魔王討伐に行ったやつがもう帰ってきた
「勇者様、何してんだよ?」
俺はご飯を食っているエドに向けて言い放つ。
「ただいまです、アールさん。腹減ったから飯食ってます」
「そういうこと言ってんじゃねーよ」
エドはきょとんとしている。俺ははあとため息をつく。変な奴だとはわかっているが、ここまで変な奴だと思わなかった。
「なんでここで食ってんだよ」
「いや、家で食うのが普通ですよね」
「普通って、お前魔王倒しに行ってんじゃねえの」
エドは勇者に選ばれた。王都からやってきた騎士が彼を連れて行ったのは3か月前だ。一緒に行こうと誘われたが、俺は断った。ただの農民に何ができるのか。エドは両親を病気で亡くし、俺は親代わりに育てていた。親戚でもなかったが、押し付けられたのだ。独り身の男に押し付けた村の連中には文句があるが、何もいえない。
まあただ、3か月前に勇者に選ばれて、エドは村を出ていった。そして、一度たりとも帰ってこなかったのに、朝起きたら家にいたのだこいつは。
「魔王はもう倒しましたよ」
「そうか、だから帰ってきたんだな。はあ?!」
エドはさらりと言ったので、俺は一瞬スルーするところだった。
「寝起きで大きな声大丈夫ですか?」
「待て待て、魔王を倒した?!まだ3か月ぐらいしか経ってねえよな」
「倒しましたよ。昨日」
頭が痛くなってくる。こいつが何を言っているかわからない。大体、魔王のいる場所はめちゃくちゃ遠かったはずなのだが。
「昨日って、お前報告は?王様に報告とかしなきゃいけないんじゃねえの」
「あとでいきますよ。いやあ疲れたなぁ」
本当に倒してきたのかと疑うほどのいつも通りのエドに困惑を俺は隠せないでいる。だが、事実なのだろう。こいつが嘘をつくことなどほとんどない。
「魔王倒して、まっすぐ家に帰ってきたってことか?」
「そうですね、いやあやっぱここ落ち着きますね。色々大変だったんすよ」
そして、エドは今までの魔王討伐の道のりについて話し始めた。俺は黙ってそれを聞くことにする。ぶっ飛んだ話ばかりでなぜか頭痛がしてきました。途中、山を一個吹っ飛ばしたとか聞こえた気がするが聞こえなかったことにした。
俺はエドの話の切れ間に、声をかける。帰ったら言ってやろうと思った言葉を。
「エド、おかえり、お疲れさん」
エドはにこっと笑って、そのままさっきの話を続ける。長くなりそうだとも思いながら、俺は話を聞くことにした。聞きたくないような話がたくさん聞こえた気もするが、気のせいだと思うことにする。大体、魔王が一撃で倒せたっていうのが意味わからない。俺は今後のことを不安に思いながらも嬉しく思っていた。




