『マルク』と『妖精ジャック』
親より先に命燃え尽きた幼子はあの世の河原にて石を積む。そして命を全うした者は命の螺旋へと組み込まれ、精霊となり大地、川、木々へと姿を変える。人を殺めた咎人は妖精へと姿を変え現世に生きる者達の生活を支え、
『永遠とも云える時の中で罪の精算を行う』
-アガリオ神話 第3節より抜粋-
『魔力』それはこの世界で暮らす誰しもが持つ不思議な力。
人々の生活には決して欠かせないものである。
その当たり前の力が何者の力であるかも知らずに…。
アガリオ王国辺境の村の外れに母と2人で暮らす少年
『マルク』は森で獲れる薬草を売って生活をしていた。
母は病を患い、若干12歳の若さで家計をほとんど1人で担っているマルクは森の奥地にある丘で薬草の群生地を発見する
マルクは自身の魔力『小動物を使役する力』を使い数匹のネズミと共に薬草を摘んでいると、、突然目の前に黒い竜が現れるのだが…
親より先に命燃え尽きた幼子はあの世の河原にて石を積む。そして命を全うした者は命の螺旋へと組み込まれ、精霊となり大地、川、木々へと姿を変える。人を殺めた咎人は妖精へと姿を変え現世に生きる者達の生活を支え、
『永遠とも云える時の中で罪の精算を行う』
-アガリオ神話 第3節より抜粋-
アガリオ王国 辺境の村「ヒコン」
その外れにある森小屋
ギィー
雨風で少し腐敗した木材が軋む音が響き
黒髪の少年が扉を開いた
「母さんただいま、今日は沢山薬草が売れたからパンを3つ買って来たよ。」
少年は痩せこけた病人らしき母親に語りかけ、ふわふわのパンが3つ入ったカゴを丸テーブルの上に置いた
「ゴホゴホッ、ありがとうね『マルク』。昨日の野菜があったからスープを作るよ」
「母さんは安静にしててよ、僕が作るからさ」
マルクは起きあがろうとする母を再び布団に寝かし調理場の薪に火打ち石で火をつけた
温かいスープが出来上がるとマルクと母は食卓に着く
「ごめんねマルク。薬草はこんなにあるのに私の病気は治りゃしない、苦労ばかりかけて本当にすまないねぇ」
「何言ってるんだよ。僕は母さんさえいてくれれば幸せだよ。それよりさっ!薬草が沢山生えてる丘を見つけたんだ!」
「そうかい、そりゃあ良かったねぇ。あまり危ないことはしないでおくれよ。」
「あぁ分かってるさ、さぁ明日は沢山薬草摘んでやるぞー!」
「ふふ、じゃあ今日は早く寝ないとね。」
母親はにっこりと笑った
まだ空が白んできた頃にマルクは薬草を摘みに出かける。
「昨日話した丘に行ってみるよ今日はきっと体にいい物を買ってこられると思うからさ。じゃあ行ってきます」
この世界の人々は皆、それぞれに特異な力を要している。人はそれを『魔力』と呼んだ。火を吹く者、手のひらから水が湧き出す者、植物との会話を楽しむ者、空を自由に飛ぶ者まで。魔力は人々の生活に深く結びつき、無くてはならない物となっていた。
マルクには『小動物を使役する』ことができるという魔力を与えられた。
「今日も頼むよ。」
マルクが手のひらをかざすと、3匹の小さなネズミ達は一斉に各地へ駆け出す
「さっあの子達にも頑張って貰う事だし、僕も頑張らないと。」
薬草が生い茂る丘で薬草を摘むマルク
すると、
バサァッ!!
風を押し付け、地面に空気がぶつかり、凄まじい轟音が響いた。
!!
マルクが音のした方に目線を向けるとそこには
黒い鱗を身に纏い、大きな翼を羽ばたかせながら巨大な魔物がマルクをじっと見据えていた。
「あ、あっ、魔物ッ。わ、ワイバーンだ…、」
マルクが腰を抜かして動けなくなっていると黒いワイバーンはゆったりと口を開けた
グゥグゥル
呻き声のようなワイバーンの鳴き声が近づきあわや食いつかれる刹那…!マルクはハッと我に帰り、手を横に振り払った
ちゅー!ちゅちゅー!!
マルクの号令にネズミ達が集まり、一斉に黒いワイバーンの周りを駆け回る…!
