↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR

別にお前のこと好きじゃないんで、勝手に負けヒロイン扱いするのやめてくれ

作者: はぢてる
掲載日:2026/09/16

短編です。

「ごめん、でも俺…マイが好きなんだ!」


 放課後、校舎裏に呼び出された私は同級生の高台ナオキからそんな告白を受けた。

 

 ちなみに私の名前は小山ヨウコという。

 

 マイ、というのは最近ナオキとよく一緒にいる宮下マイのことだろうか。

 どうしてこの男は別の女への愛を私に告げた上で、謝罪するように頭を下げているのだろう。


「別にいいよ」


 とりあえずそう言ってやると、ナオキは更に申し訳なさそうにくしゃりと顔を歪めて涙さえ流し始めるではないか。


「ごめん……!」


 ちょ、やめてくれ。

 本当に何なんだ。

 困惑から顔が引きつって、にちゃっとした笑いみたいになるだろうが。


 するとナオキがタイミング悪くそれを見てまた何か勘違いしたらしい。


「あり、がとう……こんな、俺のことを……好きになって、くれて……っ……ありがとうぅ!」


 は?

 待て待て待て。

 私、別にお前のことそういう目で見たことないが?


*****


 高台ナオキとは小五で通い始めた学習塾からの付き合いなので、高三となる今年でかれこれ七年以上の付き合いとなる。同じ中高一貫校の私立に通い始めてからは同じクラスになることも多く、特に高校からは選択授業が同じ理系なので一年から三年までずっと一緒だ。


 長い時間を共に過ごしているだけあって、中には私達二人の関係を邪推する者もいる。でも中高一貫校で六年間同じクラスになるような男女のペアなんてクラスに一つか二ついても不思議ではないし、その全員が付き合っているわけでもない。

 私もナオキのことは気さくに話しかけられるクラスメイトという程度の認識で、特に異性として意識したことはない。

 てっきり向こうも同じだと思っていたのだが、男女の友情は成立しないとも言うし私が気付かなかっただけで彼は何かしら思うところがあったのかもしれない。


 でもなあ…。

 

 自慢じゃないが、私はあんまり可愛くない自覚がある。

 髪とか全然気にしないから背中まで伸ばし放題のボサボサだし、スタイルもチビで全体は痩せ型のくせにお腹だけ妙にぽっこり出ている。小学校からゲーム三昧のおかげで目も悪く、使い古してフレームが色落ちした眼鏡をかけている。あと猫背。


 およそ容姿で異性に好かれる要素はないので色恋とは無縁の高校生活を送っていると思っていたのに。

 気がつけばこの通り、知らん間に三角関係に組み込まれてるとか。


 そもそもナオキがまだ宮下さんと付き合っていなかったということが驚きだ。

 宮下マイは元々私達の一年上の先輩だったのだが、高ニの時に交換留学プログラムに参加してオーストラリアで一年過ごしたため、帰国後は留年して私達のクラスに編入してきた。

 編入時に席の近かったナオキとウマが合ったのか、それからしょっちゅう一緒に行動しているのを見かけた。


 サッカー部のレギュラーでいつもクラスの中心にいるナオキと、誰にでも気さくに話しかけて年齢差を感じさせない宮下さん。

 傍から見てもお似合いなんじゃなかろうか。


 いや、マジで他意とかなしにそう思ってたのに。


*****


 翌日から私は負けヒロインになった。


 ナオキは告ってもいない私をふったその足で宮下さんのもとへ告りに行ったらしい。

 二人が正式に付き合い始めたことは瞬く間にクラス中へ知れ渡り、私はその余波をモロに喰らう羽目になった。


「ヨウコ、大丈夫?」

 

 席の近い友人が尋ねてくる。

 心配そうに声をかけてくれるのはありがたいが、こちらが「別に平気だけど?」と答えたらもっと心配そうな顔になるのは何故なんだ。


「元気出してね、ヨウコ」


 元気出すも何も私は至って平常運転なんだが。


 宮下さんもちらちら私の方へ窺うような目を向けるのはやめてくれ。


 私に気を遣って弁当のおかずを分けてくれるのはありがたく頂くとしよう。

 肉団子うまっ。


 すぐに落ち着くと思っていたのだが、一日過ぎ二日過ぎ、私の精神状態を気にする視線が中々減らない。


 ナオキと宮下さんも堂々といちゃついてくれ。

 近くに私の姿を見つけて「あ…」と気まずそうにおろおろしないでくれ。


「しばらく一人になろう」


 クラスにいるのが居た堪れなくなって休み時間は図書室へ行くことが増えた。

 そうしたら何故かクラスが私に向ける哀れみの視線が強くなった。


*****


「一緒にカラオケ、行かないか?」


 その日も放課後すぐ帰路に着こうとしたところ、下駄箱まで追いかけてきたナオキが声をかけてきた。


 何考えてんだ、こいつ

 彼女持ちが別の女をカラオケに誘うとか、ありえんだろ。


「いやいや…ナオキ、宮下さんがいるでしょ」


 私が言うと、ナオキは食い下がるように。


「マイも、ヨウコと一緒に行きたいって言ってるんだ…!」


 悲報:何考えてんだかわからないのは女の方もだった。

 

