退屈
三題噺もどき―はっぴゃくろくじゅうはち。
部屋の扉をくぐり、鞄をベッドの上に投げる。
外はまだ明るく、陽が照っているため、少々暑い。
家の中にはそこまで陽が入らないので、丁度いいくらい。
……いや、少し寒いかな。
「……」
制服から着替えを済ませ、楽な格好をしている。
半袖半ズボンと言うパジャマみたいな恰好をしているが、これで誰か来たら終わりだな。別に気にしないからいいのだけど。
「……」
隣に広がる空き地から、幼い声が聞こえてくる。
小学校も今日は午前授業だったんだろう。
公園か何かと勘違いしているのではないかと思う程に、はしゃいでいる。
「……」
今日から我が校では三者面談が始まる。
学校の各教室で行われるため、午前授業が終われば、全生徒速やかに帰宅するようにと言われたのだ。許されるなら、学校に残ってあの子とお喋りでもしていたかったんだけど。
「……」
私は明日が三者面談だから、今日は暇になる。
一応、課題と言うか宿題は出ているのだけど、大抵授業中に終わってしまう物ばかりで、帰ってからすることなんてない。
暇で暇で仕方ない。
「……」
家の中には、私以外誰もいない。
おかげで、しんとしていて、静かで、外の風の音が聞こえてきて、家が時折軋むような音が聞こえてきて……まるでホラー映画の中にでもいる気分だ。
気のせいだけど。
「……」
一端、片づけをするとしよう。
たいしてすることもないが、鞄の中に入っている教科書や筆箱を机の上に取り出していく。
明日も授業があるものは、そのまま入れて置き、使わないモノだけ。
あぁそうだった。
「……」
今使っている消しゴムがもう限界なので、新しいのを出しておこうと思っていたのだ。
どこかに予備を置いていたはずだが、いかんせんそんな頻繁に変えるものでもないから、片づけた場所の記憶に自信がない。
多分、あそこに直したはずなんだが……。
「……」
ない。
ん~ここじゃ無ければ、どこなのかまったく見当もつかない。
もしかしたら、そもそも予備も使っていたんだろうか……。
探すのも面倒な。
「……」
まぁ、今日母が帰ってきてからでも買いに行かせてもらおう。
田舎ではあるが、そこまでの田舎ではないので、車で10分くらいのところに百円ショップがある。そこでいつも使っているのが買えるはずだから。
「……」
もう動く気にもなれないので、机に向かうわけでもなく。
ベッドに座り込む。
ぼすん、と、音が聞こえるほどの勢いで座ったせいで、ベッド沿いに並んでいた人形が1つ倒れた。
それと同時に、ズボンの後方についているポケットから何かが割れるような音がした。
「……」
何だったかと手を伸ばし、指先に触れたのはとがったビニールのような感触。
あ、そうだった。
ほんの数分前の事なのに、すっかり忘れていた。
「……」
袋を引っ張り出すと、中身のクッキーが割れてしまっていた。
柔らかなベッドの上だったから、まだ二つに割れたくらいだけど。
昼食を食べる気にもなれず、でも何かは食べたいと思い、リビングから持ってきたのだ。
「……」
しかしその食べる気も失せてしまった。
どうしよう。割れたものをまたリビングに戻すのも忍びないし、かと言って部屋に置いてあってもいつ食べるかどうかも分からない。
「……」
まぁ、いいか。
とりあえず、適当に置いておこう。
その内食べるだろうし、食べないとしてもまぁ、置いておけば。
もう、考えるのも疲れてきた。部屋にいると、普段以上に考えるのが億劫になっていく。たいして何もしてないのに、なぜか疲れていく。
「……」
しかし何かをしなければと言う焦燥感には襲われるのだから、面倒なものだと思う。
何かしないとと言ったって、何もすることはないのに。ないわけでもないが、それもしようと思わないくせに。
「……」
何もせずに。
どうせ、終わるくせに。
お題:消しゴム・公園・クッキー