それに釣られ黒いワイバーンはドンドンと前足を地面に叩き付け、ネズミをぷちりぷちりと潰して回る。
「ごめん…、皆んな」
ネズミ達に懺悔しながらマルクは必死に走った。
その様子をワイバーンは静かに赤い瞳で見ていた
キィー
「おかえりマルク。どうしたんだい?そんな土まみれで?」
家に帰ったマルクに声を掛ける母親
「母さんごめん。今日は薬草…これだけしか…」
マルクの手には数本の薬草が握られている
何かを察したのか母親はマルクをベットまで呼びぎゅっと抱きしめた
「いいのよ。マルクはよく頑張ったわ。よしよし」
頭を撫でられたマルクは自然と涙が流れた。
「ごめん。母さん…!今日はいっぱいご飯食べて貰うつもりだったのに…ごめん!ごめん!」
そう涙ながらに言うマルクの頭を母親は静かに抱きしめていた。。
その時…窓をすり抜け、黒い光がマルクの家に入ってくる。マルク達には見えない謎の黒い光。
その光はマルクの母の頭へとすーっと入り込んだ
ギャーーーッ!!
次の瞬間、マルクの母親は奇声を発しながらブルブルと震え始めた
「か、母さん!?一体どうしたの!?母さん!」
母親の身体を揺すり、動揺するマルク
「アッア、あー…」
やがて母親の身体の震えは治った
「母さんどうしたの!?」
マルクが訊ねると母親は口を開いた
「母さん??あぁーこいつの息子かぁ。ハハッ、私はお前の母さんなんかじゃあない!」
バキッ
マルクは母親に殴られ床に叩きつけられた
「か、母さん…、一体どうしたの…」
朦朧とする意識の中で未だ困惑するマルク
「フハハ!かなり彷徨っちまったがやっと波長が合う魂を見つけた!身体が弱ってたからすぐ入り込めたぜ!」
…!?
どういうこと!?こいつは母さんじゃない!?
何か別の…?
「さぁ。肉体も手に入ったこれで思う存分実験ができる…!100余年ぶりの生だ。次こそは失敗なぞするものか…!」
母親が不適な笑みを浮かべたその瞬間
ドォォン!!
突然暴風により家の壁が吹き飛んだ!
家の外には丘の上で出会った黒いワイバーンが静かに佇んでいた。
「お前は竜種か…しかも神話の時代の黒き竜王…!」
母親が瞳孔を開いて叫んだ
黒き、、竜王…?
黒き竜王が口を広げた。
次の瞬間
ブワァァァァァ!!
目の前が炎で埋め尽くされ、同時に全身の感覚が一気に無くなる程の高熱がマルクを襲った
マルクの小屋は完全に黒炭と化し、マルクと母親の身体は人の形をした炭のように黒く焼けている
黒き竜王はその様子を見るやどこかへ飛び立っていった…
プスプス…ガシャン
高熱により木炭と化した家は音を立て崩れた
「は、ハハ…く、ろきリュウオ、め…!しくじったな…!私はまだ生きているぞ…心臓が脈を打っている限り私は死な…ん!ハァハァ体を回復しなくては…一歩も動けん…」
母親の身体は黒炭と化していたが辛うじて息を保っていた。
ズリ…ズリ…、
!!
母親が音のした方に目をやると
又、黒炭と化したマルクがゆっくりとナニカの方へと擦り寄っている
「ただの人間が何故…」
ズリ…ズリ
やがてマルクは母親の元へ辿り着き、指が数本欠けた手にはナイフが握られていた
「ハ、ハハハッ野ウサギを盾にして身を守ったのか…だがもう虫の息の様だな…!!」
ザグッ!!
母親が語っている最中、母親の心臓にマルクのナイフが突き刺さった
「母…さん…ちく…しょう…」
パタン
マルクは力無く倒れ息を引き取った。
「はぁあ、はぁあ、やりやがったあのガキ…グフッ!親殺し…め!まぁ、い、いい次の身体を探すだ…けだ。」
母親の身体から黒い光がスーッと抜け出すと、まもなく母親も黒い肉塊と化した。
〜
「親殺しだぞ…!咎人であることは明確だろう!!」
「だがアングリー議員殿…、事情が事情…。充分に情状酌量の余地はあるではないか…。」
「しかし、被告はまだ二十も超えておらん幼子…サイカの河原にやるのが妥当ではないか…?」
声が…誰が喋ってるの?ここは、、
朦朧とした意識が徐々にハッキリとしてきた
「おぉ、目が覚めたかマルクよ。」
…!!
