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明日から史上最強の萌えキャラ  作者: 秋華(秋山 華道)
20/25

リカちゃん奪還作戦

 俺と愛美は、次の日から早速作戦を開始した。

 真嶋先輩が自ら調べたところによると、佐藤の好みは、「萌え系の若い子」と言う事だった。

 まあ、萌えを否定する高校で教師をしていても、みんなが萌えを否定しているわけではないって事か。

 その辺りふまえて、愛美は早速、授業で仕掛けていた。

「この問題分かる奴~?」

「はい!」

「お、九頭竜、この問題がわかるか」

「あれ?分かると思ったけど、なんだか間違っちゃったみたい」

 いいぞ愛美、今のはいいジャブだ。

「では、次は~」

「はい、私読みます」

「そうか。では九頭竜、読んでくれ」

「わふぅ~。あわわ、すみません。教科書持ってくるの忘れました」

 よしよし、佐藤の奴、かなり萌えているぞ。

「ではこの主人公の気持ちが分かる奴はいるか?」

「はいはい~!」

「また九頭竜か。まあいい、言ってみろ」

「この生徒は、きっと先生の事が好きなんだと思います。好きじゃない先生の授業なんて、きっと頑張ろうとは思わないですから」

 愛美はそう言って、上目づかいで佐藤を見た。

 カーッ!今のはかなりクルものがあっただろう。

 それにしても佐藤も、なに高校生にときめいてるんだ。

 もう少ししっかりしろよ。

 でも、この調子なら楽勝だな。

 俺が気がつかない間に、愛美の萌えパワーは、かなりアップしているようだった。

 さて、次は俺の番だ。

 俺は時間があれば、リカちゃんの元を訪れていた。

「リカちゃん先輩、今日も大人の色気ムンムンですね」

「そ、そう?知ってるけど~」

 最初はリカちゃんの望むように褒めて‥‥

「リカちゃん、今日も可愛い。俺惚れちゃいそう」

「もう。ダメだよ。私には佐藤先生がいるんだから」

 徐々に褒め方を、可愛い方向へと変化させ‥‥

「最近、愛美が佐藤先生と仲良くやっていて、俺ほったらかしにされているんだよね」

「えっ、そうなの?知らなかった‥‥」

 さりげなく、佐藤と愛美の関係を伝え‥‥

「あ、ごめん」

「えっ?だ、大丈夫だよ」

 つまづいたフリをして、リカちゃんを抱きしめた。

 流石に此処までは、先生にはできまい。

 リカちゃんは子供だから、スキンシップに弱いと、本人が言っていたからな。

 それにリカちゃんの恋は、幼稚園児が先生を好きになっているようなもの。

 より等身大に近い恋愛をすれば、きっと戻ってくる。

 恋愛と言えるかどうかは微妙だけれど。

 しかしそんな中でも、生徒会はリカちゃんを洗脳するべく、働きかけを続けていた。

 リカちゃんの髪の色は黒に戻り、ミニスカートの丈は、前よりも長くなっていた。

 果たしてリカちゃんは、何処に進むのだろうか。

 萌えッ子に戻るのか、それとも大和撫子か、はたまた不気味星人か。

 正直、そろそろ飽きてきていたが、リカちゃんを取り戻す為に、俺は頑張り続けた。

 そんなある日、とうとう大きな変化が訪れた。

 現国の佐藤と、担任の田中の、仁義なき戦いが始まってしまった。

 やはり田中は、愛美の事を気に入っていたみたいで、佐藤と仲良くしているのを見ていられなかったようだ。

 それを、佐藤が迎え撃った。

 最初の授業で、散々日本語の乱れを嘆いていた奴が、今では日本語乱れまくりの、愛美の虜かよ。

 この萌芽高校の理念は、先生個人の気持ちとは、イコールでは無かったって事だな。

 もしかしたら、この学校の理念とは、学校と生徒会だけのものなのかもしれない。

 とにかく、佐藤はとうとう、リカちゃんにかまっていられなくなった。

 まあぶっちゃけ、リカちゃんは女としてはどうかと思うし、あまりに子供だし、最近は化粧を塗りたくって不気味な顔だったし、世間体って意味でも、白い目で見られるもんな。

 その点愛美なら、見た目は歳よりも若く見えるかもしれないが、一応高校生で通用する。

 佐藤の気持ちが動いて当然だった。

 さて、後はリカちゃんが、佐藤に嫌気がさしてくれれば、全てオッケーだな。

 だが此処に来て、俺は現状をリカちゃんに伝えられなかった。

「最近、佐藤先生がかまってくれなくなったんだよ。どうしちゃったのかな」

 そういうリカちゃんはとても寂しそうだった。

 もしも愛美がいなかったら、俺はきっと抱きしめてしまっていただろう。

 だけど俺は、自分の理性を総動員し、なんとか欲望を抑えた。

 それでも、そんな微妙な状況は、当然長くは続かなかった。

 すぐに、佐藤と田中が、愛美を取りあうように授業でチヤホヤしたり、適当な理由を付けて呼び出している事は、リカちゃんの耳に入った。

 そしてとうとう、リカちゃんは佐藤にハッキリとフラれた。

「どうして最近、私と遊んでくれないの!?」

「俺は、九頭竜が‥‥好きなんだ」

 俺はこの時のやり取りをコッソリ見ていたが、佐藤の事は嫌いじゃないと思った。

 教師だって男なのだから、生徒に恋だってするだろうし、ハッキリ言う奴は好きだ。

 だけど、先生としては終わった。

 間もなくこの話は全校生徒に広まり、(俺が広めたんだけど)当然校長の耳にも入った。

 そして佐藤は、職を失う事になった。

 ついでに田中も、萌芽高校の教師としては問題有りと判断され、別の高校に行く事が決定していた。

 良かった、色々と上手くいって。

 俺は緊張状態から解放され、ホッと一息ついた。

 しかし、全てが一気に解決したわけだが、一つ誤算があった。

 と言うか、これは当然だったのかもしれない。

 佐藤にフラれ、傷心のリカちゃんを、俺は放っておけなかった。

「リカちゃん、お兄ちゃんと遊ぼう」

 俺がそういうと、リカちゃんは俺にじゃれついてきた。

「お兄ちゃん、大好きだよ~」

 リカちゃんは、本来の元気は無かったけれど、元のリカちゃんに戻っていた。

 少し大和撫子風味な部分も取り入れ、萌え破壊力はアップしていた。

 当然、こんな子をないがしろにもできないし、泣かせるような奴がいたら、それは人間じゃないとさえ思う。

 だから俺には、釣りあげてしまったリカちゃんを、リリースする事はできなかった。

 ただ救われたのは、愛美がリカちゃんを大好きだった事だ。

 この状況を理解して、三人で仲良くしていく事に問題はなかった。

「久弥くんと結婚したら、リカちゃんを子供に欲しいな」

 言っている事は無茶だったが、泥沼の三角関係にはなりそうになくて良かった。

「お兄ちゃんはお兄ちゃんだから、お姉ちゃんはお姉ちゃんだよ。ワーイ!」

 両手を広げ、嬉しそうにしているリカちゃんを見ながら、俺と愛美は、ただ目の前の萌えを満喫していた。

 目前に迫る、新たな仁義なき戦いが始まろうとしている事も知らずに‥‥

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