夏休みの観察日記
小さい頃、夏休みに田舎の爺ちゃんの家に遊びに来行った時の話しなんだ。
小学2年生の夏休みに、母さんと爺ちゃんの家に遊びに行く事になった。
爺ちゃんの所には、もっと小さい時しか行った事がなくて、全然覚えてないんだけど、いつもお祝いのプレゼントとか送ってくれるから、爺ちゃんの家に行くのが楽しみだった。
電車に乗って、爺ちゃんちの一番近い駅に着いた。ホームに出ると蝉がたくさん鳴いていて、母さんは
「やっぱり田舎の方は虫も多いわね」
とか言ってた。うちはマンションだし周りはコンクリートだらけで虫は少ないんだって。
爺ちゃんに車で、迎えに来てもらって家に向かった。家の周りは畑があって、近くには川もあるから、明日からいっぱい遊べるねって母さんと話した。
爺ちゃんは優しくて、たくさん話もしてくれた。
次の日は、家の周りなら遊んでも良いよって言われたから、遠くに行かない約束をした後に、虫籠と網を持って探検に出かけだんだ。
暫く家の前で遊んでたんだけど、もっと探検したくなって家の裏側に行ったんだ。そっちは物置小屋があった。中は見れなかったんだけど、小屋の横に細い道があって裏山の方に続いてたから、ちょっだけのつもりで行ってみる事にしたんだ。
蝉がたくさん鳴いていて、トンボとかバッタを見つけながら暫く道を歩いていたら大きな木があったんだ。
それで、木の根元に蝉の幼虫を見つけたんだ。
見つけた瞬、間周りの蝉の声が全部聞こえなくなった気がした。
幼虫は色が白くて綺麗で、しかもこれから蝉になるやつだった。
幼虫から成虫になるところなんて見たことないから、虫籠に入れて持って帰ったんだ。
その時虫籠にはバッタも何匹か一緒に入れていた。
家に持って帰って、母さんに見つかったら捨てられちゃうかもしれないって思って、こっそり飼うことにした。
夜になって昼間捕まえた蝉の幼虫を見てみると、元気が無いように見えた。
「お腹空いて、元気が無いのかな?」
そう思って、台所からオヤツのゼリーを持って来て入れて置いた。
次の日、幼虫が元気になったか見てみようと思って籠を除いたら、幼虫は少し元気になっていた。
でも入れていたゼリーは減ってなかった。
「幼虫はご飯食べないのかな」
一緒に入れていたバッタが何匹か干からびて倒れてたから、庭に埋めてあげた。
その日は夕方まで出かけて、疲れたから早く寝てしまった。朝になってから虫籠を除いたら、幼虫は元気で、少し大きくなっていた。
それを見て嬉しくて、成虫になるのが凄く楽しみだった。
幼虫の周りには一緒に入れていたバッタが全部干からびて倒れてたから、また庭に埋めてあげた。
埋めてる時に、爺ちゃんに何してるか聞かれて、バッタが動かなくなったから、埋めてあげてる事を伝えたら、爺ちゃんが、
「捕まえたなら、虫のお世話だってちゃんとするんだ、大事な命だかな。…蝉の幼虫は捕まえるな、あれは……寿命も短い」
その時は、大事に育てるってところだけ聞いてて、あの蝉の幼虫はまだ元気だし、大事に育てるぞって気持ちになった。
幼虫の周りのバッタが居なくなったら、また幼虫の元気がなくなって来た。幼虫にも友達が必要なんじゃ無いかと思って、今度はもう少し長生きするような虫を入れてみた。
でもやっぱり次の日には虫は干からびて倒れてた。
「虫はすぐ死んじゃうから、カエルとかトカゲならどうだろう」
そう思って、庭をあちこち探し回って、トカゲを捕まえてきた。
「これできっと大丈夫だよね!」
それで安心して、その日は寝てしまった。
次の日の朝見た時、トカゲはまだ生きていたけど凄く元気がなかった。
弱ってるトカゲだったのかな?って思って新しいトカゲも捕まえて入れて置いた。
その日の夕方に爺ちゃんが誰かと話してるのが聞こえてきた。あんまり良く聞こえなかったけど。
「今年は…アレが……蝉…」
「もう、暫く…周り…誰か…」
爺ちゃんにさっき誰と話してたのかって聞いたら、近所に住んでる昔からの友達だって。
蝉って聞こえたし、なんの話か聞いてみたんだ。
「蝉の話してたの?蝉って聞こえたよ?」
「…今年の蝉はちょっとな、蝉は捕まえるな」
それだけ言って、爺ちゃんは外へ出かけて行った。
その時は、蝉…大人の蝉って事かな?位に思って、でもあの幼虫の事が気になったから、部屋に戻って籠を見たんだ。
トカゲが干からびてる…
幼虫の方を見る。
色が変わった?白からちょと青緑っぽい色になって、大きさもまた少し大きくなっている。
なんだか幼虫の食べ物が分かったきがした。
たくさん食べれば、もっと大きくなって、早く成虫を見れるかもしれない。
幼虫はお腹が空くとこっちをじっと見てジジって鳴くんだ。
その日から、頑張って幼虫の餌を捕まえる事にしたんだ。
色んな昆虫とかトカゲとかカエルをあげてたら、幼虫もだんだんと大きくなってきて、色も凄く珍しい玉虫色みたいに何色も重なった色になった。
「もしかしてこのまま育てたら図鑑に載るかもしれない!そしたら、お母さんだって褒めてくれるよね?」
そう思って益々、幼虫に夢中になっていった。
暫くそうやって幼虫を育てていたら、なんだか幼虫の考えてる事が分かる気がしてきたんだ。しかも、時々じっとこっちを見てるんだよ。見ながらジジって鳴くんだ。それを聞くと、
「今日はカエルを食べたがってる」