 なんだ、これは。

 いや、なんとなく意図はわかる。

 とどのつまり「三角関係はわだかまりを残すことなく解消して今はみんな仲良しです」ということを確認したいのだろう。


 でもそういうのは元々カラオケとか一緒に行く仲だったから意味をなすものであって、ロクに学校の外で遊んだこともない私達がやるのはむしろおかしい気がするんだが。


 というか誰が好き好んでカップルの間になど挟まろうとするかっての。


「…今日は用事あるから」


 まだ何か言いたそうにするナオキを振り払うように私は踵を返した。


*****


「小山、俺と付き合わない?」


 ある日、隣のクラスの市橋シンヤが告白してきた。


 市橋とは中三の時に同じソシャゲをプレイしている縁で仲良くなった。


 だがこいつからもそういう目で見られていたとは。

 どうした、どいつもこいつも。何故そろそろ受験シーズンだと言うのに色気づき始めたんだ。

 いや、だからこそなのか?


「…え、市橋、私のこと好きだったん?」

「まあ、いい感じに。でもお前、高台と色々あるって話だったから」

「皆にも言ってるんだがナオキとは本当に何もないんだが」


「そうなの?」と市橋は拍子抜けしたような顔になる。


「最近あいつ他の女子と付き合い始めたって聞いて、何か弱ったとこにつけこむみたいでなんかなー、とは思ったんだけど…いや、でもそれで他の奴に先越されても嫌だし、それならそれで今玉砕しとくかー、みたいな……」


 こいつにしては珍しく喋るし、何か顔も真っ赤になっている。


 市橋は私と同じインドア側の人間だ。

 目は前髪で隠れ、休み時間はヘッドホンを装着してスマホか携帯ゲームを弄っている。休日はもっぱら家でゲームをしているか、vtuberの配信を見ているか。

 何度か一緒に中古のゲーム屋とかコラボカフェとかに行ったことがあるが、おかしなロゴがでかでかと入ったダボダボのTシャツを着ていた。


 …うん。


 こいつに恋愛感情を抱いたことは今までなかったが、なんとなく大丈夫な気がする。

 駄目で元々、ナオキと宮下さんのせいで変な目で見られるようになった今の状況も私が他の人と付き合い始めたとなれば改善するかもしれないし。


「いいよー」


*****


「ヨウコ、市橋と別れてくれないか」


 市橋と付き合い始めてしばらく経ったある日、再び放課後ナオキに呼び出された私は校舎裏でそう言われた。


「なんで?」


本当に本当に何考えてんだ、こいつ。

例のごとくナオキの言動に困惑するが、今回は同時に怒りも湧いてきた。


「あいつはヨウコが思っているような奴じゃない。何考えてるかわかんない顔してるけど、変な奴と一緒に歩いているのを駅前で見かけたとか、繁華街の怪しい店に出入りして中身の見えない紙袋持って出てきたとか、色々と怪しい噂がある奴なんだよ」


 何考えてるかわかんないのはお前じゃい。

 

 表情が読めないのは夜中までvtuberの配信見て常に眠いからだよ。

 変な奴というのはおおかたバンドをやっている彼の兄のことだろうし。

 繁華街の怪しい店って多分私が紹介した中古ゲーム屋だ。紙袋の中身は……まあ、人様に見せ辛いゲームだろうなあ。


 何にせよ、ナオキにとやかく言われる筋合いはない。


「別に私が誰と付き合おうがナオキには関係ないと思うんだけど」

「心配なんだよ!マイも…俺がお前を選ばなかったから、自棄になってるんじゃないかって…」


 いい加減にしろ


「いい加減にしろ」


 思わず考えが声に出てしまった。


「へ…?」


 ナオキは鳩が豆鉄砲を食らったような顔になった。


「私があんたに友人以上の感情を抱いたことは過去一度もない。勝手に好きだと思われて勝手に振られて勝手に心配されて、こっちは散々な目に遭ってるんだ」

「で、でも…」

「大体、何?『俺がお前を選ばなかったから』って何様のつもり?考えて。私、一度でもナオキと付き合いたいとか好きだって言ったことある?」

「そ、それは……」

「元々好きでもなんでもなかったけど、今はドン引きしてる。二度と話しかけんな」


 黙ってしまったナオキに背を向けて私は帰り始めた。


*****


 放課後、一緒に駅のホームを歩いていると市橋が口を開いた。


「…高台、別れたんだってな」

「らしいね」


 その後しばらくしてナオキと宮下さんが別れたという話を耳にした。

 私を振って二人で付き合い始めたことについて良心の呵責に耐えられなくなったからとかなんとか理由を聞いたが、私の知ったこっちゃない。

 勝手に不安を感じて勝手に別れた連中の心配を私がする理由はない。


「その……どう?」

「どうって言われても。いや、別に。何もないけど」

「……そっか」


 私はと言えば市橋とそれなりにうまくやっている。

 付き合ってみるとこれが中々悪くない男だ。

 受験についてはどちらも同じ大学を志望しており、どちらもひとまず合格圏。

 別れる理由は今のところ見当たらない。


 だが市橋の反応を見るに、まだやっぱり私とナオキの間に特別な感情があったのではないかと不安なようだ。ナオキがフリーになった今、自分と付き合ったことを後悔しているのではないか、と。


 しゃーない。いい加減、誤解も解きたいし。


 今度、自宅デートにでも誘ってやるか

主人公のキャラがブレてる気がする。反省。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。