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明日から史上最強の萌えキャラ  作者: 秋華(秋山 華道)
16/25

リカちゃんのテスト勉強

 俺は別に、萌えを推進したいわけではなかった。

 ただ、萌えキャラである愛美に、いつまでも萌えていたかっただけだ。

 だからぶっちゃけ、萌え萌え推進委員会の活動に、興味などはない。

 だけど、何故かここに来れば、俺はやる気に満ちあふれるのだった。

「よし、萌えの為に俺はやってやるぜ!」

 俺たち委員会メンバーは、空き教室に机と椅子を持ってきて、中間試験対策として、一緒に勉強をしていた。

 真嶋先輩は、見た目通り、どうやら勉強はかなりできるようだ。

 美剣先輩は予想通りバカだったが、そもそも萌えキャラでもなんでもないし、委員会での役割も別なので、勉強する必要はない。

 美沙太郎と副委員長は、一応勉強はできるようで、特に俺が手を貸す必要はなかった

 有沢と冷子も、先輩たちを愛する気持ちで、計り知れないパワーを発揮する。

 と言う事で、問題は、愛美とリカちゃんである。

 愛美に関しては、俺にできるのは、無事にテストを受けさせる事だけだ。

 予備の鉛筆や消しゴムの用意、後は遅刻しないようにする事くらいか。

 それらは今できる事ではなく、となると、今なんとかしなければならないのは‥‥

 俺は向かいに座るリカちゃんを見た。

 あどけない顔で、リカちゃんが俺を見つめている。

「お兄ちゃん、リカは何すればいいの?」

 いや、何するって、勉強しろよマジで。

「そうだねぇ~じゃあまずは、数学の例題でも解いてみようか?」

「うん、分かったぁ~」

 まったく、どうして俺がリカちゃんに勉強教えにゃならんのだ?

 いくら俺でも、三年の問題なんて分からんっての。

 まあ教科書があるから、ちゃんと読めば、理解できないものでもないが、俺自身の勉強はどうなるのだろうか?

 でも、リカちゃんに言われると、俺はどうしても断れなかった。

 だって、やっぱり超可愛いんだもん。

 それで勉強を教える事になったわけだが、リカちゃんの学力は、壊滅的なものだった。

 どうやって高校に合格したんだ?

 どうやって進級できたんだ?

 全ては謎だが、間違いなく不正が何処かにあったのだろう。

 リカちゃん自身が不正をする事は考えられないから、それを行った人、お疲れ様です。

 俺は、リカちゃんを思う何処かの誰かに、敬意を表した。

 それにしても、やはり勉強は大変だった。

「お兄ちゃん、この答えなぁに?」

「えっとそれは、この式に当てはめて‥‥X=5で、Y=2だな。って、自分で解かないとダメだよぉ~」

 何故か答えを教えてしまったり‥‥

「お兄ちゃん、リカってやっぱりツインテールが似合うかな?」

「そうだな、怪獣になりたいなら、それもいいかもね」

 と、訳の分からない会話をしたり‥‥

「お兄ちゃん、美沙太郎って気持ち悪いよね」

「奴にだけは近づいちゃダメだよ。妊娠しちゃうからね」

 と、世界の常識を教えたり‥‥

「お兄ちゃん、リカの誕生日はいつだかわかる?」

「一九八二年五月三日かな?」

「それ、前世のリカの誕生日だよぉ~」

 など、とても充実した時間を過ごした。

「これだけ勉強すれば、きっと大丈夫だね」

 俺がそう言うと、リカちゃんは笑顔で大きく頷いた。

 後で振り返ってみると、この時、どうして俺は、大丈夫だなんて思ったのだろう。

 理由は分からないが、とにかくこの時は、なんの心配もしていなかった。


 試験の前日、俺たち萌え萌え委員会のメンバーは、再び集まって、中間試験への最終チェックを行っていた。

 俺はまあなんとか間に合ったし、愛美はトラブルが無ければ楽勝だろう。

 問題は、リカちゃんだった。

 俺が作ってきたテストをやってもらったが、清々しいくらいに丸が一つだけだった。

 おかしい、何故あの時あんなに勉強したのに、こんな事になってしまうのだろうか。

 俺は再び、その辺から参考書を集めて、リカちゃんに勉強を教える事にした。

「えっと、まずは数学だ。けんたくんは、百円持っています。回転寿司屋で、二百円皿のイクラとウニを、四皿ずつ食べました。さて、この後けんたくんはどうなったでしょう?」

「えっとね、うんとね、持っていたスマートフォンでね、店員を殴って逃げた」

「正解!」

 なんだ、問題無いじゃないか。

 こんなに難しそうな、俺には理解できない問題でも、あっさり正解だもんな。

 一応、もう一問出してみるか。

「じゃあ次ね。三角竜とはいったい何の事?」

「そんなの、生まれたばかりの妖精さんでも分かるよ。それは恐竜のトリケラトプスだね」

「正解!」

 やっぱり問題無いな。

 この問題も、俺には数学の問題とすら分からなかったのに、凄いなおい。

 まあ三年の勉強だから、分からなくて当然だけど。

「じゃあ次は、英語の問題ね」

「英語は得意だよ~」

 ほう、そうなんだ。

 リカちゃんだから、お菓子作りが得意なんだと思っていたよ。

「ほにゃららぺらぺらほにゃら~ら、訳すと?」

「私はヤンバルクイナさんが好きです。でも、ニューギニアヒメテングフルーツコウモリさんの方が、もっと好きです、だよ~」

「おお~!正解だ!」

 これはマジで凄い。

 俺なんか、自分が言葉を喋っている感覚すらなかったのに。

 英語も進化してるんだな。

「次は世界史いくよ」

「うん、お兄ちゃん、ドンドンきちゃってw」

「西暦、二八〇一年、銀河連邦が成立しましたが、銀河連邦が崩壊したのは、西暦で言うと何年でしょう?」

「えっとね、三一一〇年かな。ちょっと自信ないけど~」

「正解だよ~凄いねぇ~」

 俺は感動して、リカちゃんの頭をなでた。

 リカちゃんって実は、超のつく天才なんじゃね?

 もしかしたら、成長力を全て脳に持っていかれているのかも。

「じゃあ次で最後だ。最後は現国ね」

「現国は苦手だけど、リカ、ばんがっちゃうよ」

 ほう、現国が苦手なのか。

 でも、此処までこれだけ正解したんだから、とりあえず、一番難しそうな問題を出してみるか。

 この問題なんか、俺には問題の意味すら分からないからな。

「あなたは、萌えッ子と言われていますね?」

「うん、言われているよぉ~」

「だから何?」

 さあ、リカちゃんは正解できるのだろうか?

「ん~‥‥髪の色がオレンジのキャラは、空気が読めない、だったかな?」

「おお~すっげぇ~リカちゃん、マジでヤバイよ」

 俺はがむしゃらにリカちゃんの頭をなでた。

 これだけできれば、全教科百点も夢ではないだろう。

 たとえそうならなくても、学年トップは間違いないな。

 俺は確信していた。

 しかし、後日返ってきたテストの点数は、惨憺さんたんたるものだった。

 どうしてこうなった‥‥


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