本当は気のせいだったのかもしれないけど。
ある日、母さんに虫籠見られちゃって。
母さんたら、夕食の時に爺ちゃんに話しちゃったから、爺ちゃんが怖い顔をして
「明日絶対に川に捨てろ。もしかしたら…」
「アレって何?」
「……今度話す。今年は…の年って、まさか…」
途中から聞こえなかった。
爺ちゃんが怖くて、分かったって返事した。
部屋に戻って幼虫をみたら、幼虫の方もじっとこっちを見てる気がした…。
それでやっぱり捨てれなくて、そのままこっそり飼い続ける事にした。
嘘つくなんて駄目だと思ったけど、爺ちゃんには捨てたって言った。
何日か経って、村の夏祭りがあったから、母さんと一緒に出店を回ってると、最近ではもう見かけないけど、当時はヒヨコが売ってあったんだ。
母さんに一生懸命にヒヨコをねだって飼ってもらった時は、凄く嬉しかった。
ヒヨコを飼ってもらった事を爺ちゃんに教えたら、この間、蝉を捨てろって言ったのを気にしてだんだろうな、今度は良かったなって、頭を撫でてくれたんだ。
ヒヨコを育てる事に夢中になってしまって、幼虫の餌を前より上げてない事に気づいてなかった。
ある日幼虫の元気がまた無くなってる事に気づいて、慌てて、餌を入れたけど、足りないって目で見てくるんだ。それで、また餌を取りに行くことにしたんだけど、虫籠の蓋を閉め忘れて他みたいでさ、
帰ってきたら、ヒヨコが動かなくなってた。
幼虫は籠にいた。でも、また大きくなってた。
ヒヨコが動かなくなったって母さんに言ったら。母さんは困った顔をしてた。
「お祭りのヒヨコは育ちにくいから、残念だったわね。ヒヨコは裏山に埋めてあげなさい」
スコップを持って、山に埋めて、庭に咲いてたお花を飾ってあげた。
最近山に行くと、蝉の音が一斉にピタリと止まるんだ。なんでだろう…
夜に爺ちゃんにもヒヨコの事を報告したけど、母さんと同じこと言ってた。
そう言えば、この間の話を聞いていないと思って、爺ちゃんに聞いてみる事にした。最初は話すかどうか迷ってだけど、何回か聞いたら教えてくれた。
それは爺ちゃんがまだ子供の頃の話で、夏に虫取りを子供数人でしていた時。
子供の1人が蝉の幼虫を見つけて、持ち帰ったんだって、蝉の幼虫は動かないから簡単な箱に蓋もせずに置いていたらしい。
それからその家の中で虫の死骸を良くみるようになって、まあ夏だし、昔は窓なんか開けっぱなしだったから、誰も気にしてなかったんだって。
でも、今度は家の周りで、トカゲとかカエルとかネズミなんかの死骸もみるようになって、猫が狩ってきた獲物を置いてるのかもしれないって思ってたらしい。
数日様子を見てたらしいけど、今度はイタチとか、庭で飼ってる鶏とかのちょっと大きなものに変わってきて、これはおかしいんじゃ無いかって話になったらしい。
それに、みんな干からびてたんだって。
そんな事があって数日後、友達は今まで幼虫の事を忘れてたのを、久さしぶりに思い出したから、箱の中の幼虫を見てみたんだって、
そしたら凄く大きくなってて、周りには動物の毛とか落ちてて、友達は気味が悪くなった友達は爺ちゃんを呼んで、一緒に川に捨てに行くことにしたんだって。
川に着いた時にはもうすぐ羽化するってくらい大きくなってて、捨てる時に、爺ちゃんにしがみ付こうとしてきたから慌てて川に投げ捨てたらしい。
川に落ちた時に凄く大きな声でジジジジジって鳴き声がしたらしい。
それからは、そんな蝉の幼虫は10年くらいに一度見かけるけど、爺ちゃん達が見つけたら川に捨ててるんだって。
その話を聞いて、爺ちゃん達も見れなかった、成虫の姿をどうしても見たくて、そのまま飼い続けた。
夏休み後半になり、そろそろ家に帰る日も近くなった。幼虫も、もうすぐ羽化するじゃ無いかって感じになった。それで、幼虫がジジって鳴いて、こっちをじっと見てくるんだ。幼虫の目を見てたら幼虫がお腹が減ってるってわかる気がした。それでもっと大きなものをあげなきゃって強く思った。
その夜、大きなものが用意出来なかったから、籠の蓋を開けておく事にした。
なんでだろうね、そうした方がいい気がしたんだ。
次の日に母さんが慌ただしくしていて、どうしたんだろって思ったら…
爺ちゃんが起きないって…
それから忙しくなって、母さんに邪魔になるから部屋にいなさいって言われて部屋に戻った。幼虫の様子を見たら、物凄く大きくなっていた。
何故かもう十分だと分かった…
その日の夜、こっそり起きて、虫籠を窓際に置くとそっと蓋を開けた。
もう殻が割れ始めてる。
暫く見守ると、中から、少しずつ出てくる。
それは、月の光を浴びて淡く光る見たこともない、
綺麗で巨大な蝶だった。
暫く見とれていると、蝶はゆっくりと羽をひろげふわりと飛ぶ、思わず伸ばした手の指に止まった蝶は暫くじっとこちらを見た後に、夜の空へ飛んでいった。
最後にありがとうって聞こえた気がしたんだ。
気のせいかもしれないけどね…
爺ちゃんの家から自分の家に帰ってきた。それからは何事もなく普通に暮らしていた。
あれから10年…今年の夏は…
あの田舎に行ってみようと思っている…
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長編物も書いています!良かったら読んでみて下さい