ぼやけた視界がハッキリとしたマルクの目の前には数人の老人が椅子に腰掛けこちらを見ていた
「だ、誰!?ここは…どこ…?」
1人の温厚そうな老人が口を開く
「ここは天とも地とも違う場所じゃよ。天界裁判所とでも言おうかの。君のこれからの〝行き先”について話し合っておる。」
「行き先??」
マルクが訊ねる
「そうじゃ。人間は死後、親より先に死んだ幼子はサイカの河原で石、、まぁ得のようなものを積み。やがてまた別の命へと産まれ変わる。又、享受を全うした者は〝精霊”となり、空気や川、海、自然そのものとなり、その後産まれ変わる。そして『人を殺めた咎人』は〝妖精”…、
君たちが言うところの『魔力』そのものと成り、永遠とも言える罪の精算を行うのだ。」
「魔力って妖精…元罪人だったの…?」
「ふふ、そうじゃよ。さて、マルクよ君の場合はちと前例がなくてな、親より先に死んでしまったが、しかしその親を殺めてしまってもおる。とはいえお主の母親は〝妖精”に身体を奪われている状態であった。理由が理由じゃからの、サイカの河原に送るべきか、咎人として妖精とするべきか議論の為、ここにお主が居るわけなのだが、」
よ、妖精…!?妖精が僕の母さんを…?
「そちらの世界では〝魔力暴走”と言われておるがの。」
「なにを言っておる!ハトフル殿!!咎人は咎人!この者は妖精にし、罪を償わせるべきだろう!!」
マルクが困惑していると間髪入れずに気の強そうなアングリーと呼ばれていた老人が怒声を浴びせた
「だがしかしのぉ。妖精の仕業となるとワシらの監督不足も否めないのだ。」
老人達が悩んでいるとどこからともなく声が響く
「ちょっと待てよ。」
!!
声のする方を見るとそこには赤髪が逆立ち、目つきの悪い羽の生えた男が宙に浮いていた
「寄ってたかってガキ1人になにうだうだ言ってやがる。オメェらも見てたろ、ありゃあのクソ野郎の仕業だろうが、」
「な、なんだこいつ!?これが妖精!?」
マルクが初めて見る妖精に驚いていると
「あぁ!?テメェ今まで助けてやってた俺様を
こいつ呼ばわりたぁ、どんだけ偉いんだよテメェ!」
赤髪の妖精がマルクに怒声を浴びせていると、
ハトフルと呼ばれていた老人が口を開く
「まぁそう言うでない『ジャック』よ、マルクや、こやつは君に付いておった妖精じゃよ。魔力の塔で君が魔力を授かってからずっとな。」
「この人が僕の魔力…、えっと、今まで助けてくれてありがとうジャックさん…」
「ふん。で、ジジイ共、本題に戻るがよぉ。俺様はあと少しで〝輪廻権”が手に入ってやっと転生できたってのによ。こいつが妖精にでもなりゃ俺が
セコセコ色んなヤツに付いてた1000年はパァだろうが。」
ハトフルはジャックをじっと見つめ、そして、周りの老人達と目を合わせこくりと頷いた
「確かにお主は一度も宿主から妖精になる者を出すことなく、ここまで尽くしてくれていたな。
実はなずっと迷っていることがあったんじゃ
ワシは決めたぞ。
よし、ではマルクよ、これより裁決を言い渡す
マルク・マクガード。貴殿を
『妖精管理官』に任命する。
ここ数十年、精霊になる者の数が著しく低下しておる。よってマルクよ。妖精ジャックと共に
現世に戻り、妖精によって引き起こされる罪を事前に防ぎ、
精霊となる者を増やす為尽力せよ。」
よ、妖精管理官…!?
「ちっ。めんどくせぇ仕事押し付けられちまったがまぁいい。おい小僧しくじりやがったら今度こそテメェは妖精にされちまうからな!そうなったらテメェは殺す!!」
このジャックって人…怖すぎるよぉ。
「ではマルク、ジャック。適当な場所に送るからの。世の為人の為、そして我らの為に頼んだぞ」
ヒュンっ。
静かな老人がそう言うと、マルクと妖精ジャックは青い光に包まれ消えて行った。
読んで頂いた方、ありがとうございます。
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