスの委員長、又は副委員長が行う事になっている。
ただし、出場者のいるクラスの者は、質疑応答には参加できない事になっていた。
進行係の生徒が、手を挙げている生徒の中から、適当に一人を選んだ。
「皆さんに質問です。好みの男性のタイプは?」
まあ最初は、当然の質問だな。
「では、予選通過順位の順番でお願いします」
進行係の言葉に、まずは高橋がこたえる。
「はい。正直な人が好きです」
高橋はそう言いながら、何故か俺の方を見ていた。
おいおいおいおい~、俺は決して、正直じゃないぞ‥‥
でもこの状況は、ぶっちゃけ嫌ではなかった。
「それだけですか?あ、そうですか。では次、お願いします」
次は副会長か。
どんな男性が好みなんだろうか。
しかし一向に、副会長の声が聞こえてこない。
副会長の口は動いているのに、どういう事だ?
そう思って見ていると、コメンテーター席の会長が、いきなり通訳し始めた。
「わたくしは‥‥男らしく‥‥ぐいぐいひっぱって‥‥いってくれる人が好き‥‥です」
大和撫子恐るべし。
多くを語らない女性って事だろうけれど、少しくらいは喋れよ。
「はい、分かりました。次お願いします」
「はーい!お兄ちゃんです!」
リカちゃん、嬉しい事言ってくれるぜ。
でも、このこたえだと、萌える人が限定されそうだな。
リカちゃんには負けてもらわなければならないが、なんとなく俺の中には、頑張って欲しい気持ちもどこかにあるようだった。
「では次、お願いします」
いよいよ愛美か。
でも、愛美が言いそうな事は分かる。
きっと‥‥
「久弥くんです」
タイプを聞いていても、愛美はこうこたえる奴なんだよな。
まあ俺ももし、好きなタイプの女性を聞かれれば、愛美とこたえるだろうけれどね。
「そ、そうですか。暑いっすね。では次‥‥」
こんな感じで、質疑応答タイムは、滞りなく進んでいった。
「あなたのチャームポイントはどこですか?」
「そうね‥‥乳首かしら?」
冷子、お前このあいだは、膝小僧だって言っていなかったか?
それにそんな見えないところ言っても仕方が無いだろう。
つか、出そうとするな。
「どうして美少女コンテストに出ようと思ったんですか?」
「ふふ‥‥可愛いから?‥‥なんてね。ちょっと‥‥死んだおばあちゃんが‥‥夢枕に立って‥‥出るように‥‥言ってきた‥‥だけよ‥‥ふふふっ」
いや副委員長、マジで怖いから。
「あなたともし付き合ったら、彼氏にはどんな特典がありますか」
「そうね。膝枕して、耳かきしてあげちゃうわよ」
ヒカル先輩に膝枕かぁ。
惹かれる男子生徒は、結構多いのだろうな。
「お前はどうして、こんな所にいるの?」
「それは、僕が魅力的だったんだな。女には負けないんだな」
いや美沙太郎、そろそろ自分が出場している事自体、否定しようよ。
こうして、質疑応答の時間は、あっという間に終わった。
さてここで、コメンテーターによる、各出場者の評価を発表する。
ここでのコメンテーターによる発言は重要だ。
みんなが思ってもみなかった利点を指摘したりすれば、当然生徒からの評価も上がるし、逆に良いところが言えなければ、離れる生徒もいるかもしれない。
高校生とは言え、まだ大人ではない。
他人の意見に影響される部分も、きっと少なからず有るはずだから。
「ではまず、美沙太郎さんの評価をお願いします」
順番は、予選順位の低い者から行われる事になっている。
って、もう美沙太郎はいいよ。
まずは大和撫子側の、校長が話し始めた。
「お前、見苦しい!」
校長の一言は、美沙太郎を地獄に突き落とすには十分だった。
アディオス、美沙太郎。
もう二度と会う事はないかもしれないが、今度会う時は、女だったらいいな。
「では次、反生徒会側の方、評価をお願いします」
「お前、見苦しい!」
真嶋先輩も、容赦なかった。
だけど美沙太郎は、くじけてはいなかった。
どうやら美沙太郎は、生粋のMのようで、全くショックは無いようだった。
まあそりゃそうか。
ペットボトルを投げつけられて、散々罵声も浴びたのに、まだ此処に立っていられるんだもんな。
俺はほんの少しだけだが、美沙太郎を見直した。
愛美がいなかったら、俺はもしかしたら、美沙太郎に投票していたかもしれない。
そんな事も思った。
この後も、どんどんコメンテーターの評価が発表されてゆく。
「論外だな」
「確かに、こいつは論外だが、良いところも探せばあるはずだ」
副委員長、散々な言われようだな。
でも副委員長、こんな時でも笑っているのね。
「何処にでもいる、ただの女子じゃな」
「そうですねぇ。こんなお姉さんがいると、夜は悶々としちゃうかも」
校長、まあ間違っちゃいないけど、自分の高校の生徒、そんな言い方するなよ。
俺もまあ、面白くもない、普通のコメントしちゃったけれど。
「何処がどういいのかわからんな。一昨日出直してくるのじゃ」
「冷子の良いところ?無い!」
校長は相変わらずだし、せめて真嶋先輩、少しくらいは褒めてあげようよ。
「当たってるわね。流石マイダーリン光一先輩」
お前も納得してるなよ。
こうしていよいよ、愛美の番がやってきた。
まずは生徒会長が話し始めた。
「ただのどんくさい女だな。もしかしたらそれも、わざとやって気を引こうとしているのかもしれない。そうなれば腹黒女って事か」
おいおい、生徒会長がそんな事言っていいのかよ。
でも、愛美は強くなった。
そんな事を言われると、今までならきっと、ショックで苦笑いするのがやっとだったはずだ。
だけど今の愛美は違う。
本当の笑顔で、軽く生徒会長の言葉を聞き流していた。
さて、次は俺がコメントする番だ。
俺は一つ深呼吸してから、愛美の事を話し始めた。
「愛美は、正直昔からどんくさくて、一緒にいる俺は、命の危険を感じる事も多々ありました。だけど、徐々にドジは許せるものへと変わってゆき、周りにいる人達を、笑顔にできる女の子になってきたと思います。まだまだ、完璧な萌えッ子には遠いですが、愛美は俺にとって、最強の萌えッ子です。俺はそんな愛美が、大好きです」
俺は動揺していたのかもしれない。
もしくは、真嶋先輩に洗脳されていたのかもしれない。
原因は分からないが、とにかく俺は、普通では無かったのだろう。
だからなのか、俺は、自分でも信じられないくらい、普通に想いを述べていた。
それを聞いた愛美の頬には、涙が一滴流れていた。
愛美の評価の後は、特に余韻も残さず、次のリカちゃんの評価へと移っていた。
「かわええ子供じゃな」
「お前ら、まさか子供に投票するのか?こんなのに投票したら、ただの変態だぞ」
真嶋先輩、敵になったら容赦ないな。
少しくらいは褒めてあげようよ。
リカちゃん涙目じゃないか。
ああ可哀相に、後でなでなでしてあげるから、今は我慢してね。
俺は使えるはずもないテレパシーで、必死にリカちゃんに電波を飛ばした。
さて次は、副会長か。
「日本の良き女性像、それは大和撫子。男を立て男に尽くす、正に理想の女。君と結婚できたなら、俺は、俺は、必ず幸せにしてみせる!俺と結婚してくれ!」
おいおい、ただのプロポーズじゃないのか?
でもこれは、なかなかいい作戦だ。
周りも祝ってやろと、盛り上がるからな。
「いやよ‥‥」
‥‥‥‥初めて副会長の声を聞いたけれど‥‥‥‥
相当、会長の事が、好きじゃなかったんだろうな。
俺はあまりの出来事に、副会長の評価を、無意識のうちに話してしまった。
「副会長は‥‥とても美人で‥‥少し冷たく見えるところもあるけれど‥‥実は凄くいい人なんじゃないかと‥‥そんな気が‥‥今しました」
批判にはならなかったけれど、きっと副会長の優勝は無いと、俺は何故か確信していた。
そしていよいよ最後の一人、高橋の番がきた。
「‥‥いいんだ‥‥俺なんて‥‥」
会長は、評価できる状態ではなかった。
可哀相に、この人はしばらく帰ってこないな。
俺はそう思ったので、促されるのを待たずに、高橋について話し始めた。
「高橋は、普通にいい子だと思います。萌えもいいですが、普通ってのも、今は評価される時代だし。普通を売りに、芸能界で活躍している女の子もいますからね。でも、俺はやっぱり、愛美がいいかな。だって、愛美は愛美だから」
ただ、ノロケてしまった。
高橋には悪いが、応援するわけにもいかないしね。
俺は少し申し訳ない気持ちで高橋を見た。
すると何故か、高橋が涙を流していた。
なんでそうなるの?
特に悪口を言ったわけじゃないのに。
観衆からは、ブーイングが巻き起こっていた。
とにかく、上位四人の評価タイムは、誰かが泣くと言う、波乱の展開となった。
まず、高橋の涙の意味はわからないが、コレはプラスに働く涙だろう。
何故なら、観衆から俺に、ブーイングがあったからな。
次に会長の涙、これ自体はプラスに働きそうだが、副会長のイメージが、一気に崩れてしまったので、票は伸びないと思われる。
リカちゃんの涙は、同情を誘うものではあったが、真嶋先輩にああ言われては、投票する人も減るのは確実だ。
で、愛美だけれど、これは微妙かな。
愛美の一途さに心動かされる人は多いだろうけれど、こういう人気投票で、彼氏がいる事は、やはりマイナスだもんな。
目の前でイチャイチャされれば、きっと面白くないだろう。
これは高橋の優勝かな。
俺はなんとなく、大和撫子側との、二位争いに照準を絞っていた。




